KPI式PDCAで10xな事業成長を

いま、あなたは自宅前にいて車(会社や部署)に乗っているとしましょう。その車に乗って富士山(目標・KGI)に行こうとしています。エンジンをかけて、まず何をしますか?いきなりアクセルを踏みますか(感覚経営)?そう、カーナビ(計画)を設定しますよね。行ったことがないところがないところ(達成したことがない目標)に行こうとすればなおさらです。そして、そのカーナビに沿って運転していくでしょう。そのとき、そのカーナビの縮尺が広域すぎる(計画が大雑把)と、100m先の角を曲がらないといけないのにそれがわからずに通り過ぎるかもしれません。縮尺を詳細(KPIをつかった詳細な計画)にしておけばそういうことも防ぎやすくなります。また、仮に道を間違った(実績が計画通りにいかなかった)としても、カーナビがリアルタイムにリルート(計画変更)してくれますし、より早く到着するルート(重要なポイントを発見して改善)が見つかればリルートを提案してくれます。目的地(目標とそれを達成するまでの計画)に対しての現在地(実績)を常にカーナビで確認しながら、一方でスピードメーターやガソリンメーターなどの各種計器(細かい実績)も確認しながら運転をすることでしょう。また、遠いところに行こうとすれば同乗者(仲間)が必要で協力し合い(リカバリー)ながら目的地を目指すことになるでしょう。そして、同じ「光景」(車から見える景色やカーナビ)をみているからこそ共通認識が持てて協力し合いやすくなる(一致団結)はずです。逆にカーナビがなくて運転者が感覚的に運転(感覚経営)していると同乗者は状況をよく理解できずに「ただ乗っている」(主体的に行動できない)だけになるかもしれません。

経営者であってもなくても、管理者であってもなくても、誰であれビジネスにおいて「一人では到達できないところ」に行こうとすれば、このようなPDCAをまわしていくことになるでしょう。そして、目標であるKGI(Key Goal Indicator)に到達するために、より早く、より正しく、このPDCAをまわすことが大切で、そのときにとても役立つのがKPI(Key Performance Indicator)です。


一人では到達できないようなKGIを組織で達成しようとしたときに重要なポイントがあります。

次のようなインドの寓話をご存知でしょうか。

ある日、6人の盲人が象を触ってその正体を突きとめようとしました。
1人目は象の鼻に触り、「象とは蛇のようなものだ」と言いました。
2人目は象の耳に触り、「象とはうちわのようなものだ」と言いました。
3人目は象の足に触り、「象とは木の幹のようなものだ」と言いました。
4人目は象の胴体に触り、「象とは壁のようなものだ」と言いました。
5人目は象のしっぽに触り「象とはロープのようなものだ」と言いました。
6人目は象の牙に触り、「象とは槍のようなものだ」と言いました。
それから6人の盲人たちは長いこと言い争い、それぞれが自分の意見を譲りませんでした。

ここで大切なのは、「誰も間違ってはない」ということです。それぞれの視点からみた「象」はそれぞれの「部分」においては正しいでしょう。ではなぜこのような言い争いが起こるかというと、誰も「全体」がみえていないからです。いえ、一部の人だけが「全体」がみえていたとしても同じことになるでしょう。つまり、「全員」が「全体」を等しく見えている状態があれば、このような言い争いはなく、共通認識が持てたはずです。

そう、「組織で」となったときに重要なポイントは「共通認識」ですよね。一人ならそんなものいらないでしょうけれども、複数人が集まったなら共通認識が持ててないとバラバラの行動をしがちで一致団結して同じ方向(KGI)に向かって進みづらくなるかもしれません。

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このイラストは戦国時代の軍議の様子です。大将を中心に各武将が集まって、戦略図を見ながら作戦をたてています。全員の中心にあるこの戦略図。これがあるからこそ作戦の全体像が理解できて、各自の役割分担もしやすく、全員が共通認識を持てます。その結果、各武将がそれぞれの持ち場に戻っても、作戦の全体像を理解しながら自分の役割を果たしやすくなりますし、持ち場が離れていても他の武将とも連携して動きやすくなります。もちろん、その目的は戦に勝つことですが、逆にこれをしなければ、勝てる戦も勝てなくなるかもしれませんよね?

戦国時代の軍議、現代で言えば、経営会議、幹部会議、事業部会議、部門会議といった重要会議ですね。みなさまの会社でもこういった会議が行われていると思いますが、戦国時代の軍議のようになっていますか?そのためには戦略図が重要です。
この戦略図を活用することによって、

・社長はもちろん、営業部長、マーケ部長、開発部長、管理部長も、それぞれの領域のみならず全員が事業全体の全体像も見えるようになる。
・全員が事業全体を見えているので、参加者全員が全体最適な視座に立って全員でアイデアを出しあって議論できる。
・事業全体の状況を把握した上で、各部門の役割が理解できるので、各部長が全体最適な視点を持って各部門のマネジメントにあたることができる。
・「いまなにを優先的にやるべきなのか」といった意思決定を、全員合意の上で行いやすく、共通認識が持てるようになるので、適切なアクションが取れるようになる。
・各部長が他の部門の状況も含めた事業全体の状況を理解できるので、他の部門との連携をうまく取りながら、相互にフォローしあって、全体目標を達成しやすくなる。

といったメリットがあります。この戦略図のポイントとしては、

・事業全体の状況をだれもがわかるようにすること
・状況から判断していまだれが何をやるべきかの共通認識をもてること

です。この「戦略図」をKPIを活用して描くことができます。KPIを活用して、組織やチームのアクションをつないでいくためには、チーム全員が、1つ1つのKPIがどのようなメカニズム・関係性で連鎖していくのかを理解している必要があります。これには、KPIツリーで前提のとなるビジネスモデルの共通理解をして、KPIベースの予算で全体戦略とそれに基づく各部署の動きについて共通認識を持ち、KPIベースの予実分析でみんなで状況に応じた戦略の練り直しをして実行するということが必要です。そうすることで、

・自分たちが関わっているビジネスの全体像がどのようになっていて、
・その中で自分のチームの果たすべき役割が何で、
・他のチームとどのように連携すれば良いのか、
・その中ではどういったKPIが重要になっていて、
・それぞれのKPIの関係性がどうなっているのか、
・自分が日々追っているKPIはどういった位置付けにあるのか、

を理解しやすくなります。理解しやすくなるだけでなく、全員が同じ認識を持ちやすくなる、というのがとても重要です。

KPIを単なる数値ではなく、「意味や意図を持った数値」としてみんなで共通認識を持つことができれば、組織やチームが同じ方向に向かいやすくなります。みんなで同じ「景色」をみながら、共通認識を持って、同じ「目標」に向かって一致団結して進みましょう。

この共通認識を持つというときに重要なポイントがあります。

「木を見て森を見ず」という言葉があります。これは小さいことに心を奪われて全体を見通していないことを意味しています。ビジネスで例えるなら、

・営業部は営業部のことだけしか見てなくて事業全体を見れていない
・Aさんは自分のことだけしか見てなくてチーム全体を見れていない

といったように部分最適な視点になってしまっている状態を意味するでしょう。また逆に、正しい言葉ではないと思いますが「森を見て木を見ず」という状態も良くないでしょう。

・営業部は事業全体を見れているけど営業部内のことがよく見えていない
・Aさんはチーム全体のことは見えているけど自分のことがよく見えていない

といったような状態です。理想的には「森も見て木も見る」ですね。つまり、「全体最適」な視点も持ちながら、「部分最適」な視点も併せ持っている状態が理想的です。

もう一つ重要な視点として、「鳥の目」「虫の目」「魚の目」という言葉があります。
「鳥の目」は高い位置から、マクロな視点で全体を俯瞰的に見るということです。「虫の目」は複眼で、いろいろな角度からミクロに物事を見るということです。 「魚の目」とは、潮の流れといった「流れ」を見るということです。

「鳥の目」でKPIツリーを使って全体を俯瞰的に見る。
「虫の目」で各KPIの個別の状況を細かく見る。
「魚の目」で全体も個別も過去からの推移や今後の予測といった時の流れを見る。

「鳥の目」や「虫の目」については先ほどの「森も見て木も見る」という内容と同じなので、ここでは「魚の目」について書きます。

KPIマネジメントでは、前月・前週のKPI実績の分析や振り返りが重要です。では、そういった「結果の分析」は何のためにしているのでしょうか。

過去を分析すること自体が目的になってしまっているケースもあるかもしれませんが、そうではなくて、「これから何をすべきなのか」を意思決定するために過去を分析しているはずです。つまり、未来に向けた意思決定をするために過去を分析しているといえます。

未来に向けた意思決定をするためには、「今のままだったらどうなるのか」を知ることがとても大切です。KPIを使って過去を分析してその結果を報告するだけではなく、KPIを使って未来を予測して経営の意思決定に役立てることを考えてみましょう。つまり、過去→現在→未来という時の流れを見ることが重要ですね。

さて、組織でKGIを達成するためには、どのようにKGIまでのロードマップをひいて、その後のマネジメントをどのようにしていくかも重要です。冒頭にカーナビのたとえ話をしましたが、ここではダイエットにたとえて書いてみましょう。

さて、いま、あなたがダイエットをしようとしているとします。
3ヶ月後までに体重を90キロから70キロまで落とそうという目標を立てました。1ヶ月後に80キロ、2ヶ月後に75キロ、3ヶ月後に70キロにする目標を立てたとします。そして、その目標を達成するために、毎日のトレーニングメニューを考えて計画を立てました。たとえば、1日に腕立て伏せ100回、腹筋100回、といった具合です。しかし、日々こなしていく中で、今日は腕立て伏せが50回しかできなかったとします。そこで、翌日にその分を上乗せして腕立て伏せを150回やろうというリカバリープランを立てます。また、1ヶ月がたった時に、目標の80キロには到達していなくて、まだ83キロあったとすると、2ヶ月目以降のトレーニングメニューを考え直しますよね。このように3ヶ月後の目標達成に向けてKPIで細かくて具体的な計画をたてて実行し、PDCAをしっかりまわしていくことができたら目標の達成確率は着実に上がっていくでしょう。
これは個人としてのPDCAですが、これがビジネスにおけるチームでみんなでできたら、組織的にPDCAがまわせて、10倍の事業成長を手に入れることだって可能でしょう。

では、KGI達成に向けてのロードマップに沿って、適切に進んでいるかのチェック(モニタリング)についてはどうでしょう。

みなさんは毎年健康診断に行かれてますか?健康診断に行くと必ず血液検査をされますよね。この血液検査ですが、診断結果表が10個の項目(血小板、赤血球、白血球など)で診断されているのと、100個の項目で診断されているのと、どちらがいいですか?100個の項目で診断されている方が、より細かい分析がされていて、より健康診断の効果も高まりそうですよね。では、100個の項目があるからといって一つ一つの項目について詳しくみていきますか?さすがにそれはしないでしょう。それは10個の項目だったとしても同じではないでしょうか。詳しく見るのはあくまで「よくない」と診断された項目だけでしょう。つまり、健康を維持するためにはモニタリングする項目はたくさんある方がよくて、しかしながら、その全てに注目するのではなく、異常なものに注目して改善していくことになるはずです。
KPIツリーでたくさんのKPIを洗い出した結果、たとえば、100個のKPIが出てきたとします。「そんなにたくさんのKPIを見切れない!」という声が聞こえてきそうです。しかし、先ほどの血液検査と同じで、この全てが等しく重要なわけではありません。これらの項目について数字をとりながら継続的にモニタリングしていきますが、その中でも重要なKPIや異常なKPIにフォーカスして、議論し、改善施策を考えてアクションしていくということになります。重要なKPIや異常なKPIをどのように見つけだすのかについてはまた別の機会に譲ることとしますが、いったんできるだけ多くのKPIを洗い出すことをやってみてください。そこから減らすのはいつでもできます。

最後に、ビジネスの”レシピ”について。

日本に『料理レシピ』を広めた香川綾さんという方がいらっしゃいました。内科医としての経験から、日常の食事で病気を予防する大切さを実感されて、 計量カップやスプーンを考案し、誰がつくっても同じように美味しく、 栄養のある料理を再現できるようにした栄養学の母と言われている方です。

煮込む時間は「火が通るまで」、調味料は「ほどほどに加え」。
分量や加熱時間、調味料の割合などは、どれも秘伝とコツだらけの料理。
そこで、毎日の食事で病気を予防するために美味しく栄養のある料理を誰でもつくれるようにと発明されたのが料理レシピです。料理にモノサシをあて、材料、分量、手順などを数値をつかってわかりやすくすることで、誰が作っても同じようにおいしく、栄養のある料理が再現できるように考案されました。まさに「料理の再現性」です。

KPIを活用したPDCAは”ビジネスのレシピ”です。
次のような計画があったとします。

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美味しい料理を作る=売上(KGI)を達成する、としたときに、KPIが料理の材料です。そして、上の表で言えば、下から上に、「テレアポ数→アポ率→商談数→成約率→成約数→成約単価」が料理の手順(KPI設計)です。また、それぞれの材料の分量が、各KPIの目標数値(Plan)です。
さて、実際にこれに沿って料理をしてみましょう。(Do)
美味しい料理ができましたでしょうか?(KGIの達成)
うまくいかなかったらその原因をはっきりさせましょう。(Check)
その原因が、材料が足りないということであれば付け加えましょう。(KPIの再設計)
また、その原因が、分量が違うということであれば変更しましょう。(KPIでシナリオシミュレーション)
そしてまたそれに沿って料理をしてみましょう。(Action)
そのとき、必ずその状況や経緯、ノウハウを記録しておくことで、後からいつでも振り返られるようにしておきましょう。(会議の議事録・ノウハウ・分析結果のメモ)

このようなことを繰り返すことで、ビジネスの再現性はきっと高まるはずです。

ビジネスレシピがあったら事業成長の再現性を高められるでしょう。
そのビジネスに必要なKPI、そのベンチマークとなる数値、それを高めるノウハウなどが組織の集合知としてまとまったもの。毎日の仕事の中でそんなビジネスレシピがどんどん増えて、どんどんデータやノウハウが蓄積されて、アップデートされることでさらに再現性が高まっていく。
そんなビジネスレシピをみんなで創り上げ、10倍の事業成長を手に入れる。
楽しそうですよね。
ただレシピがあって機械的に量だけ計って作ってみても、「おいしい」「食べて幸せ」と思える料理はできないでしょう。
作る人の愛情や食卓の楽しさが最後のスパイスです。

ビジネスのレシピで事業をのばしていきましょう!


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