pajiroで朝食を
「枝分かれした鎖
ちぎれた一欠片
時を知らねば
2度と交わらぬ……か」
Sekkaは小さな紙切れに書かれた文字を読み上げる。そのまま紙をひらひらさせながら持ち主であるDaisyに返した。
「で、これが一体なんだっていうの?」
「僕はね、ヒントだと思ったんだよ」
Daisyは眼鏡をクイっと上げる仕草をするが鼻の上に眼鏡はない。おそらく元々は眼鏡っ子だったのだろうと皆が思考の片隅で思う。
「どういうこと?」
SekkaはVictoriaとEricaにも目配せをする。
2人はやれやれといった様子で肩をすくめる。
「先生が言うにはここは不完全な世界……言ってみればゲームなんだってさ」
「時間の概念がありそうでない感じじゃん?太陽は登ってちゃんと沈むけど何時何分の概念がないのがおかしいよねってハナシ」
「そう!そこでこのおみくじを神社で引いてピンときたわけさ」
Daisyは皆に力説する。
「確かに明確な"時間"の概念がないのは違和感だよな……」
「ただいまー市場で買ってきたくだもの食べよー」
「2人とも出かけてたんだ。おかえりー」
Azusaとビアンカがイチゴやバナナ、リンゴなどを抱えて帰ってきた。
ニンニクもケースで大量に購入したようだ。
「あんまり安いから買いすぎちゃったよ」
「くだもの、朝食に食べよう」
赤いテーブルの上にくだものが並べられる。普段は油とニンニクまみれの食べ物しか乗らない場所に彩りが添えられる。果物の甘い香りがその場に広がった。
ーー
「なるほどなるほど。つまり今俺らがいる世界は不完全な仮想現実で、ゲームみたいな空間ってことかー」
Azusaはバナナを頬張りながらDaisyの話を要約する。
「んー、分かんない!ごめんもう一回!」
SekkaはDaisyに懇願する。
「えっとねー、鎖……というのは僕らが元々いた世界の時間の連なりで、」
Daisyはどこからともなくホワイトボードを取り出し説明をし始める。クルクルクルと小さな丸をたくさん描き鎖状に繋いでいく。
「これがある時枝分かれをしてしまう」
「ほう」
ホワイトボード上の鎖は二股に分かれる。
「それで、この枝分かれの反動で鎖の一部分が……離れ小島のように、千切れる」
鎖から孤立した小さな丸がポツンと描かれた。
「これが今僕たちのいる世界」
「いやいやいや、科学的根拠ゼロじゃんそれ」
「うーん、ピンとこない?僕は神様からのメッセージだって感じたんだけどなー」
Daisyは小さな丸をぐるぐるとペンでなぞる。
「まあ本当かどうかは置いといて、時間の概念を取り戻さないと元の場所には帰れないってことか」
「そういうこと!」
「うーん……」
「どうしたんだい?」
「ないものはないから取り戻せなくない?」
「たしかになー」
「何かあらたなヒントがあればなー」
Sekkaはふと山積みになったニンニクのケースをみる。箱と箱の間に不自然に1枚紙切れが挟まっているのに気がついた。
「なんだこれ?」
紙切れを引っ張ってみる。
"アイドルを推せ"
「ヒント……きたのか?」