前半① シンガニの製法とボリビア
Bar BenFiddich店主の鹿山です。
シンガニとは何か?
シンガニはSinganiと書く。
南米ボリビアで作られている
マスカット・オブ・アレキサンドリア
いわゆるマスカットで作った蒸留酒の事である。
ペルーやチリにある{ピスコ}と似ている部分もあるが大きく違うのは
シンガニはピスコとは違い多品種の葡萄の使用は許されず
単一品種マスカット.オブ.アレキサンドリアのみの使用。
又、
ペルーのピスコは一回蒸留が基本
チリのピスコは複数回蒸留が基本
ボリビアのシンガニは二回蒸留が基本となる
(これは法律では縛られていない)
今回はそのシンガニ(Singani)の起源の地と
そこに住む人々の酒類文化を
垣間見たいと思いBenFiddichをしばらく閉めボリビアへ渡航をした。
因みにボリビアとはどこか?
地図を見ての通りボリビアは南米の内陸国
世界で1番標高の高い首都ラパスは有名で(標高3625m) いわゆるアンデス山脈ど真ん中の国。
鹿山が行くシンガニの生産が多く行われているエリアはボリビア南部↓
雄大な景色が続くエリアだ。
現在シンガニが盛んに生産されているのは
主にこの二大拠点。
①伝統的な小規模生産者のカマルゴの街 (Camargo)
②土地が広く近代的設備を整えたタリハの街
(Tarija)
ただ、この区間は大きな山を隔てて車で3時間の距離と近い地域。
タリハ(Tarija)はこのように近代的製法を積極的に取り入れ海外へ輸出をしシンガニという名前を世に知らしめる為に一役買っている大事な存在。
一方で伝統的小規模生産者が多い
カマルゴの街(Camargo)
未だに足踏みで圧搾する場所も残っているそんな土地。
タリハの街と違い山と山の谷間に挟まれた人口8000人の小さな街。
そこに小さな150軒の葡萄農家がいて各蒸溜所に葡萄を供給している。
そんな彼らも余剰分は自分達で自家製のシンガニを造る。
古い葡萄農家の家に備えてあるのが19世紀から続く古い旧式タイプの蒸留器Falca(ファルカ)
レンガと粘土で固めた古の蒸留器。
現代の伝統的なシンガニの蒸留機はこれだ↓
因みにこれは1回半蒸留(1.5回)なのだ。
説明しづらいので補足。たぶんこれが特にシンガニの特徴を色濃くすることだと思う。
①まず左上の赤印①の所にマスカットのもろみを入れる。
② 赤印①が②に流れ蒸留される。
ここが大事
③その際に蒸気の半分は青矢印でありそのまま冷却炉へ流れスピリッツとなる。
もう半分の赤矢印の蒸気は①のもろみが入ったタンクの中のワームタブ(管)を通り再留される。これが1回目の蒸留。
④そして2回目の蒸留は赤印①を外し赤印②のみで単式蒸留をして2回目の蒸留を終える。
現代の伝統的なシンガニの蒸留スタイルは1980年代以降に確立されている。
ゆえに教科書ではシンガニは2回蒸留と言われるが実際は2.5回蒸留と言える。
今回僕が訪れた蒸留所は
【現代的な製法のタリハの街】
①Casa Real蒸留所
(コニャックシャラント式蒸留機)
② Rujero 蒸留所(伝統的な2.5回蒸留)
③ Los Parrales蒸留所
(ドイツ製アーノルドホルスタイン社のハイブリッド式蒸留機1度に5回蒸留(棚を5つ開ける)
【古い伝統を守るカマルゴの街】
④Sanpedro蒸留所(伝統的な2.5回蒸留)
⑤Yokichi蒸留所(伝統的な2.5回蒸留)
【山の中のシンガニ発祥の地ウルムチ】
1回蒸留。ファルカの蒸留機よりも古い陶器の蒸留機コンチャナ。
これは別件で次号記載する。
ボリビアのシンガニはペルーやチリのピスコとよく混同されるしとてもよく似ている。
簡単に大きな違いを述べるならばこれだろう。
【蒸留回数】
ペルーのピスコ1回蒸留
チリのピスコは複数回蒸留
ボリビアのシンガニは2.5回蒸留
【葡萄品種】
ペルー→多品種
チリ→多品種
ボリビア→マスカットオブアレキサンドリア
次回はシンガニ発祥の地ウルムチについて書きたいと思います。
BenFiddich店主 鹿山博康