誰かのファンになりたくて・・・日本代表GKを追いかけてベルギーに行った女子の話
ジャニーズのファン、アイドルのファン、漫画のキャラクターのファン。
誰かを応援している人・・・。
その人もまた、輝いている・・・ように見えた。
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大学生になって、やっと受験勉強から解放された時。心にぽっかりと穴が空いていました。
周りのみんなは、握手会だの、ライブに行ったり、キャラクターの同人誌を描いたり、楽しそうだったのに。
受験勉強してても、自分の好きなものを忘れていない人がたくさんいたことにビックリし、
私は「本気でだれかを応援したことがない」ということに気がつきました。
身近な人のことってすぐ好きになっちゃうんだけど、アイドルとか、好きになったことがなかったんですよね。
デザイン学科で顧客心理なんかを学んでいた私にとっては、これって、重大な欠陥じゃないかと思ったんです。
「絶対振り向いてくれない誰かに夢中になる」って、よく考えたらすごくカッコいいじゃないですか。
だから、遠い誰かを好きになってみようって思いました。
でも、どんなジャンルの誰のことを好きになればいいやら、よくわからなくて。
なんなら、モテそうな趣味がいいなぁと思いました。
偏見なので許してほしいんですが、普通の男の人って「男性アイドルの追っかけやってます」とか言うと、「うわぁ・・・」って引くじゃないですか。
イキりたがりの女子大生としては、言うとモテなさそうな点で、男性アイドルはなんとなくアウトだったんですね。
そこで、テレビをつけたら、南アフリカで開催されたサッカーW杯が放送されてて・・・。
日本のゴールキーパー、川島永嗣選手の、スーパーセーブに心を奪われたんですよね。もうこれ、2010年の話なのに、今でも鮮明に思い出せます。
相手のシュートが入っちゃうよ〜!頑張って〜!!って、ハラハラしながら見てるの、すごく楽しくて、「あ、私、いま、生きてる・・・!」と感じました。
もともと濃い顔の人が好みだったし、川島選手って外国語もペラペラだし、ガッツもあって。185cmでスタイルもめっちゃよい。その当時は、毎日のように写メ付きのブログを更新していて、情報供給も多め・・・。
そして、ゴールキーパーって渋いですよね。
やっぱ目立つのって、シュートを打つ本田とか香川みたいな人です。
それと、さわやかイケメン枠の内田篤人。
当時のサッカー好きの男子は「どうせ、にわかサッカー女子は、みんなウッチー(内田篤人)が好きなんだろ」ってボヤいていました。
そこで川島永嗣ですよ。
吼えながらゴールを守る彼。素敵。圧倒的守護神。
サッカー好きのイケメンなら「おっ?この女、わかってんな?」って思うんじゃないかと。
(その当時、サッカー女子が「わかってんな」と思われ、かつミーハーと思われない最適解は、おそらく岡崎だったんですけどね・・・)
そして、にわかサッカー女子になった私は、試合があるたびサッカーを見るようになり、ついには日本代表ユニフォームを着て、スポーツバーまで繰り出すオタクになっていきました。
サッカーを語る男子に「うんうん、メッシのスーパープレイやばかったよね、ネイマールもいいよね」と、相槌がうてる女子に大変身!
日本代表のゴールが決まると、「おおおおおお〜〜〜!!!」ってみんなで盛り上がるのもすごく楽しかったんです。
サッカー、川島永嗣のファンってだけで、こんな楽しい場にいられるんですよね。
ファンになるって、すごい!たのしい!
って思いました。なにかに所属するって楽しいですね。
(サッカーのルール、オフサイドすらよくわかっていないんですけど)
大学受験までは、自分のことで精一杯で、自分しか見えていなくて、誰かを応援する心の余裕がなかったんです。
でも大学で鬱々とした生活を送り、自分が停滞しているとき、人を応援するのって、なんて心地がいいんでしょうね。
リアルでサッカーをみたことがない
北陸民・・・田舎民あるあるなんですけどね・・・
サッカー日本代表が北陸で試合することってないんですよ。
私は、スポーツバーに何度も通っていながら、実際の日本代表のサッカーをみたことがなかったんですね。
そんなとき、スポーツバーで知り合った男子が
「静岡まで、キリンカップ見にいく?」
と誘ってくれました。
たしか、日本代表VSウズベキスタンだったと思います。
めちゃくちゃ遠いし、混雑してるし、しかも4-0とか?で日本は楽勝に勝ってしまいました。
「楽勝で勝ったならいいじゃん、負けるよりは」
と言われましたが、ちがう。
「楽勝」=「ゴールキーパーの川島が活躍しない」
ってことなんですね。
私、なにしに見に行ったのか・・・。
スーパーセーブなんてひとつもありませんでした。ちょっとボールをキャッチしたよね、みたいなのはあったけど。
しかも、気合の入った応援席チームとちがって、普通の観客席は一体感がありませんでした。点数がはいっても「わー」で終了。みたいな。
気合の入ったところは、応援旗とか、応援歌とか、楽器まで持ち込んでて、全然ちがう。
田舎のスポーツバーでイキっていた私には衝撃でした。上には上がいる。
わたし、その人たちに比べたら、ぜんぜんサッカーファンじゃなかった。
ひとりベルギーに行って、川島に会いにいくことにした
その当時、AKBなんかで「会いに行けるアイドル」っていうの、今でもすごく流行ってますが・・・。
そこで、「CD何枚買った」とかでマウンティングし、「愛の大きさ」を証明するような風潮ってありましたよね。
やっぱり、好きな人には会いにいくべきでは?
と思ったんです。それが大学4年のころです。
その当時、川島選手はベルギーのスタンダール・リエージュっていうチームにいて、リエージュの練習場に行けば、練習風景も見せてもらえるという噂をキャッチしました。
しかし私にはベルギーにいっしょに行ってくれるほど川島熱量の高い友人なんていなかったので、大学の「卒業旅行」と題して、ひとりで行ってくることにしました。
ぼっち卒業旅行ってウケるでしょう。
せっかく行くので、フランスのパリ➡️ベルギーのリエージュで川島の試合➡︎ベルギー周遊➡︎リエージュに戻って、川島選手の練習風景を眺める➡️パリに帰って、日本に帰宅 ってプランを立てました。たしか10日ぐらい居たはず。
初めての追っかけ体験
ベルギーのリエージュって英語は通じず、フランス語とオランダ語しか通じないんです。
タクシーのおじさんに「カワシマ!サッカー!」って言ってたら「OK!」って言われて、スタンダール・リエージュの練習場につれてってもらえました。
聞いたら、私のほかにも何人か日本人女子が練習場まで追っかけにきてるようで、タクシーのおじさんも慣れてたようです。
そして、ぼうっとコートの中で、シュートを止める練習をしている川島選手を眺めて、ぼうっとしてたら練習が終わって、練習場の扉が開いて、
川島選手が外に出てきたんですね!そして私の方を見た!
そして、THE・日本人っぽい私を見て、
「こんなところまで来てくれてありがとう!」
と言って、握手してくれました。さわやか・・・かっこいい・・・。
そして、ツーショットの写真を撮ってくれました。
サインもくれました。
せっかく会えたのに、緊張して顔を直視できませんでした。イケメンすぎて。
最後には「気をつけて帰ってね!」って言ってくれました。はぁぁやさしい。
それだけで、はるばる旅行しにきたかいがあったなぁ、と思いました。
なかなか、海外まで追っかけてくる人って、いないと思うんだよね。
「ファンとして自慢できる最大限のことをやってみた」という点で、私は、すごーーーーく満足できました。
だって私が、「サッカー好き!」ってサッカー男子に言って、
(ああ、どうせ、にわかサッカー女子か・・・)って思われるところを
「ベルギーまで、試合見にいったんだよ★」って言ったら
「えええええ!!????なにそれkwsk!!!!」ってサッカー男子も大興奮ですよ。たぶん。おそらくこれで、「にわか〜〜」ってナメてくる人はいない。なんか勝った気分。ふふふ。
そして、AKBのファンが、CD何百枚買っちゃうみたいな「愛の証明」が、ベルギーに行くことで、それが証明できた気がしたんですよね。
川島永嗣の結婚報告
私ね、川島選手、結婚しないと思ってたんです。
なんなら、ウッチーこと内田篤人と結婚してほしいって思ってたぐらい。(ごめんなさい)
まだね、日本人の女子アナやアイドルなら「くやしい〜〜〜!!!」ってなるところですが、それが、川島選手の結婚相手はコロンビア美女でした。
もうね、美しすぎるのよ。かなわない。もうね、スットコドッコイみたいな私なんて及ばないし、なんか、・・・そう・・・悲しかったんですよね・・・。人種すらちがう・・・。日本人女子なんてアウトオブ眼中・・・。
そのニュースをみたとき、偶然にも、私は、気の進まない合コンにいる最中。
ダルいなと思ってTwitterをみたら、そのニュースが流れ込んできたんです。
「川島永嗣 結婚!」と。
その直後、合コンをしていたカフェで号泣し、ゲロ吐きまくり、泥酔し、気づけば、道路のはじで寝っ転がっていました。
合コンにきていた男子がタクシーに押し込んでくれたようなのですが、あまり覚えていません。
30万ほどかけてベルギーにいって、その半年後ぐらいに川島永嗣が結婚。
「わたしは何しに行ったのか」
いや、1回ベルギーに行った程度で、別に付き合えるとか、そんなこと思ってたわけじゃないんです。そうじゃないけど。
***
大学での4年間、川島永嗣を好きになって、サッカーが好きになって、楽しいことがたくさんありました。川島選手の活躍はわたしの生きがいだったし。
でも、ひとつの時代が終わったような喪失感がありました。
・・・そして、私が4年前に考えた、「だれかのファンになりたい」という当初の目的を思い出したんです。
だれかのファンになること・・・
それは交際報道や、結婚のニュースを受け止めることでもあると思うんですよね。
そりゃあ、人間だもん・・・誰かと付き合うし、結婚だってするよね・・・。この時間の流れを受け止めてこその、ファン。
この、ありがちな、一連の流れを体験することができたんですね。
私は、「だれかのファンになりたい」という目標に「達成!」マークをつけることにしました。
それから、私はあまりサッカーを見ていないし、ふつうの、にわかサッカー女子に戻りました。
アイドルとか、遠い誰かを好きになったり応援するのって楽しいけけど、
こんな痛みを伴うこともあるのだなぁと感じたから。
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それから、3年ほど経ち・・・私もなんとか結婚し、「推しが突然結婚した」という、ショッキングな出来事にも「まぁそういうこともあるよね」という区切りがついたんですよね。
そしたら、また、遠い誰かを好きになったり、応援したいなぁという気持ちがフツフツと湧いてきました。
これを最後まで読んでくれた、あなたの推しを教えてほしいな。
好きなものが、また欲しくなってきたんですよね。懲りもせず。