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自家製シミーン.アルヒ(馬乳酒ウォッカ)の蒸留酒を学びにモンゴルへ。
BenFiddich店主の鹿山です。
念願叶ってモンゴルへ。
自家製シミーン.アルヒを手に入れた。
(馬乳酒ウォッカ)
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この日のモンゴルは−24°c
アルヒというのは
モンゴル語で【ウォッカ】の意味だ。
アルヒ(モンゴルウォッカ)は大別すると二種に分けられる。
①ひとつは馬乳酒ウォッカのように家畜由来のアルヒでシミーン・アルヒと呼ばれる。
馬以外にも牛、ヤク、ラクダ、羊などもある。
②もうひとつは穀物由来のアルヒで
ツァガーン・アルヒと呼ばれるものである。
小麦、大麦由来のものが多くこれらは旧ソビエト時代のロシアの流れを汲む。モンゴルにはロシアからのこれらの輸入品が多く存在。
またメチルアルコールがメチメチの工業用アルコールをぶち込んだ粗悪品もこれらに含まれる。因みに長年のロシアの影響でやはり1番良く飲まれる国民酒はウォッカだ。
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ウォッカが多く並ぶ。いわゆるこれらは穀物原料でありツァガーン.アルヒとなる。
モンゴル人のバーテンダーに聞いたところ
モンゴル人の人口は334万人。
現在では遊牧的な生活を営んでるのは半分以下であとは首都のウランバートルの都会の生活をしている。よって僕らが想像するような牧歌的なイメージのモンゴル人は旧時代のものにもなりつつある。
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そう、伝統的な家畜由来のシミーン.アルヒよりも穀物由来のツァガーン.アルヒの方が現代モンゴル的には容易に輸入穀物で作れて尚且つアルコール回収率も高いのでそっちが選ばれるのだ。
これもまたモンゴル人バーテンダーに聞いた。
庶民と金持ち、また世代間で飲む種類が違うそう。
【首都ウランバートルの世代間の酒類の内訳】
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そう、全ての年代でウォッカなのだ。
今回念願叶って家畜由来のシミーン.アルヒ(馬乳酒ウォッカ)体験ができたのは首都ウランバートルのバーテンダーコミュニティからの招待だ。
首都でのBenFiddichセミナーと現地でのゲストバーテンダーの依頼をこなす報酬代わりにこのモンゴルの地に降り立ったのだ。
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テキーラでもなければウィスキーでもない。
旧ソ連の影響を受けている。
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面白いなぁって想ったのが
モンゴル(外蒙古)と
中国の内モンゴル自治区(内蒙古)で
同じモンゴル人なのに飲み方が違う。
先に述べたように
モンゴル(外蒙古)は旧ソ連の影響でウォッカ
内モンゴル自治区(内蒙古)は中国の影響で白酒なのだ
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(2023年内蒙古訪問)
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一方でもちろん、伝統的なモンゴルも健在だ。
今回の鹿山の目的は家畜由来のシミーン.アルヒ(モンゴルウォッカ)だ。
今回は首都ウランバートルから車で六時間ほどかっ飛ばした所のゲルの家族のとこに連れてってもらった。
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シミーン.アルヒ(馬乳酒ウォッカ)の
蒸留見学体験。
しかしながらそもそも馬乳酒は夏の時期だ。
なのでゲルにある自家製の馬乳酒がないのでスーパーで自分達で箱ごと大量に買ってきた馬乳酒で実際にどのように蒸留するのか見学させてもらった。
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日本人にはあまり馬乳酒は馴染みがないのでそもそも馬乳酒について簡単に説明。
馬乳酒はモンゴル語ではアイラグ
馬乳酒というからにはけっこうアルコールなのかなとも思うが実は1%〜1.5%程度。
しかも伝統的な馬乳酒は春から夏に限られる
(馬は夏に子供を出産。そもそも妊娠しないと乳は出ない)
因みに現代においてはモンゴルでも馬乳酒由来のシミーン.アルヒは生産性が悪いので年中作られる牛乳由来のアルヒに軍配があがるそう。
去年書いた記事で牛乳酒の工場へ行ったのだ↓
そう、馬乳酒はアルコール1%〜1.5%程度。
これを頑張って蒸留してアルコール濃度をあげ濃縮させるシミーン.アルヒ(モンゴルウォッカ)は回収率が悪いのと比例して手間がかかるので古来振舞われるのは特別な客人と特別な宴の時だけなのだ。
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温めている馬乳酒の鍋に大きな筒をかぶせる。
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因みにこの日本でいうところの
兜釜式蒸留機には正式名称がある。
Mogolian stillというらしい。
(A.の左)
因みに右は日本でも江戸時代によく使われた蘭引蒸留と同じ原理。
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そうこうしてるうちに完成だ
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ここで馬乳酒由来の
シミーン.アルヒの等級を説明しよう。
一回蒸留のシミーン.アルヒは二つに分けられる。
【オヒ】初留液のみ。
7度〜15度くらい。これは彼らにとっての高級酒であり大切なもの。アルコールが低くなる真ん中から後半とは別々で分けるのだ。
【ソフゥス】 オヒの切り離し部分。
【アルツ】2回目の蒸留。ソフゥスの部分。
【ホルツ】3回目の蒸留。焼酎くらいのアルコール度数にようやくなるらしい。
【シャルツ】4回目の蒸留。40度以上。
【ボルツ】 5回目の蒸留。ほとんど味わいはピュアなウォッカになるそう。
そもそも馬乳酒がアルコール度数1%〜1.5%だからたくさん蒸留しても得られるのはとても少ない。故に貴重なのだ。
あと、特筆すべき点がある。
蒸留する際にほんの少しだけ砂糖を加えるのだ。
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そう、ほんの少しだけ。
これはロシア及び旧ソ連圏のウォッカ造りにおいて今でも行われてるやり方。
全体に対して0.1%未満加えるやり方。
ほぼピュアなのだけれどもこの所業が全体のボリュームを生むのがロシアウォッカの特徴だ。
モンゴルが旧ソ連の影響圏だったのが伺えて1人で興奮してたのだ。
できた!
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その場で造った自家製シミーン.アルヒを頂きました。
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アルコール度数を計測したら10度であった。
しばらくBenFiddichで飲めるので
これのダーティーマティーニとか美味しいよ
また新しい一つの経験ができました。
モンゴルの皆様ありがとうございました。