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【創作日記】在りし日の彼女を想う
2018/05/04: ブログ転載記事
ある小説投稿サイトで知り合った彼女と、大阪のカフェで会うことになった。
6歳年下の彼女は、待ち合わせの場所「ビックマン」の前で佇んでいた。眼鏡のよく似合う、長い髪をした女性だった。
眼力のありそうなまなざしで見つめられたとき、僕は思わず一目ぼれをしてしまった。
彼女に好奇心はあったけれど、文章からイメージが湧いた彼女に、あまり期待はしていなかったのが正直な気持ちだった。
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※イメージ写真。
客の多いカフェで、彼女は自分自身のことを語った。僕は少し緊張していたせいか、あまり自分のことを話すことはできなかった。
けれども好きな小説の傾向は似ていて嗜好が合っていた。2時間ほど話し合ったはずなのに飽きることはなく、楽しいひとときを過ごした。彼女も初めて会ったはずなのに、打ち解けたような表情を浮かべ、ときおり、僕の話に相槌を打ちながら人懐っこい笑顔を見せた。
それを切っ掛けにしてメールで連絡を取り合うことが多くなり、よく、ふたりで梅田近郊の中崎町を歩いた。
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中崎町は、戦時中に空襲を免れた地域だった。だから、古い家並みが残っていて、レトロ感のある街並みが点在している。
そんな雰囲気のある街をぶらぶら当てもなく散策するのが、ふたりとも好きだった。でも、1年ほど続いた淡い交際は、彼女からメール連絡が途絶えたことで終止符を打った。
つまり、僕は告白することもなく、友人の関係のまま彼女に振られてしまったのだ。
それから5年後、僕は偶然にも、あるソーシャル・ ネットワーキング・サービスのサイトで彼女がモデルになった写真集を見つけることになった。
そして彼女が結婚していた事実を知ったのだ。相手はプロの写真家のような印象を受けるほど、彼女を撮った写真集は本格的なものであった。
でも、その写真集は非売品で個人的に撮った写真のようであった。
そのうちの一枚の写真は、薄い生地の真っ白なワンピースを着た彼女がポーズをとっているものだった。何枚もそのような写真はあるが、その一枚だけが、ライティングによって裸体が透けて見えていた。
初めて見る、彼女の裸体。体型に似合わない豊満なかたちの乳房。ふれることのできなかった乳房が、そして抱くことのできなかった裸体が目にふれた。
写真集の最後に、こう、記されていた。「31歳のTを忘れないために、いつまでも記憶に留めるために、個人的な写真を公開する」と。
彼女が31歳の若さで不慮の死を遂げてしまったことを、僕はそのとき初めて知った。
※この【創作日記】はフィクションであり、実在する個人、団体等とは一切関係ありません。
切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語。そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。
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— 幸田 玲 (@bestplanning) April 11, 2023
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