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榧酒(カヤ酒)を仕込む。1700年代の珍味書。料理山海郷より。

榧酒というものがある。
榧(カヤ)の実を炒って砕いて日本酒と砂糖を混ぜ合わせ漉して造る日本伝統のリキュール。

BenFiddichにある江戸時代の珍味書
『料理山海郷』
店主のコレクション

『料理山海郷』は寛延2年(1749年)江戸時代中期に刊行され著者は博望子(はくぼうし)。当時の日本全国各地の名物料理や珍味を収録した料理書として知られている。
その中の一つに榧の木の実で作った榧酒というものがある。

※訳↓
上等の榧を煎り渋皮を取る。色がつくくらいまで煎ってから冷まし、その後刻んでからすり鉢でよく擦る。これを酒で伸ばし濾し温めて用いる。
榧200個に対し酒一升瓶の割合。


という事で江戸時代に造られていたであろう
榧酒を作ってみる事にする。
まずは榧の実をフライパンで炒める。

榧の実をよーくフライパンで炒り芯まで温めると香ばしい香りがBARの店内に充満する。


そして殻を砕いて中身を取り出す。

中身を取り出したら渋皮も取り除く。
渋皮を取り除くと字の如く渋みが減る

右から殻付きの榧の実
真ん中が殻を剥いて渋皮付き
左が渋皮をも剥いた榧の実


そして元気よくすり潰す

殻は簡単に破れるのだが渋皮を剥ぐのはなかなか難儀で榧の実200個の渋皮剥ぎはBAR営業終わりの疲れた僕らにとって酷だったので幾分かは渋皮付きで作ってみた。


榧200個に対し酒一升瓶(1800ml)の割合。

綺麗に濾す。
渋皮を幾分か残したので綺麗な赤。
ポジティブに捉えるならば苦味が微かに残りアマーロ(イタリアの苦味酒)のような味わいが追加された。

料理山海郷のレシピ通りだと
①上等の榧を煎り渋皮を取る。
②色がつくくらいまで煎ってから冷まし、その後刻んでからすり鉢でよく擦る。
③酒で伸ばし濾し温めて用いる。
④榧200個に対し酒一升瓶の割合。

であるが現代的に言えばもう少し膨らみを持たせたく、とゆうよりはBAR向けとしては膨らみが欲しくいくつか素材を付け加えたい。

榧200個に対して酒一升瓶(1800ml)
+
カストリ焼酎400ml
砂糖250g

なかなか美味しい


さらに実はBenFiddich畑では榧の木がある。

榧はモミの仲間であり葉には芳香がある

榧葉の新鮮な状態でウォッカに浸漬させ
榧葉ウォッカを作る。

榧の実リキュールと
榧葉ウォッカの夢の共演


マティーニスタイルなんかどうだろうか。

榧の実のナッティ感と
榧葉の爽やかさのマーブル感。


『料理山海郷』より分かる寛延2年(1749年)江戸時代中期には既に飲まれていた榧の実を使った『榧酒』。日本に古くから存在する榧の木を使った先人の知恵。
現代では忘れ去れた古の飲み方をバーテンダーとして継承してBARのお客様に伝えてゆきたい。

BenFiddich 店主
鹿山博康

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