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【チートデイに名言紹介】「回廊とデコイ」#好きなものについて大いに語る会

0から1は作れなくっても、もがき苦しめば0.1ぐらいは作れるんですよね。必死になってやれば。で、それを10回繰り返せばいいんですよ。そうやって作ってます。

小林賢太郎インタビューより。いつのどのインタビューだったかが思い出せません。。。


 ご存知の方もいるかもしれないが、私は小林賢太郎のファンだ。それ、誰? という方は、ご本人のプロフィールをリンクしておくのでご確認ください。とてもきれいにまとまっています。


 先日、広島に『回廊とデコイ』上映会へ行った。現在全国のいくつかのシアターで上映されている同作品の出演者と監督によるメイキングトークがついている会だ。広島は出演者辻本耕志、監督小林賢太郎によるトークである。

 トーク内容の話をしたいところだが、ここはファンとしてまず先に映画の宣伝から。
 映画は10の短編である。一部は先日行われた舞台&配信公演『回廊』から、一部は短編として配信された作品を組み合わせ、新しい映像を合わせて上映されている。10編は以下の通り。


「映画鑑賞」:今回の新しい部分。久ヶ沢徹が好きです。

「くしゃみ」:以下で有料配信されています。

「もの思う男」:公演『回廊』の映像の一部と新しい部分。加藤啓が笑うのを見る。

「タイムトラベル」:公演『回廊』より。全身タイツが似合ってます。

「玉と婦人。」:以下で有料配信されています。

「ダブルブッキング」:公演『回廊』より。この竹井さん、好きです。

「ミワケガツカナイ」:以下で有料配信されています。

「そばをください」:公演『回廊』より。公演の中で実は一番盛り上がったんじゃないかと思う作品。

「永久機関」:以下で有料配信されています。

「回廊」:公演『回廊』より。好きなおにぎりの具。


 公演『回廊』は配信期間が終了しているので観ることは出来ないが、リンクした短編映画は観ることが出来る。だが、1本1000円くらいだったと思うので、noteから見ると4000円。それが映画館で見れば、『回廊』の内容を含めて2200円と大変お得になっております。期間・地域限定ですので、以下から最寄りの劇場をご確認のうえ、足をお運びください。


 なおガチファンにとって目新しい部分は、最初と最後に流れた「映画鑑賞」と「もの思う男」の加藤啓の笑顔だ。あとは既出の映像を大画面で観ながら再編集されている部分を探すというマニアックな楽しみ方になる。楽しい。

 さてさてさてさて。メイキングトークについて。

 小林賢太郎の姿は、直近では2023年4月公開の配信公演『回廊』のおまけ映像の中で、後ろ姿と横顔が映ったのみ。この時も感じたのだけど、だいぶふっくらされました。ご自身が舞台に立たなくなったので体づくりをしなくなったとのこと。確かにそこに充てていた時間を他のクリエイティブに回された方が効率は良いのかもしれない。

舞台俳優現役時代は角度によっては大沢たかおに似ています(といったら大沢たかおファンに怒られた。良い角度の写真を必死で探して、ほらほら! と無理やり納得させた懐かしい思い出)。オリンピックでむにゃむにゃしてた時に映った写真はどう見ても宮崎駿でした。わざとだろコレは。トークの日は前日にレモンサワーを浴びる程飲んで顔パンパンだったそうですが、酒だけでなくふっくらされた様子。


 リアルで彼の姿を拝見するのは、2020年1月の『うるう』以来。3年半ぶりである。辻本さんと嬉しそうにお話する姿を見て、元気そうで良かったと思う。親か、私は。

 彼の作品とはじめて出会ったのは、家にパソコンが届いた頃だ。インターネットにつないで、開いたページの画像が上から一列ずつ表れるような、そんな時代。ニコニコ動画で見た「千葉!滋賀!!佐賀!!!」だった。


 この時はまだラーメンズの存在を知らない。この後、NHKの深夜番組「爆笑オンエアバトル」で彼らを知った。バイトをしたお金ではじめて観に行ったのが2005年2月のラーメンズ第15回公演『アリス』。それから行けなかったときもあるが、実に20年くらい活躍を見続けている。親目線になるのもお許しいただきたい。

 学生時代に組んだラーメンズというコンビは、当初はテレビに出演して認知を獲得し、舞台公演を主戦場に活動する。並行して、おぎやはぎ・バナナマンとコントをしたり、小島淳二監督と映像作品を作ったり、マックのパソコンやケンタッキーのCMに出てみたり、小林自身は出ない舞台を演出してみたり、逆に一人舞台をしてみたり、音声作品を作ってみたり、ミュージックビデオに出て見たり、海外に進出してみたり、NHKで小林賢太郎テレビという番組を作ってみたり、大学で教えてみたり、本を書いたり、絵本の翻訳をしてみたり……と羅列しなくてもプロフィールに書いてあるんだった。そっちを読んでください。とにかく、そういう様々な変遷を眺めてきた者として、今のお姿を拝見するのは感慨深い。

 近年で一番の変化はやはりコロナ禍だ。予定されていたカジャラは公演中止となり、変わりにnoteで音声配信をされた。旧ツイッターや小林賢太郎noteを始められたのもこの頃からだっただろうか。舞台が観れない、会えない寂しさがある反面、小林賢太郎の「声」を聴けるようになったのはコロナのおかげかもしれない。以前は作品だけがあって、舞台の後の挨拶も時間の都合上5分程度。ほとんど彼の台詞以外の声を聴く機会が無かった。見せたいものは作品であり伝えたいことはすべてそこに盛り込んだ、という意志だろう。時折撮影されるインタビュー、雑誌記事はとても貴重だった。それがコロナを挟み、フランクに話す声や文章を届けてくれるようになった。

 今回のトークイベントでは、入場前に地元の高校生が「死ぬまでに生で観れるなんてウチら幸せだよねー」と話していた。確かに2020年の「うるう」を最後に舞台俳優を卒業されているのだから、舞台を観に行ってもそこに彼の姿は無い。その気持ち、わかります。でも多分大丈夫。賢太郎さん、わりと出たがりだから。こういう機会は今後もあると期待を込めて想像しています。だから健康で長生きしてください。レモンサワーもほどほどに。

 しかしながら、こういう若い人が見に来てくれることがガチファンとしては嬉しい。はじめて観に行った2005年の公演の客層は9割方が20歳代の女性だった。男性や他の年齢層は数える程しかいなくて、一部のコアなファンが観に行くコントグループという印象だった。着席して開演を待っていると、一人で来ていた女子学生が10分以上眼鏡をひたすら拭いているのだ。一点の曇りもなく、チリひとつない状態で舞台を観たいという姿勢を感じた。

 上演の時の観客は舞台への集中力がとても高く、礼儀正しく、面白いコントに笑い声と拍手で返礼する。舞台後は速やかにホールから出るが、廊下できっちりとアンケートを書いてから帰る。すべてのアンケートを演者がすぐに読むことを知っているからだ。

 コアなファンはグッズとして販売されているバインダーの上で、これまた販売されている書き味の良いボールペンで書く。グッズ販売は基本的に袋が用意されていないので、ロゴ入りのトートバッグ等を持参する。賢太郎作品を観に行くときの装備はこういったあたりだ。アイドルではないので、うちわは無い。そういえば、先日の『回廊』にはチケット保管ケースがあったので、今回からはそれを使っている人もいた。

 話がそれた。そう、20年前はかなり片寄った客層だったのが、今では老若男女がやって来る。下は高校生から上は70代まで、3、4割くらいは男性がいる。全体的にオシャレな人が多い。これだけの幅広い層に愛されていることを本当に嬉しく思う。親だな、私は。

 今までほとんどフランクなトークを聞くことが無かったが、彼はわりと思いついたことをすぐ言っちゃうらしい。今回のイベントでも、控え室で「今日は言わない」と宣言した15秒後に言っていたと辻本さんが話されていた。そして、もはや今日のイベントは「チートデイ=思いついたことを言っちゃって良い日」として、伸び伸びと話をされる。他愛のない話がファンにとっては何よりのご馳走だ。

 思いついたからやっちゃった、トークイベントに来たアメリカ人のゲストの真似。ハンドマイクを置き、地声で話す小林氏。「一番後ろの人、聞こえる?」の確認に満足し「元ラーメンズ舐めんな。元っていうか今もだけど」と独り言のように呟く。舞台の一線から退いたのだから、ラーメンズとしてのコントはもう観る機会はない。でも解散したわけでもない。相方の片桐仁はどう思っているのだろう、とちょっと気になる。同じ思い、なのだろうか。

 ラーメンズ時代は、もっとガチガチに固められたコントだった。台本に沿ってお芝居をする。イメージから少しでもズレれば矯正されるし、遊びの部分なんてほとんど入れられなかっただろう。片桐さん、さぞかし怖かったことだろうな。その時代から見れば、近年のカジャラあたりはかなり演者に委ねている感じがしていた。相手を信頼し、想像を超える化学反応を楽しむ余裕がある。

 ラーメンズ、K.K.P、Potsunen、カジャラ、オムニバースと様々な舞台を作っているが、すべての作品に小林賢太郎がいる。それは演者がどんなに個性を発揮しようと、小林賢太郎のファンタジーワールドの中だ。ワンピースやドラゴンボールの世界で、個性的なキャラクターがそれぞれに活躍するのに似ている。でも、その世界では全米が泣くほど劇的なことは起きない。戦争も起きないし、巨大隕石が落ちてきたりもしない。何か変だけどそれに真面目に対応してしまう、まるで夢の中のような「非日常の中の日常」だ。

 週一で映画を観に行っているという小林さん。「他の映画の映像や技術が凄い。それに比べてこの映画は……」と言っていたが、それは違って当然だ。予算もだけどアプローチも違う。本業で映画を作っている会社の作品と同じ土俵で戦っても仕方がない。「回廊とデコイ」では全米は泣かない。でもファンは笑う。

 ……なんだろう、これ。私もチートデイですね。思いついたままに書いていて、今回の感想っぽくない。結局何が言いたいかって、今も昔もこの先も変わらず好きだということ。

 そうでした。最初に挙げていた名言の件を忘れていた。

0から1は作れなくっても、もがき苦しめば0.1ぐらいは作れるんですよね。必死になってやれば。で、それを10回繰り返せばいいんですよ。そうやって作ってます。

小林賢太郎インタビューより。いつのどのインタビューだったかが思い出せません。。。

 爆笑オンエアバトルのインタビューというのをどこかのネットサイトで見たけど、エビデンスが見つからなかったのであきらめました。映像で見たんですよね。このコメント。ドヤ顔。あ、勝てない、と思った。

 人の真似をするのは簡単だ。「A」が売れている時に、「A’」を作るのではない。「A」が売れている時に、「ゞ」を作り、「阿」を作り、「◎」を作る。10個も。そうして積み上げて出来た1は、今まで観たことのない世界だ。でも、そもそも0.1を生み出すことも常人ではできないのだ。

 そういえば、『回廊』のリアル舞台から配信公演まで24時間を切っていたとか。お客の入る舞台の準備をして、きっちり公演し、片付けてアトリエに戻ってから、お客の入る舞台の前に、様々な角度から取った映像と併せて編集作業をする。90分くらいの動画を、である。

 私も素人ながら簡単な動画編集をしたことがあるが、20分くらいのものを2、3日かけた。いやだって、普通に通して確認するだけで20分の映像は20分かかるのです。当然だけど。

 自分は出演しないとはいえ、舞台公演をこなすのはかなりエネルギーがいることだろう。その後の編集作業である。久ヶ沢アニキが賢太郎さんを指して、オカシイというのも理解できる。同感。それに対して「まあ、できましたけどね。やってやれねえことはねえ」と笑っていました。0から1を作り出す根性を持ってないとできない所業。この方には勝てない。

 肩を並べて何かをつくることはできないだろうけど、ファンを続けながら離れたところで私もゴソゴソと作り続けたいと思っている。


 ……あ、そうだ。もうひとつ紹介。

 きむすば劇場 旗揚げ公演『オムニバース』は、残念ながら舞台は終了しましたが、配信公演は12月24日までチケットが買えます。買ったその場で観れますので、小林賢太郎ワールドを楽しみたい方は是非。
 出演は、木村昴・浅沼晋太郎。木村さんは主に声優として活躍されており、ドラえもんのジャイアン、呪術廻戦の東堂葵が有名だぜ、ブラザー。浅沼さんは脚本・演出がメインみたいですが、俳優・声優としても活躍。


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