野良猫のあの子みたいに①
こんばんは。id_butterです。
今日はいつか書こう書こうと思って書けなかったやつ。
昔飼っていた猫の話だ。
飼っていたといっても、彼女はもともと野良猫だった。
元夫とそのマンションに住み始めた日。
夜、ベランダの窓を開けると、彼がそこにちょこんと座っていた。
わたしを見て少し距離をとったが、逃げない。
キジトラの猫が、堂々と座ってこっちを見ている。
ん???
なんだろうと思ったが、空気の入れ替えをしたいだけだったのでそのまま放っておいた。
すると彼は隣の部屋のベランダにスルスルと移動していった。
「おーきたか」
少し経って、隣の部屋の窓が開く音と50代くらいだろうか、男性の声がした。
「ほれ」「それ」「うまいか、そうか。」
どうやらお刺身?をかの猫に投げている。
隣の部屋の男性はどうやら猫と晩酌をしているらしかった。
その隣の部屋の男性も。
そこは単身赴任者が多いマンションだったのかもしれない。
その晩酌のはしごは毎晩続いた。
いつしか元夫まで猫と晩酌をするようになっていた。
猫は毎晩三部屋をくまなく回り、夜の街に消えていく。
これこそプロ奢られヤーの最先端だ。
で、ある日わたしは気づいた。
「この子、こんなに小さかったっけ?」
猫は2匹いた。かわるがわる我が家に訪れていた。
柄が一緒なので気づかなかったけど、よく見ると顔と大きさが違った。
ある日2匹で現れたので見比べる。
親子なのかもしれない、と思うくらい似ていた。柄も顔も。
大きいオスと小さいメス、クロとチビと呼ぶことにした。
チビはまだ子どもだったらしい、日に日に大きくなりすぐにチビではなくなった。
チビは野良猫なのにも関わらず、わたしととても仲良くしてくれた。
出会った時子どもだったからなのかもしれない。
野良猫特有の距離感とか警戒心が、あまりないのだった。
ある日朝起きると、窓が開いており、わたしの枕元にチビが座っていた。
チビはなぜかドヤ顔でわたしを見つめている。
「あーチビ、おはよう………!!!!!」
チビの横に白いモワッとしたものと黒いもので作られた小山が置かれており、寝ぼけた頭が凍った。
「ぎゃーーー」(驚くと人はほんとうにぎゃーっていうんだね)
小山の白いとしたものは尻尾のないネズミで黒いものはたくさんの虫だった。獲物が取れるようになったチビは、どうやら日頃のお礼にとこれらを持ってきてくれたらしいのだ。
そして、半分親代わり?のわたしにその成果を見せにきてくれたのだ。
わたしが喜んでいないことを悟った(というか見せつけられた)賢い彼女が貢物を持ってくることはなかった。
あのときは悪いことをしてしまった。いまだにほろ苦い。
元夫が「チビ、ありがとうね。でももういいからね。」と笑っていた。
肩を落として?帰っていくチビの後ろ姿を見送った。
そのときに、猫って不思議なことをするんだなと思った。
なんだか、人間みたい。
猫はみんなこんなことするのかな。
その街は猫をかわいがる人が多かったようだった。
駅に行く道の途中に工場があったのだけれど、その工場の入り口にはいつも白いプラスチック容器が置かれていて、猫のエサがパラパラと残っていた。
野良猫は他にもいて、みんな毛艶も良く楽しげだった。
ある晩、空き地の小山みたいなところでクロとチビを見かけた。
二匹はしなやかに颯爽と駆けていく、そこは猫の集会だった。
ケンカするでもなく、10匹弱の猫たちが会話を交わす。
「ワーオー」「ウーウー」
いつもとは少し違う鳴き声でなく猫たち。
さらに猫が集まってきていた。
何日の何時に始まるとか決まっているのかな?
不思議に思った。
それから何回か、同じ場所で猫の集会を見かけた。
彼と彼女とわたしたちの平穏な日常。
それは、けっこう長く続いた。
続きはまた今度。