【読書日記】「どうしたら救えたのか?」を問いかける一冊
「怖い、怖い、怖いよー」
一昨日、柚木裕子さん著の「蟻の菜園」を読み終えた直後、思わずそうつぶ
やいた。
いやいや、本当に怖い。
この話は、結婚詐欺の容疑で逮捕された女性を、フリーライターの主人公が「なぜ彼女は結婚詐欺を働き、そして、関わった男を何人も殺しているのか?」と、彼女を追っていくという小説だ。
何かがおかしいこの事件。
「ん? ん? 何? どういうこと?」と読み進めていくうちに、ちぐはぐだった事件のかけらが、少しずつそろい、合わさり、パズルのピースがそろいかけた瞬間、「あれ? これって、もしかして?」と気付いた時にはすでに遅し。
今まで、つなぎ合わせたパズルのピースは形を変え、恐ろしい形で迫ってくる。
怖い、怖すぎる。
でも、最後、主人公のフリーライターは、センセーショナルな見出しで記事を書くことはやめる。代わりに「どうしたら、”彼女”を救えたのか」という切り口で記事を書くことにする。
そして、それは、私にも迫ってくる。
「どうしたら、救えたのか」
救うための行動が更に最悪の結果を生んだとしたら、一体どうしたらよかったのだろうか? その事実を私は一生抱えていけるのだろうか。
怖い。怖いけれど、一気に読んでしまった。
丁寧に丁寧に読者を誘導し、突きつけるという圧倒的な筆力。素晴らしいなぁ……。一文字たりとも抜かりなく、熱量を落とすことなく書ききるって、すごい……。
私は2つの「本の会」に入っている。どちらもゆるい会なので、この本が受け入れられるかな……。久しぶりに小説を読んで、色々な面で打ちのめされた。
でも、ぜひ、読んでもらいたいな。