カッコつけたバカども

なんだよ、ちょっと雨降ってるじゃねぇか。めんどくせぇな。ビニール傘を玄関の中から開いた。さてと、しょうがないから今日も生きますか。やらされてるから仕方なくやってんだと、そう思うだけで俺の憂さも少しだけ晴れる。チッ。刹那、何故かムカつく身内のアホ面がチラついて、殺意を持ち帰る代わりに敷地内に痰を吐きつけといた。バカが。どうせ雨で流れるだろ。
駅前のロータリーに差し掛かる。いくらかいつもより少し早く出たせいで人はまだそれほどいない。いつもこのぐらいの人数で動いててくれよ、全然足りてるから。ほんと人は少ない程良いと痛感する。で、そこの一角に牛丼屋があって、そこの前を過ぎようってタイミングで素足にスニーカーを履いた高そうなジャケットをラフに着た男が出て来た。なんつうか、どこにもこういうのいるよな。どうせそこらで飲んだ朝帰りだろ、飲むだけ飲んだら後で腹が減って牛丼食って出てきたんだ。そのオヤジは雨降りに傘はなく、少し頭を垂れながら駅に向かって蛇行して歩いていた。50ぐらいかな、白髪混じりだが、よく見たらてっぺんがハゲてるわ。大体白髪になるかハゲるかのどっちか一つの二択にして欲しいよな。まぁ前者の方が絶対に良いけど、両方きたら俺ならいなくなるけどねと奴を心で野次る。変なコロンのニオイが奴の後に延びて俺の鼻を突いた。くっせぇな、全然良いニオイじゃねぇよ。大体そんな服とかニオイとかの前に、金あるんならそのハゲをどうにかしてこいよバカが。どうせ悪い事して得た金なんだろ、他を押し退けて稼いだ奴がよくもまぁのさばってるわ。こんな湿気た町で朝まで飲んでんだから、まぁ大した奴じゃねぇけどな。どっちにしろ朝から目障り過ぎるから、豚臭いニオイと一緒に消えてくれ。朝から異様な攻撃性で捲し立てるようにそんな事を思ってたら、それを察したのか奴の歩く速さが段々と上がっていった。まぁ食って腹痛くなったたちだな。残念だけど、その辺は汚い手洗いしかねぇぞ。とりあえず靴下は履けよ。カカトさらして、お前のハゲた頭みたいでみっともねぇよ。あのスカしたバカのおかげですっげえスッキリした。
昨日の午後テレビタレントの訃報が俺のスマホにも届いた。興味なかったけど暇だから電車の中でそれを見ていたら、その訃報に対して関係者がsnsでコメントを出しているのが並行して挙げられていた。文章ってのは口語だったり沈黙だったりの間を作るのに表現が必要になる。で、そのコメント出してる連中の一人は訃報に接してショックを受けてるってのを表現しようと、冷静に行間を作って文章を構成していた。そいつの無表情で行われる動作が画面の向こうに垣間見えて、朝からキモかった。本当に悲しかったらそんな事しないんじゃねぇの。なんかリアクションしなきゃ自分が悪く見えるからってのでカッコつけて打ち出したようにしか見えねぇよ。そんなこと思っちゃってる俺もよっぽどだけど、でも奴の本意も遠からずだろ。試しに覗いてみるといいよ。俺と同じ事思うんじゃねぇかな。誰かってヒント出すとすぐ特定されちゃうから難しいな。まぁ句読点が多いコメントだし、俺がどんな奴が嫌いか、俺のこの性格から察せられると思いますよ。
にしても、有名だからってそんな大した文章書いてる奴もいねぇのな。俺の方が面白いだろ。まぁ俺はカッコつけたバカじゃなくて、あいつらよりはちょっとだけマシなバカだから。ほんと朝からよく目につくよな、汚い奴らばっかり。せっかく雨も降ってんだからよ、全部キレイに流してくれねぇかな。