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#02.特許なんて思いつかない!というアナタに
今回の記事は、特許ノルマに毎年追われるエンジニア、これから特許に関わるであろう未来のエンジニアに向けた記事になります。私がどんな人間かは、↓を参照してください。
私も開発の部署の経験があり、そこでは年間1件以上という特許ノルマがありました。幸いなことに、入社2年目が未達成だった以外はコンスタントに特許提案をしていました。が、自分の周りで苦しむ方を数多く見てきました。そのような人達に共通していることを一言でいうと「特許を難しく考えすぎている」ということだと思います。実際には、慣れてしまえばそんなに難しいものではないので、参考にしてください。
1.特許になる技術=高度な技術ではない
発明者となる開発の方は、特許になる技術=高度な技術、という先入観が強い人が多いと思います。まずは、この先入観を捨てましょう。特許法第2条第1項には「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定義はされていますが、特許を発想する際には不必要です。最新・最先端の技術でなくても、ローテクの組み合わせでも特許になることはありまし、いわゆる設計行為でも特許になることはあります。知財部の私が開発の方と話していても、自分がやっていることなんて別にすごくないし、単なる設計行為だから特許になるわけない、と考えている方もいらっしゃるようですが、それは違います。自分の開発業務を卑下しないことも大事です。
2.課題を解決したら、それは立派な特許ネタ
特許を発想するために、考えることは以下の3つです。
① (発明が解決すべき)課題
② 課題を解決した手段
③ (課題が解決したことによる)効果
この3つを順に説明して、話に矛盾なければ立派な特許ネタです。ここで、③の効果は、①の課題の裏返しになっているので、実質は①②の2つを抑えればよいことになります。②の手段に、新規性と進歩性がないと特許にはなりませんが、アイデアリストを作る段階で先行技術を調べる必要はないので、この①②③をエクセルにでもどんどん埋めていってアイデアリストを作りましょう。私は開発部門の時に部門の特許尻たたき役をやっていたのですが、メンバーの報告を聞いて、メンバーの開発行為を①②③に当て嵌める作業をよくやっていました。
例1:コーヒーと牛乳は知られていたが、コーヒー牛乳はなかった
①コーヒーは、そのまま飲むと苦い
②コーヒーに牛乳を所定の割合で混ぜる
③コーヒーより苦みが少ない飲み物が提供できる
例2:円形の鉛筆しか世の中になかった
①従来の鉛筆は机から転がり落ちる
②鉛筆を六角形にする
③机から転がり落ちにくい鉛筆が提供できる
開発業務を行っている皆さんは、必ず何かしらの課題(目的)があって開発業務をしていると思います。だから開発業務には必ず、特許ネタが潜んでいる、というのが私の持論です。課題は、新機能の付与、工程の簡略化、コストダウンと様々だと思いますが、基本的にはどんな課題でも特許は認められると思います。開発業務が上手くいって成果が出たら、それが特許発想のタイミングですよ。
3.進歩性を考えるのはやめよう
日本の特許制度は、新規性(特許法第29条1項)に加え進歩性(特許法第29条2項)がないと特許にならないのですが、特許を発想する際には一旦、進歩性については考えなくてよいです。理由は2つあります。
1つは進歩性を判断するのは審査官だからです。
発明に新規性があるか否かは、誰が見ても判断できるものです。しかし、進歩性は審査官が判断するものです。特許庁のHPには進歩性の審査基準というものがありますが、審査官も人の子です。進歩性なし、と一度認定されても反論は可能ですし、その反論によって審査官の認定が、進歩性ありに変わるケースだって多々あります。審査官が審査基準をもとに判断するようなものを、発明者や開発部門といった審査基準とは無縁な人たちがセルフジャッジしない方がいいんです。我々知財部が困ることは、開発部門だけで行う特許検討会(アイデアだし)で、「そんなの誰もが思いつくから進歩性がない」というダメ出しをしてアイデアを潰す人がいることです。そもそも発想ネタをたくさん出す会合で、ネガティブ発言をする人間を私は許さないのですが、こういう方に限って知財部の前でも「おれは特許を知ってるんだぜ!」オーラを出してきます。私にとっては、この上なく邪魔な存在です。
もう1つの理由は進歩性を特許要件としていない国があるからです。
日本など多くの国が進歩性を特許要件としていますが、アメリカは進歩性を必要としません(代わりに非自明性という特許要件があります)。特許において、進歩性は発明の効果と結び付けることが基本なのですが、米国では発明の効果を主張しても特許として認められません(これは、別の機会で話をしようと思います)。逆に、新規性さえあれば特許として認められるケースも多々あります。なので、日本では進歩性なしで拒絶されてしまったのに、米国では無効理由もなく権利が存続している発明も珍しくありません。
以上より、進歩性を考えるのは一旦、やめましょう。ただし、新規性は必ずないといけませんよ!
少し長くなってきたので、本日はここまでとします。
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