バリアフリー旅行を専門に手掛ける旅行会社を作って、今年で20年。
山あり、谷あり(実際には谷あり、谷あり…)。
小さな会社なので、お客様の人生のそばにご一緒させて頂くことが多く、
問わずがわりに人生の途上での想像を絶するご苦労を伺うことが少なからずあります。
私は傍観者のようにただ話を伺うことしかできませんが、ひとりだけ言えるのは「今、この場所に来ている事実。旅ができている幸せ」をお客様が噛みしめていらっしゃるということです。
「地獄とは、こういうことをいうのか、と思う毎日でした」と、ビールを片手に目に涙を浮かべながら語る奥様の話は、涙なしには聴けません。それでも、今、ここにこうやって旅行に来れている。そのことが信じられないとおっしゃるのです。
障害がある方とご家族の旅行は本当に大変です。旅の準備も物理的な準備だけではなく、心の準備にも時間がかかります。それでも、私は「行ける時が行きどき」だとお客様に教わりました。今、行けそうなら旅をしておかないと、来年行けるかどうかなんてわかりません。
そして、これは何もお体に障害がある方やご高齢の方だけの話ではないのです。明日の健康が保証されている人など、私を含めてひとりもいないのです。だから、私はお客様に力説します。
「旅は行けるときが、行きどき」だと。
旅は不急不要なものだから、つい後回しにしてしまうけれど、今、状況が許すなら、今、旅をして欲しいと切に願います。
行かなくて後悔した話は聞きますが、行って後悔した話は、聞いたことがありません。
旅に病んで、夢は枯野をかけ巡る 芭蕉
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