諦めるのは、まだ早くないですか?

アカデミア発の技術を事業化する際のひとつのオプションとして、既存企業へのライセンスがあります。ですが、その際に「既存の企業が買わないから、この技術は売り物にならない」というのは、いささか早計かもしれません。

イノベーションのジレンマ

既存の企業は、すでに展開している事業があり、それに沿った戦略があります。技術や事業のポートフォリオもあります。基本的には、このポートフォリオや戦略に沿って「この新しい技術を導入するか?」ということを判断していきます。これはこれで正しい判断なので、全く問題はありません。
ですが、一方で破壊的なイノベーションとは、その合理的な判断とは別のところで発現します。
これは、イノベーションのジレンマと呼ばれる事象です。
元々は、クリステンセンが提唱した考え方ですが、wikipediaにもわかりやすく解説されているので、引用しておきます。同様の内容として、「大企業は合理的に間違う」という表現もあります。

大企業にとって、新興の事業や技術は、小さく魅力なく映るだけでなく、カニバリズムによって既存の事業を破壊する可能性がある。また、既存の商品が優れた特色を持つがゆえに、その特色を改良することのみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かない。そのため、大企業は、新興市場への参入が遅れる傾向にある。その結果、既存の商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業に、大きく後れを取ってしまうのである。ー wikipedia

これは「逆説的」ですが、詳しくは、東大の馬田さんの「逆説のスタートアップ思考」に詳しい解説がありますので、参照いただければ理解が進むでしょう。

既存企業が買わないからといって、その技術が無価値とは限らない

このような状況を考えると、「大学等の技術移転部門(あるいはTLO)が既存企業に営業をかけたけれども、売りが成立しなかった」ということも十分想定しておくべきです。それは裏を返せば「その技術・アイデアが、それだけ斬新だった」という証左かもしれません。なので、「既存企業が手を出さなかった」からといって、それがすなわち「その技術が無価値」ということではない、ということです。その企業の戦略やポートフォリオにあっていないだけかもしれませんし、業界として「イノベーションのジレンマ」にあるのかもしれません。そういう状況もありうる、ということを踏まえて事業を検討しておくとよいでしょう。その一つが「起業する」という選択肢かもしれません。

そこで、「スタートアップ」の出番かも

このような状況を打破するのがスタートアップ、ベンチャーの大きな役割です。既存企業の事業の延長線上には乗らないかもしれないけど、事業として可能性があるのであれば起業は一つの有力な選択肢になります。なにせ、既存企業が手を出さないのですから、持続的な技術開発とは違うところに位置付けられる可能性があります。
既存企業が買わない、ということ自体がその技術の先進性の証かもしれません。本当にその技術を世の役に立てたいと願うなら、既存企業が買わないからと言って諦めず、起業という選択肢も考えてみてはよいのではないでしょうか?

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