【雑記/紹介/応援】生命のきらめきを常春の森で。神隠しの庭で、珈琲を#創作大賞感想

　心の洗濯をしたい方にオススメのお話がありました。読み終わった後は曇りなき眼（⒞もののけ姫）で世界を見渡せるようになるでしょう。

　樹立夏さんといえば、最近ではピリカ文庫に「エンブリオはただ前を向いて歌う」という胚培養士の物語で、生命の神秘と愛の伝道師という確固たる地位を確立されている御方。今回のお話もこちらの期待を裏切りません。

　あらすじはこんな感じです。

森の奥深く、白狐が案内する先に、永遠の春の世界である常世は存在する。常世の入口には、常世に迷い込んだ人のための、常庭という宿がある。常庭で働く瀬名朝来は、現世での記憶を失い、常世に迷い込んだ過去を持つ。難病を抱える音楽家や、教え子を第二次世界大戦で亡くした教師、地震の被害を脳内でシミュレートできる小学生など、様々な時代を生きる人々が、常庭を訪れる。「お客様」との交流を通して、朝来は少しずつ記憶を取り戻していく。朝来が常庭に来た理由とは。そして、嵐の夜に扉を叩いた人物とは。
　森の神である老婦人は、迷い人たちに寄り添う。
「あなたの話を聞かせてちょうだい」
　耳を傾けることから始まる物語。連作短編集。

あらすじより

　この世とあの世のさかいめを舞台にしたお話はちょこちょこ見かけるし、そういえば私が去年アップした話もそうだったのですが、中でも非常に爽やかで心地良さを感じる舞台です。

　桜の咲く森で、美味しいご飯と珈琲、太陽の匂いがするふかふかのベッド。優しい森の神様と白狐。そして主人公の朝来。
　森が開かれて白狐の導きで「お客様」がたどり着く。様々な時代、様々な理由で森に迷い込んだ人との交流が描かれています。

　美味しそうなご飯を作り、天気の良い日にはシーツを洗い、夜にはピアノやチェロを演奏する。ほぼ天国です。ずっとここにいたいと思わせる素敵な空間で、お話が終わるのがもったいなくてゆっくり読みたくなる。

　仕事に疲れた方、嫌なことがあった方、どうぞこちらから常庭へ。あ、タオルをお忘れなく。心の澱みと悪しき感情が目からドバドバ流れますので。

note創作大賞2024応募作【神隠しの庭で、珈琲を】｜樹立夏 ｜ 小説•エッセイ｜｜note

　なお個人的な願望を言わせていただくと、これはマンガで観たいです。合うと思うんだけどなー、漫画原作。映えるし。連載組めそうだし。