かわいい?微妙?「猫チョコレート作り」奮闘中。
現在私は造形作家として「ネコ専門のレジンフィギュア」を制作しています。しかし近い未来に「猫チョコレート」も制作、販売をしてみたいと夢想しています。その猫チョコレートの試作を昨年から始めているので、その状況をお話しさせてください。
なぜ猫チョコなのか
私は30年勤めた広告会社を昨年早期退職して、今年から造形作家、兼デザイナーとして活動しています。作品はハンドメイドマーケットのCreemaやminneやEtsyに、昨年より出品し始めてみました。
↓Creemaの出品ページ
https://www.creema.jp/c/benieda_c/item/onsale
私の造形は「何の役にも立たないけど、そばにあると嬉しい」という目には見えない価値をテーマに制作しています。そのため、この便利でも、機能的でも、お得でもない、「何の役にも立たない」ものは、見ていただくきっかけを得るのが難しいように感じてきました。
そこで、より身近なもので、自分の造形に触れていただく方法はないかなと、思い始めました。
A案:「ネコのたい焼き」?
そこで考えたのは「食べられるもの」です。はじめは「ネコのたい焼き」を考えました。いや正確には「ネコ形のたい焼き」かな?やはり変ですね。
しかし、これは高価な金型製作が必要です。また通常のたい焼きは「2つの型」の間に生地とアンコを入れますが、私が目指すのは、より立体的なもので「3つ以上の型」で構成する特殊なケースです。
自分としては悪くない考えですが、少々投資が大きいのと、技術的なハードルもまだ高そうなので「アイデア保留」です。
B案:「ネコクッキー、またはネコパン」
次に考えたのは「ネコクッキー」または「ネコパン」です。パンの場合「型で作れるのか」という課題があります。またクッキーは型で作るケースもありますが、私がイメージするような精密な360度完全に立体造形は、現時点では難しそうです。「保留」としました。
焼いて体積が変わるものは難しい。
これらを調べていて、気づいたことがあります。それは、焼くことで体積が変わってしまう(膨らんでしまう)材料のものは、全周囲を囲む「型」で作るのが難しい。という事でした。ですよね、確かに。
でもたい焼きはほぼ密閉型なのに、あの生地は膨らまないのか?それは追い追い研究します。
C案:「猫チョコレート」
そんなこんなで「型に入れる前後で体積が変わらないもの」という視点。そしてできれば費用の関係で、金型ではなくシリコーン型で作れるもの。ということで、たどり着いたのが「猫チョコ」でした。
では「猫チョコ」を目指すにあたり。まず世間には、どんな猫チョコがあるのだろうか調べました。いくつかはありますが、やはりたいていは半面型です。
また調べを進めるうちに、フランスのショコラティエの大御所でジャン-シャルル・ロシューさんという方を知りました。ロシューさんはチョコを使った彫刻とでも言うべき、立体造形の作品が検索でいくつもありました。また日本では表参道にお店があるとのことでさっそく現物も拝見させていただきました。たしかにすごい全周囲型のチョコ造形です。
ただロシューさんの作品は、さすがにフランスの方らしく、とても西洋的な造形だと私は感じました。これまた著作権の関係で写真や画像は控えさせていただきますが、いわゆる「かわいい系」というよりは、リアル系に感じました。それは、自分が目指す方向とは違うもだったので重複も避けられると思いました。
チョコレートの勉強
次に私は、そもそも「チョコレートとは」という事を勉強しなければと思い、まずは書籍で勉強。
チョコレートの種類、歴史、加工法などを自習しました。当然ですがそれはそれは深い世界があります。その世界に敬意を表しながら、その一方、チョコレートで本当にシリコーンから造形できるのかも不安だったので「とにかく試作」をしてみることにしました。
【写真上:書籍でチョコレート勉強】
試作。試行錯誤。
まずは原型を作ります。このプロセスはいつもの私の造形手法と同様ですが、しかし今回の最終素材がレジンではなく溶けても粘度の高いチョコレートなので、なるべくシンプルな「ひとかたまり」の感じの原型として「座るネコ」にしました。テストなので。
そして原型以降のプロセスもレジン造形と同様です。原型からシリコーン型を作ります。ただし食品用のシリコーンを使いました。
【写真上:原型。初回なのでシンプルな塊を意識しました】
【写真上:2面法でのシリコーン型づくり】
【写真上:出来上がったシリコーン型。食品用です】
テンパリングの壁
シリコーン型ができたら、いよいよチョコレートの注入なんですが、ここで「テンパリング」という壁が立ちはだかります。お菓子作りなどをされている方には当たり前の事かと思いますが、私は初めて知りました。
テンパリングとは、チョコレートの溶解から再硬化の過程での微妙な温度調整のことです。詳しくは省きますが、この温度調整がうまくいかないと、きちんと固まらない、基礎中の基礎ながら重要技術です。チョコレート初心者の私には、なかなか大きなハードルです。
しかし本やネットで調べて温度調整をしながら、シリコーン型に注型しました。
【写真上:チョコレートを扱う準備。非接触型の温度計もあります】
チョコの粘度で細部に行きわたらない。
初回の注型。溶けてもチョコの粘度はかなり高く、型の細部まで行きわたらずに先端が欠けてしまいしました。またテンパリングの関係で、柔らかい高温のまま注ぐことができず、温度と粘度との板挟みです。
【写真上:気泡が入り、なおかつパーティングラインがずれて失敗】
チョコに真空脱泡器
何度かの注型をしましたが、やはりどうしても細部に行きわたりません。困った私は落ち着いて考えました。
細部に行きわたらないということは細部の空気が抜けないということ。なので、その空気をいかに型から排出するか、ということで、行き着いたのはレジンの時と同様、真空脱泡器を使って強制排気をさせてみよう。となりました。
【写真上:真空脱泡機】
ひとまず。ひとまず試作品、完成。
真空脱泡機を使って気泡を排出させることで、ようやく細部にも行きわたらせることができました。これでひとまず、試作を完成させることができた、ということです。
が、しかしまだまだ、その段取りや技術的な安定などは全く至らず、多くの課題は残りました。
【写真上:真空脱泡で、わりとうまくいった】
【写真上:ホワイトチョコもやってみた】
【写真上:ビター&ホワイト。集合です】
いつかは量産、出品してみたい。
ひとまずの試作を終えて、「不可能ではないようだ」という事までは分かりました。
一方、今後もし実際に猫チョコを作って販売しようと思うと、「食品衛生管理責任者」の資格と「菓子製造業営業許可証」のあるキッチンでの製作、が必要になることもわかりました。
さらに、ネコのカタチについても、本来はもっとアクティブなポーズなどで、今までには見たことのないような立体的で魅力的な「造形チョコレート」にしたいと思っています。
また一方、もちろん食品、チョコレートとしてのおいしさにも注力しなければと考えています。チョコの勉強もっとしなきゃ。
現在私は今年から個人事業主になり、デザイン関連の仕事もやや立て込んだり、レジン造形も手が回っていない状況もあり、この猫チョコ作りは、小休止状態です。しかし近い未来に必ず、猫チョコの生産、そして販売をしたいと考えています。それは私のひとつの夢でもあります。
●ちなみに私のレジン造形のギャラリーサイトです。
→ https://benieda.com