短歌31「左手」
妹の手小さいから包丁が上手く持てない 近づかない。
ひらめきのない頭振る 鳥が飛ぶ 前回りして足をつねりつ
リモートのお話聞かぬようにする 砂の城建て呼ばれるまでは
月輪を指輪に変えて嵌めてみる思春期はまだコーヒーの底に
月明かり 胸を大きく開きて羽化したように美しく反る
干上がるダムの事を考えないあなたの空にわたしはいない
友達のお父さんのエゾリスが教室にいて森に帰る日
食器洗いしながら声がでかい人 お隣事情詳しくなる夏
焼き鳥に行きたいどこか出かけたい痩せてないので出かけたくない
腕の傷白くなりけり誰しもが悪い事だと指差すけれど
あなた連れ雪道歩く のすのすと 滑り止めの音だけ響く
左手の落とし物した高校生 探しもせずに納得してゆく
優しくていい匂いした洗濯機 ぱたんと閉めて恋終わりとす
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