♯6 耳管開放症という障害。

中耳炎という大きな括り。

二軒目に行った病院はバスで15分くらい、今では再開発地区になり賑わいを見せているが当時はまだ何もない比較的静かな駅。
せいぜい日用品の買い出しをするくらいの所だった。 

駅前でバスを降りてさらに歩いて10分。
一軒目に行った病院よりも小さく、とにかく狭かった。

実はこの病院は今も存在しているが相変わらずの人の量だ。
とにかく狭いのもあり、まるで有名なラーメン屋のように外にずらっと並んでいる。
開院前の時間からバーゲンセール状態。
入る前から分かる人気ぶり。

私が初めて行ったこの日もすごい人だったらしい。
何時間も待った。沢山の人と、何時間も。
やっと診察、私の番。

長髪がトレードマークの派手な女の先生、この時の事は覚えていないが物心がついた時から最後に行った日までの数年間一切見た目の変わらない年齢不詳な女医さんだった。
若いのかも、歳がいってるのかも不詳な人だった。
明るく声の大きい、人当たりのいい医者。
失礼を承知ですごくわかりやすく言うならばスナックが似合うようなそんな印象。
だからこその接しやすい雰囲気も相まっての人気ぶりなのだろう。

『風邪からくる中耳炎だね』

そもそも中耳炎という病気は一般的にどこまで知られているのだろう。
大体の人は子供がよくなる耳が痛くて熱が出るやつ、風邪の延長線。

では言葉を変えて、急性中耳炎と滲出性中耳炎の違いはなんだろう。
読んで字の如くいきなりなるのと、滲み出てくるもの?
違う、蓋を開ければだいぶ違う。

そもそも耳は大きく分けて三つのグループ分けをされている。
自分で綿棒などを使い触れることができる外耳。
鼓膜を含めた奥にある小さい部屋を中耳。
そして耳と言えばの独特な形でお馴染みなカタツムリが内耳。

外耳、中耳、内耳。
この三つの中間にある中耳の炎症がそのままの病名で中耳炎。

鼓膜の奥に膿が溜まり外側に外側にと圧をかけて出ようと鼓膜が膨らむのが急性中耳炎。
これが痛みの原因。
子供の耳から膿が出てきた、鼓膜を切開することになった。
耳が痛いと泣いている、の主な原因である中耳炎の種類は大体がこの中耳炎だろう。

風邪をひいて鼻を沢山啜った。
菌が中耳の方に感染したなど。

とにかく子供が耳が痛いと泣くのは大体がこれに該当するケースが多く、また何度も繰り返し発症してしまう厄介な存在だ。

一方滲出性中耳炎は全く逆の鼓膜が引っ込んでしまう症状。
これは大人になってからも実は身近で新幹線に乗ってトンネルに入った時、飛行機の離着時。グッと圧がかかっている状態を経験したことがあるのではないでしょうか。
簡単に想像してもらうならばこれの酷いバージョンだと思っていただきたい。

耳鼻科だとよくお水と説明するが、鼓膜の中に水が溜まりそれが原因で圧力が下がってしまっている。
これは本人も親も気付きにくい、何しろ痛みが出にくく耳だれや発熱もない。
耳の痛みが消えたと子供が言ったからさぁもう大丈夫だなんて思っていたら実は滲出性中耳炎に移行していたなんて珍しくない。
本当によくあるケースだ。

鼓膜というのはゴムのようなもの。
張りがあり、空気が循環され、強度のある膜。

それが引っ込んでしまったり、水に晒されたり、はたまた圧がかかりすぎて鼓膜の奥にある骨とくっついてしまう癒着性中耳炎になったり鼓膜に穴が開き塞がらない慢性中耳炎もある。

中耳炎と言っても一つじゃない。
もし今子供が、自身が、中耳炎と言われているのであれば具体的な事を聞いたほうがいい。
そして必ず最後までしっかりと通う。

私が経験してきた中で思う良い医者というのは、症状が落ち着いてきたとしてもお薬を飲み終わったら必ず見せにきてくださいと言う医者だと思っている。

症状なんてものは薬で落ち着くんだ。
でもそれは治ったわけじゃない。
治しに行くのが病院なんだ。

もう大丈夫ですねと医者からのお墨付きをもらうまでは自分の判断で通院をやめないでいただきたい。

そしてこれは私自身が何年もかけて自分が患ったからこその培った知識であり、あの日に初めましてで会った女医さんが教えてくれた知識ではない。

女医が言ったのはこの子は中耳炎であること、そして薬で様子をみていくこと。


症状が無くなったらもう来なくて大丈夫と言ったこと。




注釈

登場人物の話し方、容姿、性別。
登場する地域、特徴、説明など関係者やお相手が特定される危険性のあるもの全てにフェイクを入れております。
上記以外の私自身が体験したことや実際に言われたことなどは全て偽りなしの話になります。

どうぞご了承ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?