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観桜日和、夜の部:令和5年、新しい春を迎えて
代替りの春はもう遠い昔のようだ。令和年間が幕を開けてからというもの、世界は、そしてわたしたちは目まぐるしい変化を遂げてきた。
それでも、変わらないものもある。先日は目黒川の夜に観桜と訪うたが、実際のところ本当に素晴らしいのは、わざわざ観光地と化すことをしらない道端の桜である。
雨の夜桜は都市のなかでいちばん静かな存在だ。なにも気を付けていなければ、季節の変遷などは知らぬ間にまた一回転という忙しさ。かしましい浮き世も、散る桜の前には無音の様相だ。
これだけ世界が変わり尽くしても、自然の循環は正確に時の重みを記録する。文明の狂騒人等も、夜桜の前ではあはれを感ずるものなのか。