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情報バリアフリーな報道への一歩 -NHK報道番組における手話通訳放映 -
今年に入って、NHKが積極的に情報バリアフリーな報道への一歩を踏み出したと思われることが相次いでいます。今回、その背後にある要因について私なりに考察してみました。
全国初!定時ニュースに手話通訳付で放映
NHKは2023年7月26日(水)、ユニバーサルサービス拡充の一環として、10月から総合テレビで日曜夜の定時ニュースに手話通訳を付けて放送すると発表しました。
https://www.nhk.or.jp/info/pr/toptalk/assets/pdf/soukyoku/2023/07/004.pdf
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対象番組:NHKニュース 日曜日 午後8:45-8:55(全国放送)
午後 8:55-9:00(関東甲信越)
開始日時:2023年10月8日(日)〜
総合テレビの生放送の定時番組で、全体を通して手話通訳を付けるのは初めてとのことです。
全国初!公式イベントを手話通訳付で放映(広島平和記念式典)
2023年8月6日(日)に広島で行われた平和記念式典をNHK総合テレビでは、手話通訳付(ワイプ付)で放映しました。
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東京オリパラレガシーによる情報バリアフリー化
上記で紹介した情報バリアフリー化事例の2点は、いずれも東京オリンピックにおいて、NPO法人インフォメーションギャップバスターを含む多くの当事者団体から、NHKに要望したことが、実を結ぶ形となりました。この経緯については、以下の記事をご覧ください。
東京オリンピック閉会式から、手話通訳がついたものの、総合テレビではなく、Eテレの方であったことから、NPO法人インフォメーションギャップバスターは問題提起をし続けていました。
オリンピック閉会式直前の8/8に開催された緊急オンライン集会【多様性と調和のオリンピックに手話通訳を!】で、ろうの家族がいる藤木和子弁護士は、「『障害者権利条約』や『障害者基本法』では、言語に手話を含んでいる。手話は法的に認められている言語。障害者差別禁止法では『合理的配慮』を義務付けられている。Eテレで、ろう者の手話通訳が放送されることが喜ばしいが、総合テレビとEテレで分けることには違和感がある。『多様性』と『調和』は相反する部分もあり、難しいが、まずはどう実現できるのかを考えていくことが必要だ。次のオリンピック・パラリンピックにつなげていきたい」と語っていました。
https://note.com/besus/n/n508ef60a3731
この度は、2年の歳月を経て、これまでの要望が徐々に実を結び、感慨深い思いです。個人的には、NHKの情報バリアフリー化の取り組み(特に手話通訳付放映の拡大)を高く評価しています。今後もさらに多くの番組に手話通訳が導入されることを願ってやみません。
東京オリパラ開閉会式に手話通訳放映を実現した経緯については、書籍「マイノリティ・マーケティング」にまとめているので、関心のある方は、是非ともご覧ください。
情報バリアフリー化を推進する法律の制定
手話通訳付放映には、下記のような情報バリアフリー化を推進する法律の制定などの動きと密接な関係があるのではないでしょうか。
障害者の情報取得・利用や意思疎通を円滑にするための法律
障害者の情報取得・利用や意思疎通を円滑にするための法律として、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が2022年5月に制定されました。この法律では、5条にて、事業者の責務として、障害者の情報アクセス・コミュニケーション向上を挙げています。
障害を理由とする差別をなくすための法律
障害を理由とする差別をなくすための法律である障害者差別解消法の改正により、2024年4月より、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。合理的配慮とは、端的に説明すると、障害者など特定の個人やグループが特有のニーズや困難を抱えている場合に、建設的対話によりその状況を理解し、調整した上で、適切な対応を行うことを指します。
障害者の権利を守るために国連が定めている条約
世界に目を馳せれば、障害者権利条約(国連で2006年に採択、日本は2014年締結)は、9条「施設及びサービス等の利用の容易さ」でバリアフリー等の環境整備とともに情報アクセシビリティの整備を求めています。
また、国連障害者権利委員会がスイス・ジュネーブにて実施する障害者権利条約の対日審査(2022/08/22-23実施)にて、情報アクセシビリティの国内運用が問われました。詳細は以下の記事を参照ください。
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