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星屑
feat.初音ミク 版
https://www.youtube.com/watch?v=LNsx5k9VWlc&t=0s
胡桃のあ様 歌唱版
https://www.youtube.com/watch?v=c4UEBzWfqIo
こう並べるとどっちのサムネも超かわいい…
本当に寺田さまのイラストは素晴らしすぎる…
野良さまの動画も美しすぎる…
動画を観返すたびにいつもウルっときます。
DYES IWASAKI先生のボーカロイドオリジナル曲第4弾「スターチップフラペチーノ」に作詞でお邪魔させていただきました!自分にとってはエレクトロスウィングというジャンルのトラックに合わせて作詞させてもらうのは初のことだったので、めちゃめちゃ緊張しました!
ちなみにメロディは全部DYES先生作曲です!DYES先生の書いたメロに合わせて、つまりいわゆる「メロ先(さき)」で歌詞を添わせていく形での制作でした。ちょっとだけ言葉がハミ出てしまった部分は少しだけメロを変えてもらったりしています。
そもそも曲がいい!メロがいい!ので、歌詞どうこうで頭をヒネる前からすでに勝ち確でした!DYES先生ありがと~~~!
もし歌詞の内容を考察してくださったり、疑問をもってくださったりした方のために、少しだけ補足(蛇足)をさせていただきますね。
まずはクイズを一題。
この曲の「テーマ」と「モチーフ」は何でしょう?
ちなみに私の定義では、「テーマ」はその曲が持つ「最も重要なメッセージ部分」みたいな感じで、「モチーフ」は「それを平叙文ではなく詩的な響きにするために用いる題材」みたいな感じです。(特に科学的に明確な区分のある用法ではありません)
テーマは伝えたい内容、
モチーフは描きたい対象、
と短く言ってもいいかも。
さて問題!この曲のテーマとモチーフは???
分かった人はそのまま下へお進みください。
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いちおう作詞者が想定した答案は…
テーマ「アーティストの生命(の儚さ)」
モチーフは「星屑」「フラペチーノ」
です。
だいたい合ってた?
ならヨシ!よくできました!!!!!
DYES先生に初めて「テーマとかどうしましょう?」とお話したら「切ない感じでお願いします!」という話になり、例えば「星とか夜空とかだと切なくて良いですね」的なモチーフのヒントをもらえました。
そこで兼ねてより自分でも詩にしてみたかった「アーティストとしての生命(の儚さ)」のようなものを、星の光になぞらえてみよう、という発想が生まれました。
いや、何曲星の話すんねん!!!!! と(by 雨天決行)
そう言いつつもRBB 3rdの「星弦定理」で素敵な歌詞を書いてくれてありがとう雨天!お察しの通り、俺は「切なさ」がテーマの根幹にある場合、ついつい「星」の話をしがちです!なんでだろうね!きっと手の届かないところにあるからでしょうね!
「星屑」はカタカナでは「スターダスト」と当てられることが多いように思います。いちおう「星屑」の辞書的な定義としてはまず
1 ちらばって光るたくさんの小さい星。無数の星。
とあります。また英語の stardust は 「宇宙塵」(cosmic dust) のことを指しますので、これは
2 宇宙空間に分布する1mm以下の固体の粒子。
のような意味になります。
しかし「星屑」も「スターダスト」も、なんかどちらもイメージと少し違うな… なんて言えばいいんだろう… 「星が砕け散って最後にばら撒くキラキラした欠片のようなもの」みたいな感じがいいな…
と思ってこれを本曲では「スターチップ」と名付けました。チョコチップの星版、みたいな感じです。
それを踏まえて本編の歌詞に参ります。
>誰か言ってたっけ
>夜明け前が一番暗いって
>いつか輝くって
>灰被り姫みたいなFAIRY TALE
「灰被り姫」は童話「シンデレラ」のことです。いつか私だってあの輝かしい舞台に立ってやる、と夢を見続けながら地道に音楽制作の仕事をこなしていく少女が主人公となります。
「夜明け前が一番暗い」は確かによく言われる台詞かもしれませんね。希望が訪れる前の絶望が一番深い、だからこそ今このしんどさを切り抜けるために頑張ろうね、みたいなポジティブな文脈で使われることが多い言葉です。しかし…
>実際 夜が明けて
>私みたいな六等星なんて
>見つけらんなくって
>灰被ってるまんまのEVERY DAY
実際に夜が明けてしまうと、太陽みたいな恒星(超ギラギラに輝いているビッグアーティストみたいな人)ならともかく、私みたいな駆け出し新人みたいな小さな星は、昼間の明かりで全然見えなくなる!!!!!! 結局日の目を浴びない!!!!! という皮肉な結果に。
>Twinkle Star 賞味期限
>過ぎちゃったらFall again
>大気圏 燃え残った
>スターチップ トッピング
一度きらめく星の舞台の隅っこに上がった者ですら、いつか飽きられてしまって時が過ぎれば「賞味期限」が来て終わり。重力に逆らえずにまた地上に落ちてくる。地球の大気圏に突入し高温で発火。そこで人生最後の炎を煌めかせて、その後に燃え残った残りカスみたいなものが、今作における「スターチップ」の暗喩です。
そのスターチップを、少女の目の前に今あるシェイクまたはフラペチーノにトッピングする。名もなきアーティストの最後の煌めきは一体どんな味か。
>叶わなかった夢だけ
>集めてHollaシェイクして
>Breakin Down
>諦めきれない煌めき
>(Gotta make it now)
スターチップとは言い換えると、叶わなかった夢の欠片のようなもの。アーティストたちが夢見た大舞台、そこに立ち続けることができずに散ってしまったそんな彼/彼女らの夢の欠片を、集めて、シェイクして、飲み干してあげたい。主人公の少女はサビ部分において、そういう女神みたいな存在になっています。
>「敵わないって知ってたって
>構わずに突き進むべきだ」
>散った後の星屑も
>甘いホイップの上 綺麗に映える
音楽とは本来、他人と勝ち負けを競うものではない。敵なんて存在しない。憧れの存在には届かないと気づいたとしても、自分が表現したいものを表現し続けるべきだ。もしあなたが作りたいものを作り続けて、それが結果としてあまり成功しなかったとしても、私(女神的な存在と化した主人公)が全部飲み干してあげるし、なんならこのフラペチーノの上にトッピングして、綺麗に映えさせてあげよう。
>「星」工場 生産ライン
>毎日が才能の生誕祭
>そこに乗せらんない
>燻って唸ってるDAY AND NIGHT
さて、サビでの浮遊感(夢想)ののちに、舞台はまた地上(現実)に戻ります。
世界では今日も次々と次の「スター」を発掘・生産する作業が進められている。いかに売れるか?いかに売り出すか?演者側とプロモーター側の思惑が合致し、機械的に才能が演出されていく。それが正しく回る芸能界。
しかし主人公の少女は、うまくその流れに乗ることができない。私の作りたいものは、人々が受け取りたいものと合致していないのか?私が悪いのか?なぜみんな分かってくれないんだ。そんな風に悩んで、くすぶって日々を過ごしています。
>最初っから計算外
>その「売れ線」たちとは正反対
>閉じこもる御手洗い
>斜に構えても泣いてもSTAY ALIVE
「あのさあ、●●ちゃん、もっとこういう風な曲作った方がいいよ?でないと売れないからさ」などと視聴者さんやプロデューサさんに指示される。違う、私が目指したのはそんなのじゃない… という苦悩。「ああ、こいつはもう数字を出すのは無理だな。売り出せない」次第に見限られていく主人公が辛くなってトイレの個室に逃避する。
ここの「閉じこもる御手洗い(=トイレ)」という歌詞に合わせて、包帯のようにトイレットペーパーで縛られていく… という雰囲気の描写を動画で入れてもらえたことが、とても突き刺さりました… すごすぎる…
歌詞を解釈して頂いて、歌詞内には明言されていない新たなモチーフを取り入れて作画して頂くことで、「御手洗い」の言葉がますます恐怖や圧迫感を引き立てられるものになったと思います。感謝です。
>Twinkle Star 廃棄処分
>混ざっちゃえば ほら一緒
>デブリなんて呼ばせないわ
>スターチップ トッピング
アーティストにはみな寿命がある。星たちのステージで輝くあの人にもいつかは賞味期限が来る。廃棄処分されてこのままチップと化す私と、いつか寿命を迎え地上に墜ちて砕け散るあなたと、どちらもいっそ混ざりあってしまえば誰にも見分けがつかないのでは?
だから私たちの命を「星クズ」つまりゴミだとか、宇宙ゴミ(スペースデブリ)だなんて決して呼ばせない。そういった主人公の意志の表れです。
>何千回 何千万回 ナンセンス
>(掻き鳴らせ)
この部分はふたつの意味を込めており、
(1)「私の再生数は1000なのにあの人の再生数は1000万、だなんて、そんなの比べたって意味ないよ」
(2)「何千万回でも、ずっと自分の音色をかき鳴らして歌い奏で続ける、そこに意味なんてないよ」
どちらにも解釈できるようになってます。
>「人」の「夢」と書いて
>一生懸命 お会計
>アーティスト クリエイター どっち?
いよいよ物語の核心部分です。
人の夢(にんべんに夢)と書いて「儚い」(はかない)と読みます。もっともっと有名になって、誰からも愛されるアーティストになりたいという私の夢は、所詮は儚いもの、叶わないものだったのだろうか。
周りの誰もが「●●再生されれば●●円の収益が入って…」とお金勘定の話ばかり。私も生きていくために必死で、そうせざるを得ない。私は自分自身の存在を表現するアーティストになりたくて生きていたはず。いつの間にか、生きるために何かを表現するようになっていた?
ここの部分、「クリエイター」と呼ばれる人々を貶めるような意図は決してございません。この2者を厳密に定義づけるのは難しいでしょうが、あくまでこの曲内での話でいえば…
アーティスト … 自己の存在や信念を創作物に込めて表現する技術(Art)をもつ人。それがお金になるかどうかは無関係。
クリエイター … 企業や個人からの依頼を受けて創作しお金に換えることを生業とする人。自己の存在や信念とは無関係。
という感じでしょうか。だとすると、ひょっとしたら、多くのクリエイターさんたちは、最初はアーティストとして出発したことがあるのかもしれませんね。最初は趣味で発表していた創作物が、次第に有名になり需要が高まり、利益が得られ、生活の糧となっていく。それは本当に素晴らしく尊いことです。
「私はアーティストだ。自分の表現したいものだけを表現する。利益にならなくても知らん」と言い続けることは、一見すると覚悟のある孤高の芸術家っぽくて格好いいのですが、それだけでは生活が成り立ちません。
あえて残酷な表現で問い詰めるなら… 「自分が売れない」のは「自分の創作物の質が不十分である」ことの証拠かもしれないのに、それを「自分は孤高の表現者だ」「分かる人にだけ分かればいい」などと言い訳をして現実逃避していないか?
鋭い刃物のような現実的な問いを主人公が突きつけられるシーンです。
>Whatever, 我々は
>感動贈るお仕事
Whatever(ここでは「いずれにせよ」といった意味です)我々はアーティストであろうとクリエイターであろうと、感動を作り出すことを生業にすることには違いはないはず。と反論します。
>なんと狂おしいほど
>擦り減る ほうき星のよう
>見てて頂戴ね?
アーティストであることを選ぶ私の、おそらく寿命は長くない。
魂を削り、自分自身をすり減らしながら創作することでしか、自分の納得いくものは作れない。大量生産もできない。一般大衆に受け入れるための音楽など、これからもきっと作れない。一曲一曲が、魂を消費しながら燃え尽きていく過程なのだと思う。大気圏に突入して流星(ほうき星)のように綺麗な感動を見せよう。だからどうか最後の一曲まで、私が燃え尽きる姿を見ていてほしい。
このあたりの描写を話せば長くなりますが、以前の拙曲「ミルキ流星群」(https://www.youtube.com/watch?v=RybezDLEB-g)という曲にも一部、共通するモチーフが使われています。
>叶わなかった夢だって
>いつまでも残る 衛星軌道
>四分儀・八分儀のBoogie
「いつまでも残る」という部分は、アップロードされた後はWeb上に残り続ける既発表楽曲のことをイメージしています。例えばYouTubeの動画とかね。わざわざ消さない限りはずっと残り続けます。
自分の存在を賭して作り上げた楽曲が、もし夢の実現には繋がらなかったとしても、それを目指した軌跡・痕跡として残り続ける。夜空を見上げてもらえれば、当時の星の軌道だけは観測できる。そういった内容です。
それを観測するための機材が「四分儀(しぶんぎ)」や「八分儀(はちぶんぎ)」。これらは象限儀と呼ばれる、地平線から特定の天体までの高度を測定するための分度器みたいなやつです(実物を使ったことないし使い方も知らんけれど)
そこに音楽の四分音符・八分音符のニュアンスを重ねています。それを汲み取っていただいて、動画ではレコードを作画してもらっています!!!!!!! やばすぎる!なんでそんなところに気付けるんですか!本当にやばい!ここも本当に心から感動しました。
>(Just Swinging-by)
Electro Swingという音楽ジャンルの「スウィング」と、天体重力推進を用いた航法「スイングバイ(Swing-by)」を掛けています。これは惑星や衛星の重力を借りて推進力を得る(運動ベクトルを変更する)という技術です。
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これを用いてイオンエンジンの推力を補い、遥か遠くの小惑星にタッチダウンしたのち、再び地球の大気圏まで戻ってきて、流れ星のように燃え尽きた小惑星探査機のことを、もしも知っている人がいたら嬉しいです。
>私もじきにゆくから
>忘れずに待っててねマイステラ
>星空のステージで
>再会を歓びあえる
切ない・悲しい内容が続いたけれど、暗い曲にはなってほしくなかった。なのでこのあたりはちょっとだけ希望に満ちた終わり方に近づけています!最後まで自分を貫き続けて星となった憧れのアーティストに、星空のステージで再会できるのを夢見ています、という主人公からのメッセージです。
「死ぬ」ことを「星になる」と表現しますね。アーティストたちの魂は、地上に堕ちてきて燃え尽きるのではなく、天に召されて星座になるという考え方の方がロマンティックなのかもしれません。
>Drinking up, Drinking it up up
「夢想の時間は終わり!そろそろ残りを飲み干してまた仕事に戻ろう」というラストで幕です。ここの胡桃のあさんの「かもん!」が可愛すぎる!!!!!
長い解説になってしまいました。書いてて久しぶりに思ったのですが、歌詞って、限界まで無駄をそぎ落とした表現形態ですね。解説していると6000文字になるようなものを、なんとか2分30秒に落とし込むような表現。ラップに限らず、これが難しくて楽しい。簡単だと思ったことは一度もないけれど、難しすぎて楽しくないと思ったことも一度もない。
解説中に触れましたが、本当に素晴らしいイラストと動画です。寺田てら様、野良いぬ様、言い足りないくらい最高でした!歌詞に沿っていただきながら、それ以上の世界を作り出して頂き、本当にありがとうございました!
歌唱版の胡桃のあ様。歌詞のニュアンスや物悲しさを随所に汲み取って表現していただき、本当にありがとうございました。技術が高すぎる!「ぼくにとっても思い入れ深い一曲になりました」という温かいお言葉に感謝です。
DYES先生&イカしたギターのジョニキ!今回も楽しかったです!また作ろうね~~~!軽いノリでいこうね~~~~(軽)
そして最後になりましたが最高の感謝を。聴いてくださった方々、シェアしてくださった方々、本当にありがとうございました。もし「この歌詞が難しくてよくわからん」って人を発見したら、このnoteを見せてあげてください!長すぎて眠くなるかもしれんけど!!!!!!!!!
ていうか起きてるかお前ら!!!!!
最後まで読んでくれてありがと!!!!!!!!!!!!
ちなみにフラペチーノも好きだけれど
チャイティーラテがいちばん好きです!!!!!!