観劇記録「黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~ 日和の章」
黑世界 日和の章を観ました。
日和の章は
①家族ごっこ[作・末満健一]
②青い薔薇の教会[作・葛木英]
③静かな村の賑やかなふたり[作・岩井勇気]
④血と記憶[作・末満健一]
⑤二本の鎖[作・来楽零]
⑥百年の孤独[作・末満健一]
の6部構成。雨下とはまた違ったテイストでこちらも面白かった。
「家族ごっこ」
開幕からしらりんの幻覚に責められるリリー。もう雨は止んだ…明るい曲調でなんて歌詞を歌うんだ……
リリーちゃん、隙あらば空き家や納屋で寝て見知らぬ人に保護(または監禁)されがち問題。いいぞもっとやれ。そして隙あらば年単位の時を費やしがち。
というか「ママ」って!リリーママ!?マ、ママーーーー!!こんなうら若き乙女を捕まえてなんて業の深いことを…リリーママ……
”家族”を救うため、その真の姿を現すリリー。リリーの唇は純潔のままだと思っていたんだけど…明確にリリーが誰かを噛む描写ってここが初だよね?二輪咲きみれてないからもしかしたらそこであるのかもしらんけれど。
イニシアチブで自害させる…サナトリウムを思い出して辛いだろうに、それでもリリーにとってそれだけのことを決意するほどラッカとノクとエルマーが大切な存在になってたんやなって…孤独と共に永遠を歩む決断をしたリリーがそういう存在を持つことはきっといいことなんだろうけど、その結果がこれだなんてあんまりだ……
「青い薔薇の教会」
青い薔薇…私好きなんですよ。「Stray Sheep Paradise」ってガールズ舞台があって、その中で印象的に使われてまして。花言葉の変遷がとってもエモいんですよね。かつては「存在しないもの」として"不可能"の花言葉が与えられていたのが、技術の進歩によってついに実現されたことによって花言葉が"夢、叶う"に変わったんですよね(早口オタク)。エモくない????これはリリーの運命を示唆してるんじゃないかってそう思いたいですね。リリーの手が死に届く日が来るかはわからないけれど、リリーが幸せを掴むという我々が夢見る日はいつか現実になるんじゃないかって……
それにしてもラッカとモスカータが同じ人ってマ?モスカータは聞きなれた朴さんの声だったから一発でわかったけどラッカも朴さんだとは最初気付かなかったぞ。
モスカータの境遇がリリーと被って辛かったですね…モスカータはまだ復讐を求めることができたけれど、リリーには復讐を望まれる相手すら残っていない…直接的に罰を受けることすらできず、その代わりに永遠を生きるなんてあんまりすぎる……
村人たちが「ヴァンプを殺せ」っていきり立ってるシーンはマリーゴールドを想起させましたね。「関係ない皆が許せないというのはおかしいじゃないか」って、まるで現代のSNSみたいだぁ……
「静かな村の賑やかなふたり」
何この…何……?
やっぱり旅装束リリーちゃんかわいい…かわいくない……?
「声量がすげぇ」「匿名希望でおねげぇやす」などリリーちゃんが大変コミカルで、ささくれだった心にスーっと染み入ってアァ…遥かにイイ……首をかしげるリリーちゃんかわいいな????
洗濯物、布地が被ってるところ確かにかわかないよね、わかる。ベッドのシーツとかそうね。私は野郎なのでスカートのことはよくわかりません。
二人のテンションに引き始めるチェリーと、楽しくなってきちゃうリリーが見ていて微笑ましかった。手を叩くリリーちゃんかわいいな????
雨下も3話はギャグ路線だったけど日和は話にかけて酷い。何この…何……?にぎやかなんてレベルじゃねぇ。
「血と記憶」
なんだこのラッパー…なんだ……
「TRUMPとFALSE」ってワードが出てきたけど、FALSEによって不死者にされたリリーはFALSEですらないんですよね…「フェアリーテイル」って呼び方、気障っぽいけど嫌いじゃないわ!!
ラッカがまだほんの少女だと思っていたリリー。ここで改めて時の流れ方が違うんだということがつきつけられる。リリーがラッカともう一度家族になることを拒んだのには、いつかラッカを看取る日が来るのが怖いというのもあったんじゃないかなと感じました。
それにしてもソフィーはあれだけ好き放題してったのが実質黙認?されてたのに対してリリーは何もしてなくてもこんな追われるのなんでなんでしょうね。血盟議会の方針が変わったのかな。
ラッカを噛んで、イニシアチブで記憶を消してしまうリリー。ファルスと似ているようで決定的に違うその選択はとても悲しくて…ラッカを思ってのことであるのはわかるんだけどやりきれない。長い孤独を経てようやく得られた繋がりを自ら消してしまうなんて。
岩に潰され、再生できずに蠢き続けるリリー。鞘師の演技があまりに不気味で、本当に凄かった。可愛い可愛いリリーちゃんではなく、おぞましい肉塊が確かにそこにあった。
ところで最終的に地下水脈に辿り着いて再生するんだけどその時リリーちゃん服は鉱山においてきたままだよね?大丈夫?スッポンポンで再生してない????川に出て最初に人に出会うまでの間服どうしてたの????????
「二本の鎖」
おっとここで幼馴染主従共依存ですね。大好物ですよ幼馴染主従共依存。ふたかおおすこれ。せつとわをすこれ。
またまた行き倒れて保護されるリリーちゃん。隙あらば行き倒れるのホントかわいいな????
TRUMP、LILIUM、マリーゴールドでは描写されなかったので実感がわきづらいけどそりゃあ繭期から抜け出しつつあるヴァンプだっているよね。リリーの繭期は明けないけれど……
そして繭期の割にはリリーおちついてるなーと思うけどよく考えたらイマジナリーフレンドチェリーちゃん生み出して会話してる時点で大概アレですね。他人からは分かりづらいかもしれないけど十分アレですわ。
イニシアチブで相手の心を操ってしまったアントニー。リリーちゃん激おこ案件。でも実は先に相手を噛んでいたのはフィロの方。フフ…いいですね……
互いに互いを思い合っていたのに、イニシアチブで命じてしまった二人はその想いが本物なのかイニシアチブによるものなのかなど分るはずもなく、もはや無邪気に信じることができない。仲谷鳰先生の「アンフェアランダマイザ」(東方の百合二次創作。紫が藍を式にする際に「50%の確率で紫を愛してしまう術式」を組み込んだ後無事相思相愛になってしまうが無邪気に愛してくる藍に対して紫はその感情が式によるものなのか純粋に生れ出たものなのか区別できない)を思い出しますね…いいよね……
途中で「あこれもしかしたらフィロが先にアントニー噛んだか?」と思ったけど予想が的中。現実の人間の心なんて全然理解できないのにこういうときだけ予想が当たるのはなんでなんだろうね。
「百年の孤独」
リリーのイニシアチブでリリーとの記憶を失ったまま、ヴァンプとしての生を全うするラッカ。ラッカの孫たちがクランを出ても繭期から覚めることのないリリー。
正直ね、6話は割と心臓と涙腺に直撃したせいで感想が殆ど思い出せないです…ただ、リリーとラッカのやりとりに泣かされたことだけは覚えてる。
そしてノクがリリーに捧げる、「少女純潔」いやこんなん無理でしょ…ボロボロ泣きましたよ。死すらも傍らに従え、永遠の旅路を征く永遠の孤高の花。図らずも雨下の感想で少女純潔の歌詞書いてたら日和で直接ぶつけられるなんて聞いてないわ!!それにしてもノクの少女純潔、良い声過ぎる。サントラ出して????
最初は気づかなかったけど他の人のコメントで気づいた。リリーお前そのポーズ…星に手を伸ばす……
リリーの望みが死に届くことなのは分かってるし、そこはきっと変えられないんだと思う。けれどいずれは必ず死に向かうヒトやヴァンプがその過程でいくつもの幸せを重ねていくように、リリーの旅路にもまた沢山の幸せが、縁があって欲しい…生はいつか終わるものだけど、終わりに向かうだけが生じゃないのだから。
ソフィーのイニシアチブ。それでリリーの手は死に届くんだろうか……
とりあえずアレですね。生で観たい。配信を観て強く思った。生で浴びたい。大阪公演のチケット、全力でとりに行きます。