フィギュアスケートの中国女子選手がネット民から大批判炎上となった件の裏話
日本の皆さんは北京五輪の観戦は楽しんでますか?中国は今週から春節が明けてみんな仕事に戻りますが、昼間に観戦し辛いので五輪連休が欲しいと言ってます。
オリンピックで一つnoteで紹介したいと思った話題はフィギュアスケート女子選手にネット民から批判やクレームが殺到した件。
結果中国は団体で5位。朱易選手へのバッシングがすごく、関連する投稿が億超え、規制まで入ったとか入らなかったといった事件となりました。
Yahooコメントなども見ましたが、日本の皆さんが思って書き込んでる内容は理解不足と思いました。CNNなどでも報道されたこの記事には、記事に書かれてない裏話があります。その話と中国ネット民の声を紹介したいと思います(決してみんながこう思ってる訳ではないという前提で読んでいただければありがたいです)。
フィギュアスケートの団体戦の女子個人に出場した朱選手は、今回の大会で中国女子フィギュア個人戦に参戦する唯一の選手です。彼女は中国人の両親でアメリカ生まれで育ちもアメリカ。中国が国として良い選手を生み出すための中国帰化プロジェクトにて中国国籍に帰化しました。
(ちなみに中国籍に帰化することはかなり大変だったりします。これについてはまた別回で紹介したいと思います)
2022年五輪に向かって帰化した選手には最善のトレーニングサポートが提供されていて、彼女の場合は中国のトップクラスの女子フィギュアスケーターの陳露と、かつて羽生選手のコーチを担当したブライアン・オーサー氏による指導、またプログラムの設計や衣装にもお金かかってると言われています。
その彼女が出場した団体戦の成績は以下の通りです。
↑団体戦の女子ショートでは47.03点
↑団体戦の女子フリーでは91.41点。
どちらもダントツ最下位でした。。
いい成績の見込みがあるから帰化してもらって大金をかけて育てられていたというのが中国の一般的な認識でした。しかし彼女の場合、なかなか良い成績が出なかったです。
成績が良くないことは仕方ないことも理解されます。頑張った結果成績が期待通りじゃなくても仕方がない、選手とスポーツ精神を重視する環境で数年前とはかなり変わりました(昔話で恐縮ですが2008年の「劉翔の試合辞退による罵倒の嵐」の状況などと比べて)。
さらにフィギアスケートに関しては、羽生選手が中国でも絶大的な人気を持っていると日本のメディアでも多数報道されているように、ここ数年中国ではトップクラスの選手が少ないなか、ロシアや日本選手への関心も高い人気のあるスポーツで、観戦スキルもかなりある方だと思います。中国と海外トップ選手とのレベルには相当な差があることもしっかり認識されているので、単に成績が悪いだけでそれほど非難されるわけではありません。
ではなぜ中国のネット民は朱選手に対して不満が爆発していたでしょう。これはいくつかの原因にまとめられます。
■五輪へのコネ出場疑惑
朱選手が帰化されたばかりの時、メディアに出されたプレス文章には、「全米青年組優勝で、父の帰国で帰化。中国に金メダル取ってあげたい」という記述がよくありました。
記事を見る限り、本人が言ったかどうかわかりませんが「取ってあげたい」という言葉は妙に上から目線でした。
この朱選手の父親の「朱松純」はコンピュータービジョンや人工知能ジャンルで非常に有名な科学者で、アメリカではすでにテニュア(終身教授)であり大規模なラボを持っています。
↑朱選手の父親のwikipedia
現在は帰国して中国のトップ2大学の北京大学と清華大学に就任し、同時に両大学で講義をしていて研究室を持っています。また、北京大学の人工知能学院の院長も担当しています。
中国ネット民のコメント曰く、彼の帰国で(彼自身の能力およびその教え子の成果)中国の人工知能技術の発達には20年間進歩したと言われています。そして風の噂では、朱氐の帰国は「娘の五輪出場」が唯一の条件だったと言われています。
もしも成績が良ければ疑いの声もなかったでしょうが、朱選手が帰化してからあまりにも期待に応えられずにいて、疑問を持ったフィギュアスケートファンが熱心に調査しました。すると調べたら全米優勝と言っても16歳の時に青少年組で10歳〜13歳中心の子と競技したもので、その実力は全く将来有望だとは言い切れなかったとのこと。
また、彼女の北京五輪への出場枠は同じチーム内の陳虹伊さん(一回引退してまた出直した別の選手)が大学受験を2年間延期して世界大会で頑張ったのを差し置いてのものでした。
フィギュアの大会ではよくある話だし、一回引退した選手。最初は若手の育成のために朱選手に出てもらったのかと思いきや、運命的に2人の女の子は生年月日が全く同じでした。競技レベルもそんなに大差ないと言われています。
1人が科学者の両親でアメリカに移住して生まれた大事な一人娘で、いいトレーニングに恵まれてコネで五輪出場。
1人は北京の一般市民でトップクラスのコーチもサポートもない環境で勉強とフィギュアを両立しながら、大会出場のため大学受験を2年間も伸ばして頑張って試合に出た結果、五輪の出番なし。
いわゆる一般市民目線では、日常生活では多少コネでアンフェアの経験があるものでしょう。朱選手のコネ話はどこまで本当なのかは検証できませんが、その不公平に共感するネット民がとにかく多いです。若くて経験を積むために出てもらってもいいですが、生年月日も全く一緒な陳選手の競技人生にはあまりにも不公平でみんなここに不満爆発でした。
■スポーツ精神のなさ
もちろんこれだけではないです。前にも話したよう、中国国内ではそれほど「成績は全て」ではないです。その中に朱選手に不満噴出のもう一つの原因もあります。
彼女からあまりにもスポーツ精神が伝わってこなかったことも話題になりました。大変な種目で練習や怪我で大変な思いもしたでしょうが、試合状態から見て全く戦おうという雰囲気がなくて批判が殺到しました。
「転んでもジャンプにチャレンジ」というのはフィギュアスケートの試合では一般的な価値観であるかどうかはわかりませんが、中国のネット民の書き込みでは、朱選手はジャンプの失敗に怯える気持ちが伝わっていたとのこと。過去にも一つのプログラムで7つのジャンプで4個が空振りでしたし、今回も一回転んだらその後の競技では挽回しようともできなくて結局ミスの連続でした。まるでコーチや親にやれと言われて仕方がなく出た感じという評価。
試合への意気込み感じられない、バリバリの中国人両親を持ってるのにあまり中国語が話せない、中国文化への理解や配慮も足りない、この出場で五輪が終ったらすぐにアメリカに戻ってスポーツ推薦でいい大学に入れるではとの辛口にコメントされています。
「大人の事情でコネのお嬢様の遊びに付き合うことがそもそも仕方ありませんが、それを団体戦ではなく、個人戦にしてほしいとか、成績がよくないのにネット民にダメ出しされたらすぐにネットいじめ扱いでそれこそメンタルが弱すぎる」などの不満も多数ありました。
■運動管理体制への不満
彼女への不満もさることながら、選手の選抜体制にも不満続出でした。今までのフィギュア選抜体制では、チーム内の五輪選抜戦も、映像があって細かく成績が出るはずですが今回だけはお知らせ並みの文章だけでした。
↑チーム内の選抜戦では、5試合トータルで朱が陳より7.96点が多いという。みんなが弱い中、選ばれて、しかも朱選手が自己ベスト更新するほどの点数だったので、フェアであればその素晴らしい滑りを見せてくださいというネット民の声も多かったです。
この結果は五輪のかなり前に発表されたもので熱心なファンたちからは相当前から映像公開を求められていましたが、今でも国家のフィギュアスケートチームにガン無視されてます。
面白いことに、中国とアメリカのハーフであるもう1人の帰化選手である「谷爱凌」さんは、国民好感度が特に高くて、大事な試合前日も深夜までネットサーフィンしていて、海外メディアが朱選手のいじめに関する記事に不満を語りました。
この2人の帰化選手で感じた中国人の温度差もなかなか興味深いです。またの機会に書きたいと思います。
(参考資料)
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