医療法人化しないという選択。
医療法人化のメリットデメリットは他の税理士さんが大いに語ってくれています。
私もそれ同意。って思うレベルの情報がネット上にありますので、今回は「医療法人化しないという選択」について税務の観点からではなくあえて書きます。
まず個人ではできなくて、医療法人化によってできることは「家計と経営の分離」「分院開設」の2つだと私は思っています。「節税」に関しては、法人化したほうが節税になる場合がある。と、いうだけで個人で節税ができないとは言えないからです。
1つ目の「家計と経営の分離」について。これは個人でも個人の通帳とクリニックの通帳を分けて管理すれば可能といえば可能です。ただ個人の場合、毎月決まった金額を生活費としてクリニック口座から引き出すこともできるし、今月はこどもの入学金払わないといけないから多めに引き出す。なんてこともできるワケです。
これが法人の場合、一度決めた役員報酬は原則次の事業年度が始まるまでの間は上げても下げてもいけません。法人(経営)の収益の個人(家計)への還元が一定期間拘束されることになります。
これを家計と経営の分離と表現したのは、例え個人(家計)に何があっても、法人(経営)は関係ない。そう割り切ってクリニックを経営することが自分に合っているだろうか。そうした視点で医療法人化を考えたことありますか?
お金の使い方って人それぞれです。自分の経営する医療法人が儲かっているのに、個人にお金が「いつでも」自由に動かせないってどういうこと?これって別に不満に思うの当たり前だと個人的には思っています。
でも法人なんです。役員が例えほぼ親族でも医療法人は法人という組織なんです。始めるときもやめるときも勝手にできません。いつも誰かの許可がいります。お金も勝手に使えません。
個人事業の最大のメリットは圧倒的な自由さにあります。それを超えるメリットを法人化に本当に見いだせていますか?
税金が安くなる。自宅を社宅にできる。生命保険が経費になる…
社会保険が強制加入になる、赤字でも均等割が発生する…
法人化のメリットデメリットはあげればたくさんでてきます。
それは必ず会計事務所が提示すべきことであり、ドクターが考えることでもあります。
ただその前に一度ただただシンプルに、経営と家計を本当に切り離したいのか。その自由と不自由について考えてみたらどうかといつも考えています。
2つ目の「分院開設」これはもう単純な理由です。個人で2つは経営できないからです。医療法人の理事長と個人診療所の開設者に同時になることは可能です(これは医療法人の運営する診療所で別の開設者がいることが前提です)。でも個人診療所2つの開設者になることはできません。そうなると2つ目は誰かの名義を借りないと診療所を開設できません。診療所の賃貸借契約から始まり全ての名義が他人の診療所を安心して経営できますか?医療法人であれば開設者が法人になるため、名義借りで起こり得るトラブルは基本全て防止できます。
以上2点に共通しているのは、結局のところクリニック運営を経営として捉え、法人組織の発展を進めて行く上で医療法人化しないとできないところにあります。
いつも医療法人化について聞かれるとき、大概の方が「法人化」自体に抵抗を持っていないのを感じます。それがいい悪いでもなく、さらには医療法人化がいい悪いという話でもありません。そもそも医療法人化するかどうかって「儲かっている」から興味を持ったり、会計事務所が提案してきたりするわけです。そのときに医療法人化だけが選択肢ですか?という話です。
医療法人化の検討において、この個人のお金の自由さが論点になることがほとんどないので。ちょっとゆるい感じでたまには書いてみました😊
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