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#15. 特許3259166号「青果物の鮮度保持方法、青果物包装品、包装方法および包装資材」

 シリーズ化しようと思いますが、今日は1回目。日常生活で見つけた特許の公報を調べて、あーだこーだ言っていきたいと思います。

1.ニラの包装材

 本日、紹介する特許は近所のスーパーにニラを買いに行った時に見つけたものです。

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 この『パーシャルシール包装』という文字の下に、特許3259166号とご丁寧に書いてありました。

 よく「特許技術使用」「特許出願済」とかいう文字を見ることは多いですが、番号を堂々と書くのは結構珍しいかもしれません。そして、知財心をくすぐりますね。

2.既に権利は消滅していた

 写メでパシャリと取り、早速我らが特許情報プラットフォームで、公報番号を入れて検索しました。

 まず登録番号の段階で気づいた方も多いと思いますが、既に権利切れの発明でした。出願は1998年、2018年で期間満了でした。期間満了まで年金を支払われていますので、出願人に取っては大事な特許であったことが分かりますね。

 今回は商品に登録番号が載ってただけですから、満了で消滅した特許でも表示は虚偽でないし、なんの問題もありません。

3.発明の中身は?

 この特許について簡単にまとめます。詳細は読んでいただければ!と思いますが、個人的に課題は興味深いものでした。

【発明の名称】青果物の鮮度保持方法、青果物包装品、包装方法および包装資材
【特許権者】高知県
【請求項1】無孔フィルムを熱シールして作る袋の前記熱シール部の少なくとも一部を、熱シール部の長さ方向に接着部と未接着部とが交互に配置された断続状とし、その未接着部に生じる微細空隙を通じて前記袋内の青果物を呼吸させることにより、前記青果物を、嫌気状態にならない範囲で低酸素濃度−高二酸化炭素濃度状態に保つ、青果物の鮮度保持方法。
【従来の技術】青果物の出荷に際しては、通常、青果物から水分が蒸発して青果物がしおれるのを防止するため、プラスチックフィルムによる包装が行われている。このとき、完全密封しておくと、袋内が嫌気状態となり、青果物が窒息して、異臭が発生しやすくなる。そこで、これを避けるため、例えば、1)ニラ、ネギ、ナス、ピーマンなどでは袋に数mmの穴を数個開けた有孔個包装を行うようにし、2)キュウリやブロッコリーなどでは大袋に包んで段ボール箱に収納し大袋の口を折り込むことで完全密封を避けるようにし、3)ショウガ、ミョウガ、シイタケなどではガス透過度の高いストレッチフィルムで個包装することにより嫌気状態を避けるようにしている。【0003】しかし、いずれの方法でも、包装内は、鮮度保持に最適の低酸素濃度−高二酸化炭素濃度状態ではなく、大気に近いガス組成となるため、青果物の黄変や腐敗が進みやすく、ビタミンCや糖含有量等の内容成分の保持を困難とさせる。完全密封を避けつつ極少量の通気を図ることにより、包装内を低酸素濃度−高二酸化炭素濃度状態に保持する目的で、レーザー加工等でミクロン単位の微細孔を開けた包装フィルムも提供されているが、このフィルムは高価につく。他方、ニラでは、包装内を低酸素濃度−高二酸化炭素濃度状態にするために、2)の方法の改良として、袋口を完全に閉じておいて窒素ガスを封入する方法もあるが、この方法は、ガス封入作業が必要でコスト高となる。
【0004】【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決しようとする課題は、初めから個包装によりながら、低酸素濃度−高二酸化炭素濃度状態を実現でき、窒素封入作業を省略し、青果物の鮮度保持と出荷コストの低減を可能とする青果物の鮮度保持方法、青果物包装品、包装方法および包装資材を提供することにある。


4.クレームの価値は?

 鮮度保持方法、包装品、包装方法、包装資材ということで、単純方法に紛れてスーパーに陳列される青果物を意図した包装品というカテゴリを立てているのが、うまいと思います。最終製品に特許料を上乗せさて販売できたのでしょうかね?

 クレームは検証性が乏しく、いわゆるサードパーティを抑えるのは難しそうです。ただ高知県が権利をもったことにより、この発明を高知産の野菜を販売する業者に多く利用してもらえたのではないかな?と推測します。

5.拒絶理由に注目

 この発明は出願時に「新規性喪失の例外規定の適用」を申請していますが、審査にてその発表を先行技術とされ新規性なしの拒絶理由を受けていることに目が行きました。

 いわゆる自爆ですが、発表者と特許出願の発明者が完全一致しなかったことが原因です。学会とか発表では発明者じゃない人も連名に名前を連ねることはよく行われていますので、完全に落とし穴ですね。これは知識がある人が出願してたら防げた事故なんじゃないかな?と思います。


ということで、今回はここまで。シリーズ化目指して、私達の日常生活で密かに活躍している特許をどんどん見つけていきたいと思います。


記事を読んでいただきありがとうございました。 支援をいただければ、また新しい記事を書くモチベーションに繋がります。よろしくお願いします。