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大人になって学ぶなら……中国語をおすすめするこれだけの理由 04

林屋啓子

中国語で世界が広がる

●まずは声をかけてみる

 これまで、日本人にとって、いかに中国語が学びやすい言語かご紹介してきましたが、他にもメリットや楽しさがいろいろあります。日本で暮らす外国人数は中国大陸がトップ、台湾も合わせると85万人近く(出入国在留管理庁2023年調べ)だそうで、わざわざ海外に行かなくてもネイティブに出会えるチャンスは十分にあります。すでにクラスメートや同僚が中国大陸や台湾出身だという方もいらっしゃるでしょう。彼らの中には、日本語を話すのが上手でも文章を書くのは苦手という方が少なくありません。……ということは、例えば文章の修正を手伝ったりすることで、仲良くなるきっかけも簡単に生まれそうです。
 
 旅行客が道に迷っているのを見つけたら、勇気を出して声をかけてみるのもいいですね。片言の中国語、必要なら筆談や英語も総動員すれば、割と何とかなるものです。近ければ連れて行ってあげ、道すがらテキストで覚えたフレーズなどを使ってみると意外と通じるかもしれません。しかも、実際に使ったり聞いたりしたフレーズは、単に暗記するより印象に残りやすくなります。

新宿の地図(日本語版/中国語版)
編集・発行:新宿区・一般社団法人新宿観光振興協会

 道で声をかけるのはさすがに無理という方は、中華料理店でトライしてみましょう。最初は挨拶や料理名だけで構いません。分からなければ日本語に切り替えられるので安心ですし、何度か通って顔見知りになると緊張せず話せるようになります。相手の話し方に慣れてくると聞き取れる割合も高くなり、「今日はこのフレーズを試してみよう」と事前準備をしていけば、モチベーションも上がりそうですね。

●音にも慣れよう

 鮮やかなスタートダッシュが狙える中国語ですが、「聞く」と「話す」は「勉強する前から分かる」というわけにはいきません。そこで、慣れるためには聞き流しをおすすめします。例えば外出中や作業中、特に集中する必要はないので、フレーズ集の音源をただただ繰り返し聞き流してみてください。最初は中国語と日本語が交互に収録されているものがいいかもしれません。中国語は音の高低が特に大事なので、歌のように音程込みで覚えましょう。ちなみに中国語を習っていない方が「ありがとう」の“谢谢”を「シェイシェイ」と発音することがありますが、どちらかというと「シエシエ」という感じなんですよ。
 

●人脈と行動が広がる

 中国語を使ってみて楽しいのは、ほんの片言でも話すと相手がとても喜んでくれるという点です。また、中華圏では人との距離が近いので友達になりやすく、一度友達になるとイベントに誘ってもらったりして、彼らの友達や家族など新たな人脈が広がっていきます。中国人の「人脈パワー」は日本人の比ではなく、例えば「○○に詳しい人、知らない?」と聞くと「知り合いの知り合い」などから人材を紹介してもらえることもあります。しかも、友達が困っていたら全力で助けてくれる場合が多く、とても心強い存在です。中国人はこの人脈を武器に、世界へ広がっていったのですね。

一人と友達になると、そこから人の輪が広がる

  さて、世界には多くの言語がありますが、母語話者数でいうと中国語はぶっちぎりでトップです。これはもちろん中国の人口がものを言うのですが、中国大陸や台湾のほか、東南アジアなど華僑の多い国にも中国語を使う方が一定数存在します。中国には方言も多くて音では通じないこともありますが、筆談なら何とかなります。また、世界各地にチャイナタウンがあるので、海外で困ったときに中国語が話せると、ピンチを切り抜けられるかもしれません。私もアジア系の方に中国語で話しかけたら助けてもらえたなどの経験があります。「中国語が話せる」というのは、海外において確かな「お守り」にもなるのです。

シンガポールで見られる中国語の看板


  さあ、アドバンテージがたっぷりで、楽しい雑学ネタもあって、バックに強大なコミュニティを擁する中国語、これを機にちょっとかじってみませんか?

林屋啓子(はやしや けいこ)
社会人になってから中国語に興味を持ち、仕事を辞めて中国で2年半の留学生活を送る。北京語言大学卒業後は中国語学習雑誌『中国語ジャーナル』(アルク)の編集を8年にわたって担当。また、中国語学習書・教材の企画、制作、編集、校正などを数多く手掛ける。著書に『「社会人」に一休み、中国留学してみれば』(文葉社)、共著に『ひとりで学べる中国語 基礎文法をひととおり』(青木隆浩/ベレ出版)、共編著に『選抜!中国語単語 常用フレーズ編』(相原茂/朝日出版社)がある。


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