擦れ違うモノに無為に期待を背負わせている。 2024.06.30 湘南ベルマーレvs京都サンガ マッチレビュー
開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。
■試合の振り返り
不安定な天気と強い風が吹く平塚でキックオフ。湘南は水曜日の川崎戦から半数程度のメンバー変更を実施。DFラインの真ん中には負傷離脱していたミンテが復帰。右CBには鈴木雄斗が入り、WBは岡本。中盤は田中、茨田、奥野の3人が名を連ね、池田はベンチスタート。並びはいつもの逆三角形ではなく頂点が上になる正三角形に近い形を取り、田中の横には茨田が位置していた。FWは鈴木章斗に代わって福田がルキアンと2トップを組む。
対する京都、CBはアピアタウィアに代わって宮本が入り、柏戦で負傷交代していた三竿がこの試合も左SBを担当。アンカーは福岡が務め、IHは川崎と松田。前線の3枚は左から一美、原、トゥーリオと並んだ。
前半は湘南が風上に立つ。序盤はお互いダイレクト志向で、繋がず手数をかけずに前に向かう。京都は中央に入った原の高さ、湘南は2トップのスピードを活用する。中盤での潰し合いが多い試合。
16分の湘南、畑のカットインをきっかけに京都陣内深くへ侵入。細かいパスを繋いでから、最後はボックス内で待っていた岡本の低いクロスにまで持ち込んだ。
23分に京都が先制。ミンテの跳ね返しを拾ったトゥーリオのロブパス、胸でうまくコントロールした原がゴールに流し込んだ。
31分、コーナーキックの流れからセカンドボールを拾った京都、右サイドを福田心之助が突破してクロス。トゥーリオがニアサイドで合わせるがボムグンがスーパーセーブ。その後のシュートも枠を逸れ、何とか危機を脱した。
40分、縦パスの落としを受けた奥野が右サイドからクロス。ボックス内まで走っていた畑が右足でシュート。ファーサイドを巻くように狙ったが惜しくも枠の外。
ハーフタイムでは両チーム交代なし。50分、右サイドのスローインを受けたルキアンが反転、混戦の中から複数回シュートを放つが京都DF陣がブロックする。こぼれ球を拾った茨田が右サイドに逃げながらクロス、そのボールがカバーに来た一美の手に当たった。VARの助言によりオンフィールドレビューが行われ、池内主審のチェックを経てPKの判定。
そのPKを福田が蹴るが、クソンユンが右に飛んでセーブ。湘南は同点に追いつく大きなチャンスを逃した。
70分、京都のパスミスを拾ったルキアンからDFラインから抜け出した福田へパス。宮本に寄せられながらもシュートまで持ち込むが、ボールは枠の外へ。
両チームともに選手交代をしながら終盤へ向かい、ゴールへ向かう湘南と逃げ切ろうとする京都という構図。しかしゴール前に狭く位置取って集中した守備を見せた京都を破れず、0-1でアウェイチームが6ポイントマッチを制した。
■プランの遂行を阻んだものは?
ピッチ上での戦いぶりでは何を狙ってどのように相手を上回ろうとしていたのか筆者はあまり読み取れなかったのだが、試合後コメントでそれについて答えてくれている。
岡本と奥野、そして山口監督のコメントから想像できるプランとしては、相手DFラインに圧をかけボールを奪って主導権を握る。とくにサイドバックをターゲットにしてプレッシャーをかける。ボールを奪ったらサイドバックを誘き出して背後を使う。背後を狙うのは主に奥野の役割で、2トップはゴール前に専念させる。中盤は後ろに2枚並べる形で、前に位置する奥野がボールサイドの深さを取りに行った後のリスク管理と被カウンター対応、セカンドボール回収を重視、といったところだろうか。
だが試合はプラン通りには進まなかった。まずはじめに京都のDFラインが繋ぎにまったくこだわらず、シンプルに蹴ってきていたこと。プレスのスイッチを入れるタイミングさえ与えてくれず、圧をかけることよりも跳ね返すことに力を割くことになった。風下側を選ぶ予定だったと相手監督が試合後インタビューで答えていた通り、多少雑に蹴ったとしてもボールはゴールラインを割ることなくむしろ戻ってきており、湘南の狙いを空振りにするうえ自分たちの攻撃に繋げられる理にかなったプレーになっていた。風を味方につけたのは相手の方だったのかもしれない。(とはいえ湘南が相手のサイドバックをどのように抑える予定だったのかはわからなかった)
ボールが狙った通り奪えないのであれば保持するほうで、と思うところだがこの試合の湘南はやたらめったら縦に急いでいた。サイドバックの裏を使いたいという気持ちの表れなのかもしれないが、相手のプレスを受けながらのプレーになっているため精度が落ちる。加えて風の影響もあったのか、背後へのパスはクソンユンが収めるシーンが目についた。
そして3つ目として湘南の降りるFWに対する京都のチェックが徹底されており、福田は何度もファールで止められていた。奪ったボールをポストプレーで前向きの選手を作って逆サイドに展開、というのは湘南が見せる攻撃の形のひとつであるが、その起点となるFWに激しいチャージでプレーを止めて流れを切られてしまっていた。
筆者としてはFWで時間を作れないならDFラインや中盤が取り組んでほしいと思うところで、狙っていたというサイドバック裏の攻略があまりにも雑だったのが残念に思ったポイント。ビルドアップに関しては見なかったことにする。
ボールホルダーと奥野(たまに福田)の二人称で三竿の裏を繰り返し狙っていたが、パスコースがひとつしかないので三竿も対応に困った様子は見られない。奥野が顔を出すタイミングは良かったと思うが、スピードで相手を置き去りにするタイプではないのでその形で攻略するのは難しい。奥野が三竿をピン留めして別の誰かが背後を狙うか、逆に要注意人物として扱われていた福田を三竿の近くに配置してから奥野がランニングするなど、ゴール前で優位に立つための一手間が欠けていたように思う。
三人でサイドを崩せそうな場面でも相手にケアされている方を選んで奪われていたので、この試合は選手個々の判断の質も伴っていなかったと言える。この試合に向けたトレーニングで縦への早さが強調されていたのだとしたら、それはプランニングの時点で誤りがあったのかもしれない。
だいぶ厳しい状況に置かれてしまった湘南。ここから何に取り組んで、ピッチ上でその成果を見せられるのか。この試合の相手よりも強いチームたちを倒さなければ遅れを取り戻すことは厳しいわけで、球際やメンタル以外の向上も求めたいところである。
試合結果
J1リーグ第21節
湘南ベルマーレ 0-1 京都サンガ
湘南:なし
京都:原(24')
主審 池内 明彦
タイトル引用:柊マグネタイト feat. 可不/マーシャル・マキシマイザー
京都サンガのコラボライバー、先斗寧が歌った楽曲より引用。これまでのチームならできると期待していたことを、ピッチ上では取り組んですらいなかった試合内容から。筆者が勝手に期待していただけなのかもしれない。