6月 ターゲット 私
Bさんが退職後、私は自分の担当しているプロジェクトに行き詰まり、成果が出なくなっていた。
そのことを上司に相談した日から、ターゲットは私に移ったように思う。
最初は上司の威圧的な態度にも、不機嫌な表情にも、嫌味にも耐えることはできた。こんなの大丈夫だ…一所懸命頑張ればきっと成果が出る…そう思っていた。しかし、上司の態度は変わることがなくすることなすこと否定され、性格まで否定されることもあった。
このときの「私」の価値は、上司の評価に委ねられていた。上司に気に入られたら私の価値は上がる、上司に嫌われたら私の価値は下がる。そんな風に「自分」の評価軸は全て上司にあるのだと思考が支配されていた。こうなったら最後である。毎日上司に否定されるため、自己肯定感は下がる。こんな状況を招いているのは自分のせいだ…自分の努力が足りないからだ…自分が至らないからだ…というような思いしか抱けなくなっていた。今思えばこのとき自分はとても疲弊していた。しかし、その疲労感さえも感じないくらい、「上司から見放されてしまったらもうこの世界では生きられない」という恐怖心で頭の中がいっぱいになっていた。
1番辛かったのは上司からの嫌味である。よく嫌味はスルーすれば良い、気にするな、とインターネットの記事などに書いてあるがそんな簡単にできるものだろうか。
上司との健全なコミュニケーションを図ることはもはやできず、自分には上司から送られてくるメールの内容が全て嫌味に見えていた。私が普通に、率直に送ったメールを上司は嫌味と解釈し、それを嫌味で返してくる。私の頭は混乱の渦に巻き込まれた。
嫌味を言うのは相手が何か不満に思った部分があるからだ…と思った私はそれに対して謝った。そうすると、別にそんなことは不満に思ってないという返信がくる。このときほど自分の頭がおかしくなったと思ったことはなかった。
私は周りの人に自分のメールが嫌味に捉えられてしまう箇所があるかどうか聞いてみた。皆そんなことはないと言っていたが、私はどうしても解決策を探りたかった。
上司がどう自分のメールを解釈するか、色々なパターンを考えなければならなかった。そのため、5行くらいのメールでも作成するのに30分程かかるようになってしまった。
そして、メール作成に時間がかかるため、必然的に担当しているプロジェクトの制作にかかる時間が減る。そうなると成果が出ないため、上司の機嫌はさらに悪くなり、私は萎縮する。萎縮するとうまく報告や相談できなくなり、仕事に支障が出る。そしてこれが繰り返される。このように不幸なことが連鎖的に続いていく中、私の体と心は悲鳴をあげていた。
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