チリらしいワイン
エラスリスが、こんなに寒くてはよいブドウなど育たない、と言われていたアコンカグア・ヴァレーの海沿いの地域に植樹してからほんの15年ほどだという。そこから作られたラス・ピサーラス シャルドネ 2017はパーカーポイントでチリ史上過去最高の98点を獲得。赤も含めて、98点は初めてだったそうだ。
15年と聞くとかなり最近の話だと感じるが、例えばアルマヴィーヴァやセーニャがリリースされたのは90年代中盤以降。エラスリスがチリのプレミアムワインのクオリティをヴィニェド・チャドウィックを始めとしたワインで示した、所謂「ベルリン・テイスティング」は2004年のこと。カリフォルニアの「パリ・テイスティング」から遅れること28年、である。チリのワインが本格的に世界で認知されたのはそれほど昔の話というわけでもない。
濃さや力強さが持て囃された90年代に評価を高めたチリワインだが、その後の世界的なワインのエレガント化に歩調を合わせるようにしてチリの中でもそれまで見過ごされていた地域が注目を浴びるようになった。そのひとつがこの海沿いのコスタである。南北に長いチリを縦に三等分し、西側をコスタ、真ん中をエントレ・コルディエラス、山側をアンデス、という。同じアメリカ大陸の北半球側に位置するカリフォルニアと同じように、チリの沿岸に流れているのもフンボルト海流という寒流であり海は非常に冷たい。
今回のワインは高得点を取ったラス・ピサーラスの弟分のラインのソーヴィニヨン・ブラン。チリの白ワインはフルーツの香りが強くて酸が弱いと思っているなら、そのべったりと張り付いたイメージをきれいに剥ぎ取ってくれるだろう。大雑把な比較をお許しいただけるなら、ロワールのソーヴィニヨン・ブランほどにも冷涼な味わい。かつ海の影響を色濃く受けた質感の柔らかさ。現地でセビーチェと合わせたら最高だという。
そういえばそもそもチリは魚介消費量の多い国なのだ。そしてワインはチリの輸出産業だから自然と国内よりも海外で売れる味わいを目指す。(エラスリスも85%を輸出しているそうだ。)
そう考えると、この味わいのことも少し理解できるようになる。よりチリの風土を表したチリワインに。コスタのワインはチリという国の多様性のひとつを映し出す。まだ始まったばかりかも知れないが、そんなワインが高く評価されるというのはとても素晴らしいことだと思う。
生産者:Errazuriz
ワイン:Aconcagua Costa Sauvignon Blanc 2019
インポーター:Jalux
価格:¥3,800
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