日経コンピュータ2024.05
日経コンピュータは、2週間に1冊発刊される雑誌です。
年間52週÷2=26冊発行されます。月に一度特集を中心に紹介します。
2024.05.02号
特集【始動、物流DX 輸送網から待ち時間まで、2024年問題に勝つ】(P.10)
2024年4月、労働規制が厳しくなりました。
・ドライバーの時間外労働は年間960時間まで
・年間拘束時間上限が3516時間から3300時間に
それに各社システム的に対応しています。
1.ヤマト50年目の改革 是正勧告にも対応
(1) 物流ネットワークの構造改革
従来は全国79ヵ所の物流施設「ベース」間を幹線輸送(79x79=6241)
20ヵ所の「ハブ」を設置。営業所時点でハブ向けに仕分け
→ベースからハブへ幹線輸送(79x20=1580)
長距離トラック1台当たりの積載量増加、省力化
(2) 営業所やベースの作業員への作業指示をデジタル化
従来は無線や電話を使っていましたが、端末を通じて指示可能
伝票を見て判断していましたが、スキャンで指示が出る
(3) ドライバーへの指示もデジタル化
トラックをどの荷下ろし場所(バース)に付けるか電話→端末
2.待ち時間を短縮へ 荷主も効率化を支援
日清食品HDは荷主の立場から、ドライバーの荷役やに待ち時間の短縮に向けてITを使った施策を行っています。「物流各社から選ばれる荷主」を目指しています。
これら以外にもAI搭載の荷積みロボットの実証や、倉庫業者を中心とした物流ネットワーク構築など様々な取り組むが始まっています。
3.共同化で積載率向上 AIで配送計画を作成
国土交通省の2022年度の調査では、トラックの積載効率は約40パーセントでした。国内を走るトラックは平均約60%が空いている状態です。
積載率を高める1つの方策として「共同配送」の取り組みが始まっています。他業種との共同配送が難しい化学品に特化した共同物流マッチングサービスなどの運用実証を行っています
ヤマト運輸のベース→ハブという取り組みは納得できますが、佐川急便・西濃運輸などの大手物流がどう考えているのかを取材して欲しかったです。他社は従来からハブ管理されているのかも知れません。
【ドメイントラブル撲滅大作戦 事前対策で再取得の意欲をそぐ】(P.24)
自治体などが登録し運用していたドメインを廃止した直後に第三者に取得され、フィッシングなどの悪事に利用される事例が相次いでいます。
<ドメインハイジャック>ドメイン登録会社(レジストラ)を変更するときに、確認メールを10日間無視すると承諾とみなされるという謎仕様のために乗っ取られるという被害が頻発しました。これについては日本の管理会社(JPRS)の規則を変更し、放置すると拒否になりましたので今後発生することはありません。
<ドッペルゲンガードメイン>パンチミスなどで誤入力しやすいドメインを取得し悪事に使う。大手通販サイトでは似たドメインをあらかじめ登録しています。
ドメインを廃止する時は次の方法が推奨されています
第1段階:Webサイトでドメインを廃止すると告知
→リンクを貼っている外部Web運営者にリンクの削除を依頼する
第2段階:ドメインをしばらくの間保有する
→政府関係ドメインは廃止の案内から1年以上
第3段階:WebサーバまたはDNSへのアクセス数の確認
→充分少なくなったことを確認(多い時は10年待つ)
【乱反射:不要な製品の購入を強いられる 米ヴイエムウェア買収で悪影響】(P.53)
2023年11月、米ブロードコムが米ヴイエムウェアを買収しました。その後の動きでヴイエムウェアの顧客が恐怖・疑念を持っています。このやり方を、FUD(Fear Uncertainty Doubt)と呼ぶそうです。
・買収後の2ヶ月でヴイエムウェアの従業員数千人を解雇
・世界6万5000社とのパートナープログラムを強制終了
→再申請を強要
・パートナーの上位2000件の顧客をブロードコムの顧客に切替
・売り切りの永久ライセンス廃止を通告
・サブスクリプションが不要な製品とパッケージ
これらのため、ソフトウェア請求額が3~6倍に上昇した話や、ライセンス費用が十数倍に跳ね上がった例などがありました。
今後数か月以内に代替品の検討が始まるでしょう。ここまで酷い買収はあまり記憶がありません。
2024.05.16号
特集は【中外製薬、攻防一体のDX 目指すは「世界のトップイノベーター」】(P.10)
中外製薬の奥田修社長はDXの成果として「自ら考えて、新しいことを始めカルチャーができた」と語っています。
・デジタル活用を統括する組織を新設
→従来のIT50人、デジタル戦略50人
・デジタル人材の育成
→これまで200人近くの社員が参加
・2020年からデジタルイノベーションラボ
3年で450件以上の事業アイデア発案
1.生成AIをフル活用 汎用・特化で使い分け
Azure OpenAI Serviceを使った「中外版ChatGPT」を2023年8月に全社店化。研究開発などに特化した生成AIサービスも提供しています。
2019年からDXを推進されていた志済聡子氏が3月31日付で退任され、後任マイクロソフトでインダストリDXアドバイザリ本部長を務めていた鈴木貴雄氏が就任されました。本来ならこれから収益化する難しい場面での交代が心配です。
2.3種のクラウドを併用 運用コストは36%現
目的に応じて3種のクラウド(AWS,Azure、GCP)を使い分けています。
3.全社挙げて安全対策 訓練に社長も参加
DX推進と同時にサイバーセキュリティ対策にも力を入れています。
・ベースライン・・・規定を作成・順守し底上げ
・リスクベース・・・規定では対応出来ない個別のリスクを把握
委託業者を使い、SOC(セキュリティー・オペレーション・センター)には30人以上、CSIRT(コンピュータ・セキュリティ・インシデント・レスポンスチーム)は3名で運用しています。
【動かないコンピュータ:江崎グリコ】(P.66)
「プッチンプリン」をはじめとする江崎グリコのチルド製品が店頭から姿を消しました。企業からの発表前に有価証券報告書等から状況を探る記事です。2019年着手の基幹システムです。
2024年4月3日:デロイトトーマツなどのチームが、SAP/HANAへの移行作業を実施。システム障害で全国の物流センターで出庫業務が送れ遅配や欠配が発生
14日:一部業務で出荷を停止。チルド製品の出荷も停止。
18日:品目を絞り再開。再びトラブル発生(データ不整合)
19日:再び出荷を停止 →5月中旬の再開を目指すと公表
5月1日:再開時期の延期を発表
有価証券報告書からプロジェクトの状況を探ります
2021年12月期有報:2022年12月本番予定。215億円
2022年12月期有報:完了時期未定に変更
2023年12月期有報:投資予定342億円に増加。2024年3月本番予定
チルド食品以外の常温や冷凍商品は在庫を多く持てる事から、データを修正しながら出荷を継続しているとの事です。在庫を持てる商品に関しては夜間処理などで在庫を確定することが多いですが、チルド製品はリアル在庫管理が必要ですので生産管理から出荷まで一貫した業務となり難しいです。SAP/HANAはそれが出来る事が売りだったのですが大変残念な状況です。
復旧後再度特集して欲しいと思います。出来ればデロイトトーマツ側からの説明も欲しいです。守秘義務上難しいかも知れませんが、貴重な経験・体験を後続のために開示してください。
2024.05.30号
特集は【常駐・SES・多重下請け全部やらない 異端の1兆円SI企業 大塚商会】(P.10)
1.売上高は1兆円目前 3つの原動力で成長
20年間で従業員1人当たり売上高を2.1倍に伸ばしました。連結売上高:2.6倍、連結従業員数:23%増でした。3つの原動力で成長しました。
(1)科学的営業:顧客データに基づいて営業施策を立案
(2)労働分配率を見直し従業員のモチベーションアップ
(3)1つの企業に幅広い商材を売り込む「オフィスまるごと」戦略
2.訪問先はAIが登録 営業スタイル超進化
AIの指示に抵抗がない若手が営業成績を伸ばし全社に広がりました。予測モデルの開発には、米ドットデータのデータ分析ツール「dot Data」を2019年から活用しています。
・AI行先アシスト:訪問先、商材を判断し予定を自動登録
・商談プロセスアシスト:日報にアドバイス。成約アシスト
・関係性深化アシスト:関係を深める施策を提案
・導入後フォローアシスト:実行すべきフォロー内容を提案
顧客にとっての大塚商会の「入り口」は、オフィスサプライなどの通販事業である「たのめーる」です。200万件以上の登録口座があります。既存の複写機の顧客も含めて何を買っているかでITの需要を探り出し、業務システムパッケージやネットワーク製品の商談に発展させます。
3.人手に頼らず高成長 異例ずくめのSI戦略
連結売上高の64%をシステムインテグレーション(SI)が占めるSI企業です。ところが同業他社と異なり、技術者の「常駐」「SES」「多重下請け」のビジネスを全て行っていません。SESとは時間契約で派遣する形態です。
たよれーる らくらくシリーズ:導入したIT機器を大塚商会自身が運用する。中小企業の顧客の情報システム室になるサービス
・ActiveDirectoryサーバの管理:月額約6万円
・ファイアウォール:SOC(Security Operation Center)付き
・らくらくEDR:端末1台月額290円でPCの不審な動きを検知
・ITワンストップサポートデスク:1社当たり月額1,000円から
オフィスまるごと戦略:セキュリティ製品の導入の時にバックアップも販売するなど関連製品を次々と売り込む戦略。中小企業からすると安く信頼出来ます。
以上
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