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駅弁

作品に行き詰まると閃きを得る為に、旅に出るのですが…やはり旅の友といえば 駅弁です。
人間の記憶は心地いい時や、痛みを伴う時に強化されますが…駅弁は私の中では旅の醍醐味の1つ…旅を共にした友人に地名を聞かれても思い出せないが駅弁の名前を言われると「ああ…あの美人なスキンヘッドの尼さんがローストコーヒーを出してくれたお寺に行ったときの??」と思い出す…それほど駅弁は私にとって大事なものなのです…
駅弁と言われて皆様が思い浮かべるのは襷をかけてお盆に弁当を乗せて歩く…立ち売りだと思いますが最近はめっきり見なくなりましたね…立ち売りこそ駅弁の面白さだと思うのです…
私がどこで腹が減るか…何を売りにくるか…偶然が引き起こす出会い…
今は蟹と肉が人気のようですが私は出来るだけ質素であったとしても郷土料理が入った駅弁を選びます…
今はネットショップで駅弁を注文できるようになりこっそりと妻に内緒で駅弁を頼むのですが…食べ終わった #弁当箱 を見られては叱られてしまいますので妻がいない隙に洗ってゴミ捨て場に捨てに行くのですが…中には容器が大き過ぎるものもありそういったものは押し入れにこっそり隠しておりました。
ある時、ひっぱりだこ飯という蛸壺の中に駅弁が入ったものを頼んだのですが季節によって中身が変わるため1年に8個ほど頼んでしまって押し入れが蛸壺でいっぱいになってしまいました…
捨てるのももったいないと思いジモティーで貰い手を探したところあっさりと引き取ってくれる方が現れたので蛸壺を風呂敷に担いで歩いていたところ…妻とばったり会ってしまったのです…
中身が何か尋ねられ…これは隠しきれないと白状したところ…妻の顔色が変わり…「少し待っていてください」と家にかけて行きました…
珍しく怒らず…どうしたものかと首を傾げていると風呂敷に6つ蛸壺を持ってまいりました…これも譲ってあげてくださいと…
実はこのひっぱりだこ飯は妻とはじめての旅行で食べた駅弁なのでした…
私は蛸壺が欲しいという奇特な人にタコ壺を13個差し上げたのですが1つだけ蛸壺を持ち帰り玄関に置いておきました。
当時お金のなかった私と妻は貧乏旅行でしたが何か特別なものが食べたいと1000円のひっぱりだこ飯を半分ずつ食べたのでした…
今、1日3食以上ひっぱりだこ飯を食べることもできますが…そうなれば妻とのあの思い出は薄れたかもしれません…裕福になった今も妻が質素倹約に努めるのはあの日の2人の思い出を忘れないようにという願掛けなのかもしれません…

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