A Hungarian Pinot Noir
今一番気になるワイン産地はハンガリーだ。
お隣のオーストリアの視点から見ると、東にあるハンガリーといえば「パノニア気候で暑い」国である。オーストリアの産地は国の東部に固まっているが、これは西側にアルプス山脈がありぶどう栽培には標高が高すぎることと、東のパノニア気候の影響を受けるため温暖な影響を受けることが理由だ。
冷戦時代に西側だったオーストリアと比べると、ハンガリーは東側だったために経済的にも立ち遅れた。ワインの生産においても、洗練された世界観を確立させたオーストリアなど西側の国々と比べると、まだまだ粗野なイメージを持たれている方も多いだろう。
しかしハンガリーは、昔はヨーロッパを代表するワインの産地だった。19世紀にはフランス、イタリアに次ぐ規模のワインの生産があったとも言われる。その後フィロキセラで荒廃したが、脈々と続く文化がある。
こういった土壌に、現代のワインの知識や情報が届き始めている。ともすると埋もれていたものが再発見されつつある。種だったものから一気に芽が吹きだそうとしている。ハンガリーのワインを飲むと、そんな気がして惹きつけられる。ワインにダイナミズムがあるのだ。
ハンガリーのピノ・ノワールと聞いて期待する人は余程の変わり者かもしれないが、これだけダイナミズムのあるピノ・ノワールは世界でもそうはない。表面的な美しさではなく、惹き込まれるようなエネルギー感と深み。酸化防止剤を全く使用せずに造られた作品として危険なほどの怪しい魅力のあるワインだ。
そういえば、怪しさのようなものを感じるワインはそれほど多くない。計算されたワインからは感じられない一種の危うさのようなものを、この地域のワインからは比較的多く感じるような気がする。海外に出かけられるようになったら、その正体を探しに出かけてみよう。
生産者:Bencze Birtok
ワイン:ATLAS 2018
インポーター:Japan terroir
価格:¥7,000
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