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【連載小説】Ep19:この街一番のツリーの下で
(読了目安1分/約600字)
Tue, December 24, 6:00 p.m.
Side Shoma Oribe
街中にはクリスマスソング。歩く人たちの顔も明るくどこか浮足立っていて、普段に比べて車も多く、渋滞も多く、結果として配達は一時間半ほど予定が押す。ようやく店に戻ってくると、想像よりもショートケーキが残っていた。ホールケーキの売れ行きも、やはり去年と比べて少ない。
「ごめん! 翔真くん。助けると思って!」
十八時で上がる予定でいた俺に、オーナーは拝み倒す。接客に手間を取られ、キッチンの作業が滞っている。今日の十九時予約分が仕上がっていない。予定よりもずっと配達が遅れたのが原因だ。どう考えても店の状況は悪い。いつも世話になっていることもあり無下に断れず、俺は日菜に少し遅れるかも、とLINEした。待ち合わせは十九時だ。
配達の時のサンタクロースの格好のまま、店頭に立ち接客をする。通りすがりの子どもたちが、俺を指して親の手を引っ張る。目の前のお客様の相手をしながら、通りすがりの子へもアピールをかかさない。だが、さすがにこの時間だ。小さな子どものいる家庭は足早に家路へ向かう人が多い。
目の前の通りを焦ったように走る男の子が目に留まる。確かあの子は、駄菓子屋のところの子だ。ランドセルを背負ったまま、この時間まで息を切らして走っている。その緊迫感のある様子に思わず目で追い、我に返る。人のことを心配している場合ではない。オーナーは中に籠って時間との勝負をしている。俺は俺の仕事をしなければ。
帽子を被り直し、真剣にショーケースのケーキを選ぶお客様へ笑顔を向けた。
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