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DCケーブル自作と秋葉原渉猟(前編)

☆プロローグ

OLIOSPECのPC用の電源、canarino DC power supply 12Vの2台と、エルサウンドのUSB外部電源用のリニア電源の1次側に、それぞれ個別にTDKラムダのノイズフィルターであるRSMNシリーズを挿入した。それぞれの電源が出力する電流の2倍程度の定格電流でやるとノイズフリーで音痩せも無縁の電源を構築できるのではないかとやっている。無論、アースしており、ドレイン線がある箇所は全部繋ぐつもりである。canarino DC power supply 12Vは12.5AであるがRSMN-2016はその型番の通り16Aの定格である。この1次側にRSMN-2020、つまり定格20A仕様を試す予定である。不必要であろうというのは理解している。

これからRSMN‐2020をcanarino DC power supply 12Vに試す。アースマテリアルのケーブルの剥きが完了したら、ジオング台座2台に封入して微調整をかける。。。それで差し当たってアダプターの1次側は結論がでるのかな、、、と思っていたが、、、DIRETTAという新風が吹いていた。

また、USB外部電源用のエルサウンドの2次側の出力5Aであるが、FINEMETとFIX CURRENT+CPMを挟んでいた。これをRSEV-2010をtx-USBx10GのDCジャックまで10cmくらいの位置で挿入して、導体を2sqくらいにすることで代用できないかと、考えている、もとい、希望している。

エルサウンドの2次側、こちらが先である。これを後回しにするとcanarino DC power supply 12Vの威力が出てこない。そう思って、DCケーブルを自作した。我ながら度し難い見た目なのであるが、これまた予想だにしない音質の良さなのである。(笑)

この状況で、秋葉原の電気街へと嫁と小さい子と食事と買い物のツイデに寄ってみた。OLIOSPEC→オヤイデ電気→オーディオみじんこ、と3店舗だが、それぞれとても面白い体験だった。しかし、もっとも予想外で衝撃的であったのは、OLIOSPECだった。

下は抱っこしていた赤ん坊を嫁に預けてふらふらして帰ってきたら、手に持っていたもの。

5.5SQで3芯のTUNAMI(黒)と、1.25SQで2芯のTUNAMI(白)は購入した
EVA、サウンドジェニック用は購入した
謎のケーブルは酒井さんにお借りした。


☆芋はんだ式ミノムシDCケーブル

芋はんだ式だからプラグカバーに収まらなかったわけではない。2sqの線を電極に止めるだけでカバーの入口が塞がってしまうのである。これがDCケーブルなるものの、正真正銘、現実である。邪魔なのはカバーではなく規格だ。規格が太い線材を不可にしているだけなのに、5A程度なら4分の1の太さにするのが電気工学的に望ましいみたいな話にいつのまにかすりかわっている。

最悪の見た目なのは重々承知している。しかし、ドビュッシーの「月の光」がここまで倍音を発散するのか!と。耳の裏側まで月の明るさの倍音が伸びてきている。ビリー・アイリッシュの「皆んな死ぬ」のシンセサイザーの低域もサラウンドでアンビエントをかけたような包囲感の1番深い位置からビリー・アイリッシュのあまり滑舌がよろしくはないが肉感的な唇が浮かび上がるような仕方で定位して、アンニュイな声を届けてくれる。深い位置の後方定位なのに、すぐそばにいるような立体空間なのである。これCDのリッピング音源なんだけど、スペックの低いファイルのリニアリティと滑らかさの欠落がない再生音だ。やった。へへへ。(^^)

アンドリュー・フォン・オーエン「ドビュッシー、月の光」は192/24のFLAC
ビリー・アイリッシュ「Everbody Dies」はCDからリッピングした44.1/16のWAV

◎部材のこと

ミノムシDCケーブルの線材はオヤイデの3398-14である。つまり、私のPC、canarino fils9 Rev.5の内部配線材、またcanarino DC power supply12Vと同じ導体で、それの2sq版である。

オヤイデ.comでももちろん買える。

これをホットとコールドの2芯とした。撚っていない。銅箔シールドで部分的に束ねただけ。もとは、エルサウンドの純正DCケーブル。これはエルサウンドの人が教えてくれたのだが、0.75sqの1芯シールドケーブルである。たぶんDCケーブルには多いのだが、1芯シールドというのは芯線をホットにしてシールドを「コールド」ではなく「グラウンド」としている。そこでChat GPTに相談してみた。(笑)「DCケーブルのホットとコールドを別の線材にするのはありか?」みたいに。メリットはない。また電圧変動が導体ごとにばらつくことによるノイズを招くリスクがある、みたいな答えであった。DCケーブルのホットとコールドを別の線材にするのは、オーディオ業界ではそこそこメジャーのようだが、どうなんだろうか。1芯シールド線によるDCケーブルの是非はおくとして、どうしても2芯でコモンモードチョークを試したい。だから芋はんだしかできないのに自作することにしたのだ。なおオヤイデの3398-14は超優秀だと分かった。安い。しかも、はんだで被覆が溶けない。にもかかわらず、音が良い。

エルサウンド純正のDCケーブル。電源側(左)はロック式になっており差し込み口のところで回転できる。それは便利だし、安全ですらあろう。しかし、ロックをしても、センターピンは浮く可能性がある。一度、なぜか電源LEDが点灯しているのに、MAY DACが「UNLOCK」と表示したことがあった。あれこれ調べると、エルサウンドの背面でロックがされているのに、DC電源が出力されていなかったのであった。こうしたことに目くじらを立てる神経質さは自分にはない。しかし、そうなってくると出力インピーダンスはどうなんだ、電圧変動にタフになれるのか?と思うのである。だから、音質を考慮してエルサウンドの電源を使い続けるために、直結を選択しようと思う。また、プラグのニッケルメッキも受け入れ難い。ニッケルでないDCプラグなどほとんど選択肢はないのだから、直だししかない。

問題はプラグだ。定格5A以上というだけならば探せる。しかし、ニッケルなしの条件をつけると見つからない。しかたない、後者の条件を譲歩して海外製を取り寄せた。

ロックはエルサウンドの電源側と適合する。ロックの感触はエルサウンド純正ケーブルのそれより良い。回転しないが。だから良いのだろう。ニッケルの塊みたいに見える。
こちらはデバイス側に使うプラグ。でかいが虚仮威し。虚仮威しプラグと呼ぼう。でかいロック用のリング付き。もちろんSOtMのtx-USBx10GのDCジャックにロックなどない。
虚仮威しのロックは破壊した。銅が薄く見えるね。こんなんならメッキなしのほうが幸せなのに。
ウレタンゴムみたいのが虚仮威しのカバーについているので、これも取り去った。プラグケースに分厚いゴムをつけて何がしたいのでしょう。プラグは振動していますからな、分厚いゴムをつけたら、プラグ自体の振動に、遅延した大きな振動がもれなく付いてくるのでしょうな~。

自作するために部材を調べていて、DCケーブルのことが私は大いに嫌いになってしまった。

◎作製について

2sqでやるとDCプラグの電極から導体が盛大にはみ出る。特に図体の大きい虚仮威しプラグの電極が、小さい。芋はんだ式をやめたいのだが、電極の背面まではんだをまわして、絶対に取れないように固定した。もちろんDCプラグの電極についている導体を通す小さい穴には2sqは通らない。

ケースにも入らないので、極薄のフッ素テープで絶縁して、銅箔テープを思いっきり引っ張りながら5重くらいに巻いて、ミノムシの家みたいにした。お察しのとおり空洞であるが、指で押しても曲がらない。実は強度が高いので、見た目ほど酷くないのである。(笑)初めてのDCケーブル自作の全工程で3時間ほど。

◎自作の狙い

このミノムシDCケーブルは実験用である。なんのかと言うと、エルサウンドのリニア電源の直だしのDCケーブルを決めなければならない。まず長さだが、どこまで短くして効果がでるかは、導体の径も関わる。私が素人ながら思うに電源の導体の質よりも、導体の長さと径は音への影響が大である。2sq2芯にすると、出川式fix current の手前でも、音質が良くなる。2芯にするのは間違いないとして、ミノムシDCケーブルを使って、まずは出川式の有無を今一度チェックするとしよう。次に、FINEMETも外して、TDKラムダである。

RSEV-2010

ミノムシDCケーブル(2sq&2芯)は十分に音質比較に耐えることが分かった。早速、切断してRSEV-2010でFINEMETとcurrent fixをリプレイスできるかを検討しよう。RSEVはコイルである。-2010なので大容量である。電流を充放電するわけではないが、、、バルクキャパシタに相当する機能を務めてもよいではないか。期待しよう!

☆ミノムシDCケーブルの切断とRSEV-2010の挿入 

自作ケーブルを切るのに躊躇はいらない。製作から3日目に、純正ケーブル+FINEMET+出川式current fixを、ミノムシ+FINEMET+出川式current fixが超えたのを再確認したので、ミノムシDCケーブルを切断してRSEV-2010で中継ぎした。

端子台のネジとワッシャーはチタン製に交換した
磁性がないことを確認したステンレス製のステーに装着
RSEV-2010のシャーシのネジ穴を使うと、このステーには斜めにしか付けられないが、エルサウンドからのDCケーブルは左側から来て、右側のPC背面のジャックに挿すので、むしろ端子とケーブルにストレスのかからない接続になる。
二次側は20cmくらいにした。5cmくらいにするにはもう少ししっかりした準備が必要なので、今回はこの長さで様子を見ることに。二次側は撚ることも可能なので、次の実験までに撚ってみる。
一次側も撚ることが可能。圧着端子にネジ止めなので、着脱が容易で、何より安定した接続でうまくやればケーブルをダンピングできる。
RSEVのシャーシは横にあるアース用端子台と導通しているようだ。このシャーシとネジ4本は磁性体。中央の切れ込みの箇所で回路の何かと繋がっているのかは未確認。繋がってないなら外してしまった方が良いかもしれない。

☆ミノムシ+RSEVのセットと試聴

ありあわせの部材なので。とはいえ、RSEV-2010をステーの長い方に付ければ、二次側を半分の長さ、つまり10cm未満にもできるだろう。銅板か何かを挟んで角度を調整すれば太い単線でぶち込むこともできる。今後、といってもしばらく後だが、本気でやるつもりである。(^^) 従来のDCケーブルの常識を打ち破る音質を実現するだろう。
RSEV-2010を真横にするだけで良いのか。なお、ぐちゃぐちゃに見えるだろうが、相変わらずケーブルは他のケーブルや筐体からは非接触の空中配線を維持している。(^^) 

電流を制限しないノイズフィルタリングで音痩せなし&音数が多い再生音を目指す試みをいくつか実施してきた。外したのは、値段の安い5.5sqを、それよりは高いオーディオ用の3.5sq規模のものに変えた時くらい。(『PCオーディオに挑戦㉑』参照。5.5sqを質がよかろうと3.5sqにするのは自分の仮説を裏切った行為だった。まあ、この失敗が反対の命題を示唆しているが。) 快進撃であるが、要するに電源ラインを太く、短く、しながら、フィルターは大容量にする、という至極当たり前のことなのだ。はっきりいってDCラインにまつわるコネクターやプラグの類が足枷になり、その枷の中で生きることを慎ましさという美徳と受け取らざる得ない状況が悪い。それを頽落だと見なして自ら動きだすならば、《自然》なことをしているのだ。この仕掛けが音が良いのは、自然、なのだ。この道で、精度を上げれば上げるほど、命に至る狭き門をくぐることになるはずだ。

ポゴレリチ「ラプマニノフ、ピアノソナタ2番」

2日間で10時間ほど試聴した。電源は設置した時からつけっぱなし。一曲だけコメントする。スタインウェイを組み倒して制圧しようとするポゴレリチの両手とペダルは、ピアノの筐体から低域の倍音が蒸気のように、ちょうど開放した響板の高さまで滲み出て、さっともみ消されていく。圧倒的なリアリティーで、20年前から唯一無二のラフマニノフ・ソナタであったホロヴィッツの記憶を消し飛ばす。目が覚めるようなリアリティーであった。2日目のことであった。

いくつかの試聴で初日にはcurrent fixはやはり外せないかと悔しい思いをしたものだった。3種ほど協奏曲を聴いていて、またもやソリスト、例えばスリーピングビューティーにガット弦をあてがったであろうイザベル・ファウストの薄く細いアタックが迸らせるランダムな響きや、ブラームスの作曲時のブリュートナーでブラームスのピアノ協奏曲を、スタインウェイの向こうを張るつもりはないと言いながら、ポゴレリチとは違ってダイナミックレンジを枯渇させてしまうのだが、微かに高域でプリュートナーの片鱗であろう煌めきを発散させるのを、聴き取れる、このUSB外部電源のシステムで。しかし、current fixが為せる技なのだと思われるオケの素晴らしさが、その代わりにRSEV-2010としたところ、両曲の再生音から消えてしまったように思ったのだ。エイジングだったのかもしれない。ボリュームのコントロールが上手くいかなかった。

しかし、定格3Aの出川式current fixを外すことはやはりできないのだろうか?という疑念は、圧倒的なポゴレリチのグランドコンサートへの、ほとんど暴力的ですらある収まりがつかないピアニズムを、迫真のリアリズムで、ボリュームに触ろうなどという気がさらさら起こらなかったという意味あいで、私のオーディオルームに芸術的にピタリと収めてくれたのだ!ミノムシDCケーブルとRSEV-2010《のみ》で実験を進めていくことにすぐに決まった。

☆前編はおしまい

話が長くなったので、いったん切る。「秋葉渉猟」と言いながら、DCケーブル自作の話に終始したが、そちらは後編に。

秋葉が絡むのは、RSEV-2010だけでいくことに決めたが導体を決めていない。そこでまず秋葉。次に、私のシステムのDCケーブルはもう一つあり、2台のCanarino DC power supply 12Vの2次側である。ここでまた秋葉ということなのである。(爆)