ダービーを予想する
こんにちは!
珍宝堂井鶴斎(ちんぽうどう いかくさい)です。栄えある日本ダービーの”思ひ出馬券”の原稿を書けるなんて、うれしいです。((´∀`*))
競馬歴30年のフリーライター。三流大学を卒業後、一度も正業に就くことなく、競馬とともにダラダラとした人生を送る自他ともに認めるロクデナシ。叩けば埃の出る身であるため、人目につくことを嫌い、さまざまなペンネームで原稿を書き散らして何とか糊口をしのいでいます。
1960年代生まれ、東北出身。
これからも、たびたび登場させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
レイデオロの陰に「幻のダービー馬」あり!
よく「幻のダービー馬」という表現を見かけるが、それにはいくつかのパターンがある。ダービーに勝つ実力を十二分に備えているにもかかわらず、故障などで出走できなかった馬。レース展開や馬場を味方につけた他馬の激走(騎手の好騎乗もある)で、涙をのんだ馬。体調悪化で本来の実力を発揮できなかった馬。現在のルールではあり得ないことだが、昭和の頃には、外国産馬であるため出走資格を有しておらず、断念せざるを得なかったマルゼンスキーのようなケースもあった。
ダービーは運のいい馬が勝つ
それを考えると、「ダービーは運のいい馬が勝つ」という使い古された言葉が、至言のように響いてくる。2017年のダービーは、そんな「運」が大きくモノを言ったケースであろう。
その年の東京優駿を制したのはレイデオロであった。3連勝でホープフルステークス(当時はGⅡ)を制し、ダービー後にはジャパンカップ2着、翌年秋の天皇賞に勝ったほどの馬なのだから、決してフロックではない。歴史的超名馬の域には達していなかもしれないが、ダービー馬となっても何ら不思議ない馬だったのは確かだろう。
「運」も実力のうち
とはいえ、レイデオロに「運」の後押しがあったこともまた事実である。真っ先に挙げねばならないのは、鞍上クリストフ・ルメールの好騎乗であろう。
近年の競馬は高速化が進み、なかなか前が止まらない高速馬場になってきている。それだけに、軽い東京競馬場の芝の場合、スローで後ろにいすぎた場合、上(あが)りの脚の限界から差し切れないケースが頻発している。ルメールはそんな状況を見越していたのだ。
レース前半、レイデオロは後方の13、14番手に控えていた。流れは、前半の1000メートルが1分3秒2という超スローペース。これでは差し残しの危険性がある。そこでルメールは仕掛けた。向こう正面でグングン進出し、3コーナーに差し掛かる頃には2番手まで押し上げていたのである。結局この判断がモノを言い、スワーヴリチャードを振り切って栄冠に輝いたのだ。
もし仮に、後方に位置したままであれば、届いていなかったかもしれない。
一方、スローペースの後方待機策で涙をのんだ馬がいた。1番人気に推されていたアドミラブルにほかならない。鞍上のミルコ・デムーロは、本来ならもっと早く動きたかったらしいのだが、18番枠の大外が災いし、身動きの取れない状況に置かれていたのだ。しかも、終始外々を回される距離ロスが大きかった上、直線に入ったところで前をカットされる不利も受けている。結果は3着であった。
もし、アドミラブルがスムーズなレースをできていれば、結果は違っていたような気がする。あくまでも私見だが、能力自体はアドミラブルのほうが上だと思えるからだ。結局、この馬には「運」がなかったということなのだろう。
そもそも、アドミラブル自身が終生不運に付きまとわれた馬であった。牧場時代から素質の高さを謳われていたものの、のど鳴りのため2歳9月のデビュー戦で9着の大惨敗を喫している。その後、手術で回復したものの、初勝利を挙げたのは3歳の3月。ダービーに出るには取りこぼしのできない状況で、アザレア賞、青葉賞、そして本場と、押せ押せのローテーションを強いられた。3戦続けて強い競馬をしただけに、真にピークの状態でダービーを迎えられたのかどうかの疑問も拭いきれない。
さらには、ダービー後の飛躍を期待されたものの、屈腱炎で長期休養を余儀なくされたばかりか、5歳の復帰直前に骨折して引退に追い込まれてしまう。結局、3着だったダービーが最後のレースだった。つくづく運のないだった馬と言わねばならない。
2017年のダービーを振り返るとき、勝ったレイデオロよりも、敗れたアドミラブルのほうが記憶の中に鮮明に浮かび上がってくるのだ。
さて、第90回を迎える2023年の日本ダービーはどんな名勝負が繰り広げられるのだろう――。
(珍宝堂井鶴斎)
ダービーを予想する(2)
こんにちは!
思ひ出馬券師です。
大学時代に初めて買った馬券(メジロティターンが勝った天皇賞・秋)が的中したのをきっかけに、ケイバにハマる。卒業時、“競馬の神様”大川慶次郎氏に教えを乞おうとするが、「君のような人は競馬界の外で、ケイバを楽しんでくれなきゃダメだよぉ。それを広めてほしいな」と諭され、執筆活動に。ぼちぼち、原稿を書いている。
好きな馬はミスターシービーとウォッカ。「馬券は予想の答え合わせ」
東京都渋谷区生まれ。
どうぞよろしくお願いいたします。
ウォッカが“おてんば”なのはわかっていた!
これまで日本ダービーに出走した牝馬は、意外に多いと思うかもしれないが、130頭もいる。近年、出走数が少なくなっているが、それは1953年に優駿牝馬(オークス)が秋から日本ダービーの前週に開催されるようになり、その後の牝馬3冠路線への道筋をつけたからだ。
ダービーを勝った牝馬は3頭
最近では、2021年に桜花賞2着(勝ったのは、ソダシ)のサトノレイナスが果敢に挑戦。2番人気に推されたが、5着に敗れた。このとき、優勝したのはシャフリアール。まだ、記憶に新しいだろう。
今年で90回を迎える日本ダービーだが、牝馬が優勝したのは1937年のヒサトモ、1943年のクリフジ。そして、そのクリフジから64年ぶりの2007年に優勝した、ウォッカ。なんと、3頭しかないのだ。
名牝ダイワスカーレットの存在
ウォッカが男勝りの“おてんば”娘なのは、わかっていた。
その日は、我が家の娘の小学校の運動会。出がけに、妻に「今年のダービーは忘れなられないダービーになるのに…。勝つのは牝馬。ウォッカだよ」と断言。「(ケイバ好きの)義父に教えてあげるといい」。そう言って、ウォッカの単勝と、重賞を勝ってきた牡馬への馬連を買って、我が家の“おてんば娘”の応援に向かった。
根拠はあった。2007年の牝馬はレベルが高かったのだ。
そう思ったのは、のちに桜花賞を逃げ切ったダイワスカーレットが勝った報知杯中京2歳ステークス。1番人気は彼女。差のない2番人気は、デビュー戦を快勝して一躍クラシック候補生となったアドマイヤムーンだった。そのレースで、ダイワスカーレットは先行して、楽に抜け出すとアドマイヤムーンに2分の1馬身差をつけて、”余裕”で勝った。
一方のウォッカといえば、新馬戦を2着に3馬身以上ちぎって快勝。3戦目でGI、阪神ジュベナイルフィリーズ(JF)を勝ち、続くエルフィンステークスも3馬身差で大勝すると、桜花賞トライアルのチューリップ賞では単勝1.4倍の断然人気に推され、ダイワスカーレットをクビ差で差し切った。
桜花賞は再び、ウォッカVSダイワスカーレットの2強対決。先行したダイワスカーレットをウォッカは猛然と差してきたが、今度は届かず2着に終わった。
牝馬のレベルの高さに確信をもったのはNHKマイルカップ(GI)だった。ウォッカが勝った阪神JFで8着、ダイワスカーレットが勝った桜花賞では14着と大敗したピンクカメオ(単勝17番人気)が、ローレルゲレイロ(1番人気、GI朝日杯フューチャリティステークス2着など)ら、牡馬を蹴散らし大穴をあけた。「ひょっとしたら、ひょっとするかも……」いや、「ウォッカなら、勝てる!」。日に日にその”歴史的名牝”の誕生への思いは強まった。
ウォッカの調教師は、2005年に日米のオークスを勝ったシーザリオなどを育てた角居勝彦師。オーナーはウォッカの父でダービー馬(2002年)のタニノギムレットのオーナー、谷水雄三氏。角居師がウォッカのダービー出走を懇願したという逸話が残っている。
ダービー当日は3番人気。四位洋文騎手を背に、長い東京競馬場の直線を馬群の中団から馬場の真ん中を抜け出すと、逃げ込みを図るアサクサキングス(2着)を3馬身置き去りにした。
ちなみに我が家の“おてんば”も、ウォッカ同様、1等賞だった!
今年の桜花賞、勝ったリバティアイランドのレースぶりを見て、「おっ、スゴい牝馬が現れたな」「ウォッカ以来、16年ぶりに牝馬がダービーを勝つかも…」「ダービーに出てこないかな…」と、思った。
阪神競馬場の4コーナーを後方のまま周り、先行勢に有利な展開にもかかわらず、ごぼう抜きで優勝。信じられない光景だった。
ところが、その翌週にまたしても驚きの豪脚を見せてくれた馬がいた。皐月賞馬となったソールオリエンスだ。大混戦といわれていた皐月賞だったが、終わってみれば“ケタ違い”の馬が1頭だけいた。そんな感じだった。
さて、2023年の日本ダービーはどうなるのか――。
リバティアイランドは、案の定! オークスで2着に6馬身差の圧勝。桜花賞に続く2冠を達成した。「あ~、やっぱりダービーで見たかった」。
ソールオリエンスとの対決は、古馬になってからの“おたのしみ”にしておこう。
(思ひ出ばけん師)
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“お宝”は記憶の中にある!
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◎スキルヴィング
〇ソールオリエンス
▲シャザーン
皐月賞馬で、ただ1頭2冠を狙えるソールオリエンス(○対抗)の強さは認めるが、前走で東京・2400メートルのダービーと同じ舞台で、後方から一気の脚でまとめてかわしたスキルヴィングの差し脚に期待して◎本命。トライアルの青葉賞の優勝馬初のダービー制覇だ。
▲単穴は、すみれステークス(距離2200メートル)を出遅れたうえ、先行勢優位の流れの中で快勝したシャザーン。
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◎ソールオリエンス
○ファントムシーフ
▲ドゥラエレーデ
皐月賞でのソールオリエンスの差し脚は強烈だった。◎本命!
広く、直線の長い東京競馬場であれば、もっと生きてくるはず。鞍上の横山武史騎手にとっては、2021年のエフフォーリア(ハナ差の2着)の雪辱を果たしたいところ。
○対抗は皐月賞1番人気で3着だったファントムシーフ。舞台が中山競馬場から、共同通信杯(GⅢ)を勝った東京競馬場にかわるのはプラス。
▲単穴は、昨年暮れのGIホープフルステークスの優勝馬、ドゥラエレーデに敬意を表す。
※ みなさんも思ひ出の名馬、レースにまつわるエピソードから、”当たる馬券”を導き出してくださいね。((´∀`*))
► 次回、宝塚記念でお会いしましょう!
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