中国のブラック労働996改善によりバイトダンスは月収17%ダウン。中国IT企業の今と未来
中国のインターネット企業では996(朝9時から夜9時まで、月曜日から土曜日まで週6勤務の激務の略称)が基本でしたが、ここ最近の動きではインターネット大手が次々と週6勤務、または隔週での週6勤務だったものが週5勤務に変わりました。
これを見た皆さんは「ホワイト化が進んで良い話」と思うかもしれませんが、決してそんな単純ではありません。最初に動きをみせたtiktokの運営社であるバイトダンスでは、新制度になってから最初の給料日を迎え、社員の悲鳴が拡散されました。
↑「新制度でバイトダンスみんな約17%の月給減少」についての議論がZhihu話題ランキングのトップ1に。労働時間が減少したことでの給料減はなぜ起きるのでしょうか。
中国大手IT企業などでは、多くの企業では入職時に年俸で交渉してボーナスや残業代、手当を除いて基本給が計算されてます。今までは土曜日の出勤は中国の労働法に準じて基本給の2倍の給料を出してました。この計算によると、週5出勤は例えば隔週での週6出勤に比べ、働く日数は26日間分から22日間分に減少することになります。よって、全体的に17%の減俸となります。
この事態に文句や不満を言う人が続出。退職する人や、転職を考える人が相当増えたそうです。みんなブラック企業と揶揄してたけど、結局金の方が大事な人もいる身も蓋もない話。
一方、8月26日に中国の最高裁が10件の過剰残業の裁判例を開示し、人力資源と社会保障部(省のこと)と共同で「996は重度の違法行為」だと明記しました。
↑実際の判例についての説明。デリバリー企業での問題が取り上げられ、それによると配達のお兄さんの残業時間が労働法の残業時間上限を超えたことからそれ以上の残業を拒否しました。すると配達会社が「残業を拒否したお兄さんが企業の996規定に違反した」という理由で解雇しました。
もはや無茶苦茶です。この判決では、最高裁と人社部が996規定が法律違反だから不当解雇で賠償金の支払いを命じています。
また、最高裁の裁判官が取材を受けたときにも「労働者が強制的な違法残業にノーを言うべき、それに違法規定や違法約束でトラブルがあった場合、仲裁すべきだ」と主張しました。
中国日報の社説では「労働者が各々ノーを言うよりも、監督部門による積極的な介入をすべきです。違法企業への取り締まりをしなければ、労働者が自主残業されることは到底回避できない」と論じました。
ボクのnoteでは以前にも数回中国の労働環境や問題についてを書いてきました。日本の皆さんにも有名なジャックマーは「996は果報だ」という発言をしていたと紹介しました↓
この996労働環境の改善と給料が減少の話はSNSでも大変な話題になっています。最近中国の人気talk show番組では下記のようなコントもありました。
↑「過剰残業させるのに果報だという企業主がいる。なら僕も出勤しても仕事はしない。文句も言わせない。これは職場勧進です。僕を採用することはあなたに遭うべき遭難です(仏教的な言いまわし)。」
ブラック労働が基本となっていることや、進化が速いインターネット企業の中での競争の激しさは社会問題となっていました。最近の996改善の動きはポジティブかと思いますが、一方で若い人の中には残業してでもバリバリ稼ぐことを望んでいた人も一定数います。給料を突然20%ほど失うというのは辛いですよね。
一方ですでにこうした価値観の企業もありました。豆瓣というサービスは知っていますか?かなりユーザー数も多いWebプラットフォームで、ホワイト企業として有名です。(関係者の人いたらごめんね)しょっちゅうシステムエラーが出ることでも有名ですが、みんな「残業してるエンジニアいないからしょうがないね」という社会認知になっています。
IT各社みんなが日本の銀行の営業時間みたいなサービスを提供したら文句ないのかな。でも便利なことが当たり前と感じるユーザー、常に成長を望む企業、高い給料に慣れた従業員、が今更価値観を変えられるのか。社会の圧力により環境が変わっていくなかで、みんながどう変化していくのか今後も注目していきます。
(参考資料)
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