![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71926297/rectangle_large_type_2_44fb962f4f07e2f7e2e015bcf34eaa74.jpeg?width=1200)
努力は違う形で報われている
羽生さんの北京五輪での演技、胸がゆさぶられました。これは誰がジャッジすることが許されるんだろう、順位などつけることができるんだろう・・・と思ってしまうほどの、氷上の美しい奇跡。立ち入ることのできない聖域で行われている舞を見ているような感覚でした。
終了後のインタビューでの「どんなに努力しても報われないことがある」という発言に、ご本人の正直な思い・・悔しさがにじみでていました。
でも・・いつも私が「自分の思いが叶わなかった」「自分の願いが叶わなかった」というときに思い出す言葉があります。
イエスキリストが、十字架にかかる前に言った言葉。イエスは父なる神に祈る。血の汗をかくくらいに必死に、懸命に。
「できればこの十字架を避けたいけれども、それが、あなた、父なる神が私に望むことなのであれば、私の願いではなく、あなたの願いが実現しますように」と祈る、あの御言葉だ。
それは、私の考えることよりも、あなたの考えている計画がはるかに壮大なことなので、そちらが実現することが人類のためになる、という、信頼の意味でもある。
懸命に努力した、人間・羽生さんからすれば、「実らなかった努力」というのは事実だろう。届かなかった祈りのように思えるけれども、でも、羽生さんの奥底の奥底にある魂には、4回転半をこの大会で飛ぶことよりも、違う願いがあった、、とも思うんです。(本当に勝手な自分の願望を書いているだけなのかもしれませんが)
その計画は簡単に、すぐには明かされない。けれども、努力が報われる、結果を出すこと以上の価値・・・。それは、羽生さんの真の幸福、全人類の真の幸福につながるもの、なんだと思います。この世に生まれてきた人間がどのような存在であるのか、ということ。いただいた賜物を、自分のために、人のために輝かすこと。いってしまうと、愛を放射すること。(愛には、勝者と敗者という区別がない)
私の知人で、羽生さんのファンがいて、彼女は、60代で、高齢の母親を一人で在宅介護していて、介護鬱になっていたという。毎日介護介護で、世の中のニュース出来事も知らずにいた。そんな時に、パソコンでなにがしかの動画を見ていたら、たまたま羽生さんのスケートの演技を目にしたのだという。この人が誰でどんな人なのかも、知らなかった。だけど、その映像に引き込まれ、夢中で動画を次々にクリックし続け、気づけば朝になっていた。そこからむくむくと力がわいてきて、介護鬱の状態を抜け出し、外に出ることができるようになり、カナダにまで行くようになったと。
こんなふうに、人をよみがえらせることができる人、いるだろうか。
そんな力を持っている人、いるだろうか。
羽生さんの努力は、ご本人が知らないところで知らない形で報われている。人を、救っている。人を一瞬にして変える力をもっている。
たとえていうなら、自分の足で歩くことのできない人を、飛行機に乗せて遠くの景色を見せるような。目の見えない人に、万華鏡の美しさを見せるような、別世界を見せてくれる力。別次元に連れていってくれる力。
羽生さんが、何かの機会にお子さんから「スケート選手になっていなかったら何をしていたと思いますか」という質問を受けられていたことがあります。それに対してこんなように答えておられたんです。
スケートをすることしか考えられない。スケートをしていない自分が想像できない。ぼくはスケートをするようになっていたと思います
「Born singer」 という名曲がありますが、Born skater である羽生さん。スケートにすべてをささげて、まさに全身全霊を献げて生きてこられた羽生さん。その生き様が人を揺さぶらないわけがない。どれだけの、他の人が想像することができないほどのトレーニング、孤独、苦悩でもあっただろう。「つらかったですね」とさらっとした表現の裏にある、はかりしれない重み。それは羽生さんだけが知っている領域。そこに共にいてくださる存在にも思いをはせる。
人間の意図を越えたところにある神様の望みが叶えられているのだとしたら、私たちはその美しい奇跡を見させていただいたことに、ただただ感謝したい。その尊さに、そして羽生さんの存在に。そんな次元を超えた演技を見せていただいて、本当にありがとうございました。
「Born singer」BTSさんver お借りしました。
「あんなに夢見てた舞台でラップしながら踊る時、まだ生きてるんだって実感して、疲れてて行くのも帰るのもキツかったけど耐えられた。 大切な人達が見守ってくれてたから。体が痛くても我慢できた。 歓声が聞こえたから」
歌詞と羽生さんがだぶります。
(見出しの写真は共同通信写真部さんのツイッターよりお借りしています。ありがとうございました。)