#5 私が夫の敵になってから背中に爆弾投げつけられるまで
こんにちわ。id_butterです。(なんで、書いても書いても終わらない?早く恋に落っこちたい。)
人生で最高に不幸な時に恋に落ちた話 の5話目です。離婚しようとしている今、実は先に裏切ったの自分じゃん?というテーマで2話が繋がっているので、もしお時間が許せば#4から読んでいただけると幸せです。
今までの人生で一番幸せを感じた瞬間てどんな時ですか?
そう聞かれたら、やっぱり一人目の子どもが私のところに来てくれた時を思い出す。小さな小さな体が、愛おしくて神々しくて、看護婦さんに「触っていいんですか?」と聞いて「お母さんでしょ。」と笑われた。触るのも怖くて、抱っこするなんてもっと怖くてでも抱っこしたら軽くて、なぜかずっしりと重たい。こんなに小さいのに、動いて、息をしている。何にも持ってないのに、どこまでも豊かな存在。こんなに綺麗な存在を私の子どもだと言われても、どうしたらいいんだろう。
こんなに幸せでいいのか。
脳みそが完全に蜂蜜に浸かってるみたいな、それまでの人生で感じたことない絶対的かつ圧倒的な多幸感に包まれたこの瞬間に、私は夫の敵になったのだと思う。
「幸せになりたい」「幸せにならなきゃ」どっちだったかな。
どっちにしろ、一緒に不幸の中を生きていくって結婚したのにこんなひどい裏切り、彼からしたらありえないだろう。彼と浸かる平穏な不幸と子どもと掴む弾むような幸せ、天秤は後者に傾き、残酷な当たり前を私は彼に強要するようになった。
(と、今はわかるんですが、当時は生きるのに必死で気づかなかった。)
「四六時中テレビを点けておかないで」
「タバコはトイレかベランダにして欲しい」
「眠いからしたくない、触らないで」
「スロットにお金使わないで」
「うるさくしないで、起きちゃう」
ある日突然、妻から母になった私に、彼はついてこれていたのだろうか。
私は私で、彼を合わない靴のように感じるようになった。子どもがいるのに、この人どうしてスロット行くのかな。スロット屋さんの駐輪場に止まる赤いママチャリに、紛れもないうちのマンションのシールが貼ってある。子どもを抱えて入り口で立ち尽くしている時の情けない気持ち。「ガス代くらい払ってくれないかな?」「払ったよ。」…なるほど、子ども手当で払ったんですね。ここはありがとうと言うところなのか?
彼は、二人で暮らしてきた今までと変わることはなかった。子どもを可愛がってはくれたけど、大人としての責任を果たそうとはしなかった。
よく買いに行ったドーナツ。最初子どもの分だけ買ってたものの、ある日夫が「なんで俺のがないんだ!!!」と怒り出し、それ以来持ち帰りは3個。でも、美味しいドーナツを夫は食べない。カチコチのドーナツを食べる夫、もしくは、カビの生えたドーナツを捨てる妻、の繰り返し。思い出すと虚しいな。かわいそうなドーナツ達。まぁ食べたいのは、ドーナツじゃなく愛情だったんだろうな。子どもは彼にとってライバルだったのかもしれない。
「私、あなたのママじゃないよ。」飲み込んだ言葉がお腹の沼みたいなところでドロドロに溶けていく。私もそこで溶けてしまえればいいのに。
で、運命の日。
お前のせいで、20万以上あった給料が半分になったんだよ!!!
お前がいなかったら、もっと早く社員になれたって職場の人みんなに言われてるよ。
夫が私の背中に投げつけた爆弾。
私が洗濯した服を着て、私がローンを払った家に住み、私が用意したご飯を食べて会社に行く夫。女性の多い職場でした。毎年バレンタインデーには銀座のデパートで買ったとびっきりのお菓子を差し入れさせました。清潔感がなかったら嫌われるから、バーゲンを駆使してそれなりの服を揃えたり。夫の仕事がうまく行くようにサポートしてきたつもりだった。
でも。
20万もお給料もらってたんだね、初めて知った。それなのに、家には入れようとは思ってくれなかったんだ。
仕事場の人に私の悪口言ってたんだ。私もあのお店買い物に行くんだよ、知ってる?今まで笑顔で挨拶してくれた人たち、本当は何考えてたのかな。
全身が冷たくなった。音が聞こえない。
なんで守ってたはずの家族から背中に爆弾投げつけられてるんだろ。
あー、私、彼の妻じゃなくて、敵だったのか。(理解)
〜 fin 〜
今心が落ち着いているので、思うことですが、彼は幸せになりたかったんじゃなく、不幸なまま隣にいて欲しかったんじゃないかな。ごめん。彼も、私と同じように、一人だと思ってたのかもしれない。ごめん。