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何故、MMTの「貨幣理論」と「JGP」は別物と考えるか。

この記事を書くことになったきっかけ

上記のやり取りにお答えするには、Twitter上では文字数の関係上不便なので本記事をもって回答することにしました。
また、本記事ではMMTの説明を行う際は出来る限り「MMT現代貨幣理論入門」から引用する形式で行います。

MMTが考察する「貨幣」とは何か

MMTは様々な観点から「貨幣」考察していますが、一文で要約すると

「金融資産は、必ず他の誰かの金融負債の裏返しである。」(P.53)

ということになるでしょうか。
MMTは「資産・債権」の裏には必ず同額の「負債・債務」があると洞察しています。
つまり、金融資産(貨幣)とは誰かの負債なのです。
ちなみに、この貨幣論はMMT独自のものではありません。

「MMTは、言わば『巨人たちの肩を踏み台として成り立っている』のである。」(P.38)

としています。その巨人のうち、ジョン・M・ケインズやゲオルグ・F・クナップの貨幣論に依存している部分が大きいでしょう。

政府支出について

MMTは政府支出については

「政府がどのように支出するかを理解すると、実は『支出能力』は問題ではないという結論にたどり着く―――政府は望みどおりに支出するのに必要な『キーストローク』を常に行う能力がある。しかしこれは、そうすべきだという意味ではない。」(P.356)

と語っており、政府に「支出能力」という問題はないとしています。ただし、政府支出を制約なく行えとは主張していません。

JGP(就業保証プログラム)とは

「就業保証プログラムは、働く用意と意欲がある適格な個人なら、誰でも職に就けるように政府が約束するプログラムである。」(P.409)

と、JGPのことを説明しています。
また、費用については

「プログラムの賃金で働く用意と意欲がある労働者がいる限り、政府は彼らを雇う『支出能力』がある。」(P.415)

と語っており、費用についても問題はないと説明しています。

JGPをMMTに含めるかどうかを議論しているのは日本だけではない

もしかしたら、JGPを否定的に見ながらMMTを援用しているのは日本だけ!と思っている方もいるかも知れませんが、それは違います。

「就業保証の提案をMMTアプローチに含めることについては議論が分かれている。」(P.479)

「MMT現代貨幣理論入門」が発売されたのは外国が先であるということを考慮しても、日本以外でも同様の議論が起きていることが分かります。

「MMTは純粋的に説明的であるべきで、いかなる政策も推奨するべきではないと主張する者もいれば、就業保証プログラムは最初からMMTの一部だと主張するものがいる。
我々は20年前にMMTアプローチを展開し始めたが、最初から就業プログラムを取り入れていたので、実のところは後者が正しい。」(P.479)

続けて、レイはこのように語ってJGPをMMTアプローチに入れることの正当性を訴えていますが、とても反論になっているとは言えません。
「JGPを最初からMMTアプローチに取り入れている」ということでは、「MMTは純粋的に説明的であるべき」という提案に何ら答えていません。

MMTの利用について

「政策規範に同意することなく、単にMMTの説明的な部分を利用したいならば、それも可能である。MMTの説明は政策立案のための枠組みを提供するが、政府が何をすべきかに関しては意見を異にする余地がある。」(P.481)

レイは、このように語っています。これは「説明的な部分」である貨幣理論と「規範的な部分」であるJGPは、分けて捉えられるからです。当然と言えば、当然の考え方ですが。

結論

JGP(就業保証プログラム)は、「貨幣理論」ではありません。MMT提唱者たちのこうすべきだという「規範」です。
例えば、「MMT With JGP」とでもした方が「説明的な部分」と「規範的な部分」が分かり易いと思います。また、Withの部分は提唱者によっては変更できそうです。「MMT With GND(グリーンニューディール)」というのも可能でしょうか。
これを読んだMMTerの方達には、異論・反論などあるかも知れません。

しかし、我々には「意見を異にする余地がある」のです。

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