a day in the life|日常のある1日 vol.2
慣れない事はせずにシンプルに生きようと誓った2024年のお正月。
気付けばもう9月。
やはりというか、残念なことにというか、はたまた成長したぞというのか結局は慣れない事に触れなきゃならないし、人間として生きるからにはシンプルが一番難しい。
2023年の9月に森田さんと初めてこのイベントを開催してはや一年。
楽しくて難しいこの企画にふたたび挑戦することになった。
「a day in the life」
今回も共通の趣味である映画を1作ピックアップ
小難しい日常に少しのユーモアと小さな嘘
1995年、ブルックリンの街角にある煙草屋
愛おしい登場人物を観ていると「これで死ぬわけじゃあないんだ。もっと楽しめよ。」と背中を押されて出来上がったのが今回の「革時計」。
「SMOKE」
この映画に出会った頃の話はまた違う機会に(与太話に付き合うほど暇じゃないと思うので)
魅力的なシーンは粒立てて説明できるくらいたくさんある。
そんな中から1シーンを選ぶのはどうだろう?なんていつもは考えるのだけれど、今回はもう一度見る前から決まっていたように思う。
ポールオースターの脚本でも粋な台詞回しに痺れるが、このシーンは映像がとにかく秀逸。
ストーリーとしては序盤なのに、初めて観た時には「映画って良いなぁ」とため息をついたくらい。
映画「SMOKE」より抜粋
オーギー:「もっとゆっくり見なくちゃわからんよ。」
ポール:「え?」
オーギー:「速すぎるってことさ。あんた、写真をろくに見てもいないじゃないか。」
ポール:「だって全部同じ写真じゃないか。」
オーギー:「全部同じだけど、一枚一枚みんな違ってもいるんだよ。
明るい朝もあれば暗い朝もある。夏の光もあれば秋の光もある。平日もあれば週末もある。コートを着て長靴をはいた人間もいれば、短パンにTシャツの人間もいる。それが同じ人間のこともあるし、別な人間のこともある。別な人間が同じになることもあるし、同じ人間が消えてしまうこともある。地球は太陽のまわりを回り、太陽からの光は毎日違う角度で地球を照らすんだ。」
ポール:「ゆっくり見る、かい?」
オーギー:「イエス、そうお勧めするね。わかるだろう。明日、そして明日、そして明日、時間はのろのろとした足どりで過ぎていく。」
このセリフ、知っている人は映像が浮かぶんじゃないかな?
静かなワンカットのシーン
片手にはタバコ、もう一方の手でアルバムを捲る。テーブルの上にはビール
[JUN20952215]
今回の作品はシンプルに考えた。
「明日、そして明日、そして明日、時間はのろのろとした足どりで過ぎていく」
時計しかないだろう。
いつも使っている革は何か違う気がして、素材選びから始まった。
スモーキーな色合いと、時の流れでアンティークに染まっていくイメージで。
そしてどうしても、一本のタバコのフィルターを表現したくて。
フィルターの向こう側とこちら側
吐き出された煙が漂う雰囲気
真鍮の一本線がそれらを可能にしたように思う。
時間の流れは過酷だけれども、彼らが悪いんじゃなくて、それに追いかけられてるように生きてることに一息ついて、愛してみようじゃないかと問いかけながら作った。
a day in the life
日常のある1日を作品に落とし込むこのプロジェクト。
良いものを生み出したいと思うのと同時に、日常に向き合う時間となる。
SNSやyoutubeを開いて得た気になった知識や体験に何か違うんじゃないかと思わされながらも流されていく時間。
情報がどんどん目に入ってきては過ぎ去って
そんな僕の肩に手を回したオーギーが呆れながら言うだろうな。
「もっとゆっくり見なくちゃわからんよ。」
久しぶりに見た映画の中で、人間の機微をユーモアで消化する会話の面白さを思い出した。
最後にオーギーがポールに語るクリスマスの思い出はどこまでが本当でどこまでが嘘かわからない。
それどころか、全ての登場人物の会話がずっとそう。
そんな嘘によって本当の心が見えてくる愛らしい映画。
エンディングで流れるトム・ウェイツの[Innocent When You Dream]
革時計を飾ってこの曲を流していただきたい。
ブルックリンの街角にある煙草屋が浮かんでくるはずです。
イベント詳細
2024年9月14日(土)-9月23日(月祝)
12時から18時 *17日、20日は店休日
こうべくつ家
神戸市須磨区須磨浦通5−5−24
078−732−7740
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