【SS】ウナきりロッカー
ウナ?「……ほく、とー……くぅ」
きり「うぅーん……うへへ」
ウナ?「とーほく、とーほく……」
きり「いいじゃないですか、減るもんじゃなし……むしろ増え……」
きり「……はっ!? ここは? ……夢か」
きり「放課後の教室で寝落ちするとは、なんてもったいないことを」
きり「うぅーん、さて、普通に帰って新作ゲームの続きでも……うん?」
きり「あれ、音街じゃないですか、どうしてここへ?」
きり「……なんで無視するんですか? ……なんですかその謎のジェスチャーは?」
きり「……えっ、なんで掃除ロッカーなんかに入るんですか!?」
きり「ちょっと、なにしてるんですか」
(コンコン)
きり「音街ってば、おーとーまー……あ、開いた……ってうわぁ!?」
きり「いたた、いきなり引っ張り込まないで下さ……むぐぐ」
ウナ「……静かにしてとーほく」
きり「(コクンコクン)……ぷはっ、いきなりなんなんですか」
ウナ「ああするしかなかったんだよ」
きり「こんなくっついてそんな耳元で囁かれたら私……」
ウナ「そんなことより、今、とっても危険なの」
きり「……どういうことですか?」
ウナ「私、追われてて、見つかったら捕まっちゃうの」
きり「ええっ!?」
ウナ「あのままだと東北もろとも見つかると思ったから、こうして無理矢理」
きり「そう、だったんですね」
ウナ「でもここなら大丈夫、次のチャイムまで見つからなければ勝ちだから」
きり「なるほど次の……ん? 勝ち?」
ウナ「それまでは静かに隠れててね」
きり「えっと、あのー、もしかして、これって」
ウナ「うん?」
きり「……かくれんぼですか?」
ウナ「いやっ、違うよ……ハイドアンドシークだよ」
きり「かくれんぼじゃないですか!」
ウナ「ちょっ、とーほく、声が大きい!」
きり「はぁー、なぁーにが危険ですか、私関係ないじゃないですか」
ウナ「名前呼んだり声出したりしたらバレるじゃんかー」
きり「こう見えて忙しいんですから、帰らせてもらいますよ」
ウナ「どうせゲームとかを……ちょっ、待って東北!」
きり「なんです……むぐっ」
ウナ「静かに……誰か来てる」
きり「んん、この声はクラスメイトの……」
ウナ「もう一人いて、会話してるみたい」
きり「なになに,急に呼び出して……話したいこと……」
ウナ「ねぇとーほく、これってもしかして……」
きり「えぇ、告白、みたいですね」
ウナ「えぇっ、これじゃ盗み聞きしてるみたいじゃん」
きり「こっちはみたいじゃなくて事実ですが」
ウナ「なんにせよ、これなら鬼に見つかることもないや」
きり「バレたら他の鬼を生み出すだけですよ」
ウナ「……やっぱり外の様子は把握しておかなくちゃ」
きり「少しの間、黙って聞いてみますか」
ウナ「賛成」
きり「目を閉じれば他の五感が研ぎ澄まされて聞き取りやすくなるはずです」
ウナ「わかった」
きり「んん……」
ウナ「むむ……」
きり「…………ごめんなさい音街」
ウナ「えっ、な、なに?」
きり「外の音、聞こうと思ったんですけど」
ウナ「う、うん」
きり「音街の心臓の音と香りが気になっちゃいまして……」
ウナ「香りって……きりたんの匂いしかしないよ」
きり「何嗅いでるんですか、変態」
ウナ「えぇー……確かにちょっと暑いなとは思ってたけど」
きり「やめてください、鼻呼吸禁止です!」
ウナ「理不尽な」
きり「……あ、良い事思いつきました」
ウナ「見えないけど悪そうな顔してそうだな」
きり「ふっふっふ、どうせ私は見つかっても困ることはないんですよね」
ウナ「な、なにするつもりなのさ」
きり「せいぜい気付かれないようにして下さいね、お・と・ま・ち」
ウナ「耳元でなにを」
きり「……ふぅー」
ウナ「ひゃんっ!?」
きり「……ちょっと、始めたばかりなんですから、もう少し我慢して下さいよ」
ウナ「だってそんなのいきなりされたら」
きり「まぁ確かに、じゃあ、まずは撫でますかね、耳」
ウナ「んんっ……触り方が……」
きり「綺麗な形してますねぇ、ぷにぷにしてます」
ウナ「でも、このくらいなら……」
きり「……ふぅー」
ウナ「んあっ……はぁ……」
きり「耐えられてえらいですよ……はむっ」
ウナ「んんんー!?」
きり「なふぁなふぁめふらひいひょっかんでふ」
ウナ「はっ、はんそく、それは、だめ……」
きり「ちょっ、腰抜かさないで……!」
ウナ「はうぅ……」
きり「支えきれな……わぁ!?」
(バーン!)
きり「いたた、大丈夫ですか音街……」
ウナ「うーん……とーほく……?」
きり「お、音街、せっかく人がクッションになってあげたんですから、ずっと馬乗りになってないで降りて下さいよ」
ウナ「あぁ、うん……あれ、ロッカーの外に出ちゃってるじゃん」
きり「誰かさんが倒れたせいで……あいにく人はいなくなってたみたいですけど」
ウナ「誰かさんが変なことしたせいだと思うけどー?」
きり「さ、さぁて、なんのことだか……」
ウナ「立場考えた方がいいよ東北」
きり「はっ、動けない!?」
ウナ「大丈夫大丈夫、あんまり痛くしないから……」
きり「えっ、いや、その、あわわわ……」
ウナ「しっ、静かに」
きり「んっ……」
ウナ「とーほく……」
(キーンコーンカーンコーン)
ウナ「……あっ」
きり「チャイム……」
ウナ「あぁ、みんなの集合場所に戻らなきゃ、帰ったと思われちゃう」
きり「おとまち?」
ウナ「ごめん東北、さよなら、またね!」
きり「あぁはい、さようなら……行っちゃいました」
きり「あんなに赤い顔したままで大丈夫なんですかね……」
きり「うん? またねってどれのこと……?」
〜終〜