短歌11 「森のバスひとつ」
森の括弧は静かな淡海 我が虚を覗く深みのエメラルドなり
爪の皮乾いて引いて赤になる朝のサイレン近くに停まる
停車場の錆気になってバス軋み ああこのままに朽ちてゆくのか
夜中の急ブレーキに飛び起きる 音いつまでも道路を裂いて
酔っ払い四人で歩く幅取って怖いものなくガンダム数え
さよならとまたね言わないタニシの子 親見失い朝洗わるる
夜の紐そこにあるだけ仄暗いぼくのテロメア 潮が引いてく
はばたきをかすめて飛んでゆくカラス薄い信号は私の森
幸運を呼ぶツバメのペン大事にし君はちいさく寝息をたてる
雪解けの道路の脇に川できて小舟流るる砂埃の日
森の色 女のソファは空いてないひとり寝ころぶあなたがあっても
森の奥バスひとつあり近づいちゃ危ないからと もう恋をして
手のひらを見ること多くなりました下の句そこに書いてないのに
青いビン乾いたインクこびりつきわたしに跡を残すのが好き
青い夜水族館で裸足なり振りかえ見ると飛行機の影
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