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アメリカで現地企業に転職して一年

気づけば転職して1年経ちました。
アメリカの国立研究所だしどんな頭のいい人たちがいて自分の能力ややり方がどれほど通用するのか、とドキドキしていた初日はもう過去に感じます。
もう少し遡って、H1B抽選の結果にヤキモキして毎時間のようにメールを確認していたこと、それを回避するために選んだ現職、そしてコロラド州への引っ越ししたのは完全に遥か昔です。

結果的にはコーヒー10杯程度の awardや key contributor awardという家族で日本往復できるぐらいの特別賞与ももらえたし、研究所という新たな環境と立場で学ぶことが多かったと同時に、そんな環境でもまずは一年やり切れた、という自信にもつながりました。公私共に転職して本当に良かったなあと思っています。

とはいえ必要なスキル・経験や仕事のやり方は、10年強いた前職、そして5年近く一緒に仕事した前上司との日々の賜物だと思っています。いまだに感謝しています。

一方で、大体今まで通り仕事していたので、もっと一般化して日本の仕事に対する価値観や日本人的な価値観がアメリカでは希少で、良い方向に作用していたのでは?とも感じていました。裏を返すと、日本じゃそんな仕事の仕方通用しないぞ、と何回も思ったことがあります。

この経験を通して日本人はもっと自信を持っていい、と発信したかった一年でありつつも、結局政府系の研究所という限定的なコンテクスト、かつ僕自身も日本で一社しか経験していないし、そもそも前職の上司との出会いは非常にラッキーだったし、もしかしたら僕は日本でも同様に活躍できるのかもしれないし。。。
ということで過剰な一般化を自分はしようとしているのでは?日本に夢見すぎなのでは?という疑問は残っています。それは逆方向も同じです。

とはいえ、一年自分で感じたこと、経験したことを言語化することは価値があると思うし、同じような思いの人がいたら嬉しいし、何か悩んでる人にとって何かの支えになればいいし、自慢したい部分もあるしという思いでこの記事を書くことにしました。


現地採用になって良かったこと

初の転職だったので一年経っても日々刺激や学びがあって楽しいです。それを除けばまず一番はやはり出向の身から現地企業/組織の採用になって日本チームとの打ち合わせがなくなったことを挙げたいです。
出向当時や出向中は特に何も考えていなかったですが、やはり20時から2時間打ち合わせあったり、よくわからない英訳させられたり(論理破綻している日本語のプレゼンを訳すことや現場を理解していないストーリーを訳すのは英語力と全く関係ない)、権限もないのに現地担当者との調整(というかほぼ喧嘩)をさせられたり、だいぶ精神的疲労感があったことに辞めた後に気付きました。飲酒量が圧倒的に多かった。

二番目は働き方がフレキシブルな点です。前職でもだいぶ自由にやっていましたが、今はより一層自由です。
ルール上一応なんとなく縛りがあるように見えますが、意識的に頑張って守っている人が少ないのが印象的です。男女問わず子供の行事や送迎ベースで動いている人が多い。

関連してやはり休みに対する意識がやたらと高いのはなんだかんだでいいなと思っています。ことコロラド州はミシガン州と比較して育休システムが充実しています。そして現職では保険会社と提携して最大3ヶ月給料満額の育休があるのが素晴らしい。
上司的な人たちも積極的に休みを取る(例えば週休3日っぽい人もいる)し、アメリカらしく長期休暇を取る時には周りが休みをきちんとれるように最大限気を遣ってくれます。

最後はやはり自分の人生を自分で決められる点です。
出向の立場だと会社の意向で突然帰国になったり、それが嫌なら社内的に様々な政治しないといけないし。。。
アメリカはすぐ切られますが、その代わりすぐ転職できるし(僕自身はニッチな世界にいるのでプレーヤが少ない)、帰りたければ帰ればいいし、自分で決められるのは本当に精神衛生いいです。

現地企業に対する不満

まあこれはもうアメリカ全体に言えることなんじゃないかな。。。て気がしています。が、あくまでも現職で感じている不満を書きます。

言う前にやれ

まあよく俺/私はこれをやった、こんだけ大変だった、これならできる、とか言う人に出会います。最初はへえ、すごい!て思っていたのですが、なんとなく話を聞いていても詳細や実態を理解できないし、まあ自分の英語力の問題なのかな。。。って当時は思っていました。
が、僕のスキル不足を除けば大体のケースはただ言っているだけ。一回や一部だけ経験したことをさもずっと経験しているように言ったり、外注したことをじぶんがやったようにいったり、実験機器のブランドやモデルかわっただけで何もできなくなったり。
LinkedInとか見てるとそういう人はよく投稿している印象が。。。先に俺にメール返事しろって言いたくなったことが何回あったことか。
ある国出身の人で階層が上の人たちはそういう傾向にあるような。。。

とりあえず、神は細部に宿る、有言実行という言葉は僕は好きです。(英語だと神ではなく悪魔なのも面白い)
とはいえ日本的にはよく自信持てるな、みたいなレベルの人が自信満々にプレゼンするのはすごいと思います。僕は給料が増えるとしてもそんなことはしたくないですが。

ゼネラリストが少ない

日本では技術的にも管理的にも様々な経験をしました。
日本あるあるだと思いますが、製品の梱包・出荷、部品の購入、他社との契約(NDAなどインパクトが小さいレベル)、クライアントへのプレゼン資料作成・印刷、社内調整などなど。。。
管理職も経験したのでISO 9001やIATF 16949といったプロセス管理、評定、予算管理など。。。
現職を見ると、管理職はISO 9001を理解していないし(組織全体としてはISO 9001適合なのに)個人の目標管理は個人に任せっきりだし現場理解していないし、そもそも個人は部品購入すら自分でやらないし、何というか皆さん自分のやりたいことしかやってなくね?というのが不満です。
これを裏付けるようにBusiness supportという役職が存在します。管理職は社内的なペーパーワークはほぼこのBusiness supportに任せています。
これは当然メリットデメリットがしっかりあるのは理解するのですが、管理職が中身を理解していないのは危険では?と思います。

これに関連して、結局自分の守備範囲が割と決まっている人が多いので、プロマネのように全体像を理解する必要があるポジションに適性な人が少ない印象です。
いわゆるプロジェクトコントローラみたいな人がいますが、大体結局既に決まっている予算と日程をフォローし続けるだけの人です。そこにお金割く必要ある?いるこの人?と何回思ったことか。。。
それであればいきのいい若手に負荷を少しかけたほうが良いのでは?

現地で働いて意外だったこと

出向の立場だとどうしても日系コンテクストがついてまわるので改めて現地企業で感じた意外なことを書いてみます。

イエスマンが多い、空気をよむ

よく欧米は直接的なコミュニケーションをするとか、上司に意見することが大事だ、だから日本的なやり方だとダメだ、みたいな記事やブログを見ますが、少なくとも僕がいるところではそんなことは全くないです。

アメリカはすぐ解雇されるのでそもそもイエスマンが多くなりやすい土壌があると僕は思っています。僕は前職のノリで機会があれば色々言っていますが、そんな人は20人ほどいるチームで片手で数えるぐらいしかいません。
なんなら、How to say no without saying noという言い回しがある程です。

あとめちゃくちゃ皆さん空気読みます。何なら日本より空気読んでる。
これはかなり邪推ですが、銃社会なので地雷を踏まないことが大事なのかなと思っています。

英語はまあなんとかなる

日本語を誰も使わない環境で本当に仕事をできるのか自信がありませんでした。
が、結局追加の勉強もせずになんとか日々生きています。専門的な単語を理解していて、大事なところを抑えていれば生きていけることを確認できました。

ただしボキャブラリーが貧弱なので細かいニュアンスは伝えられないのと説明がいちいち長くなるのが今の問題です。
特にメインクライアントが政府の人なので、ウィットのきいたジョークや返しをしてくるし求められるし、今後ずっとここにいてマネージャになるのならこの英語力では無理だと感じています。
技術系でいるだけなら論文かけてプレゼンできるならば全然問題なく現地採用でサバイブできます。

ダイバーシティ??

センシティブな話題なので何ともいえませんが、なんだかんだで人種に対するステレオタイピングはあるように感じますし、それはまあ平均的には正しいのでは?と個人的には思います。

飲み会は意外と好き

もちろん日本みたいに毎週とか終電まで、みたいなことはないですが月一、二回ぐらい三時間ぐらいの飲み会があります。いわゆる飲みニケーション的な側面もあります。
飲み会企画すると有り難がられるのでその辺も同じ感じです。

日本的なやり方でよかったと思ったこと

さて、前記も踏まえて、かつ評定フィードバックを踏まえて日本的なやり方の何がうまくいったのか書いてみます。長くなったのでリストにします。気が向いたら説明を加えたいと思います。

  • 打ち合わせのゴールを決めて資料を事前に作る。口頭でのやり取りが多いので敢えて文章にしてたからか、打ち合わせにclear outcomeでよく来るって言われます。

  • 計画を立てる。Organized personだってよく言われます。

  • 引き継ぎを常に意識。well documentedってよく言われます。

  • 階層的なコミュニケーションと意思決定: 勝手に誰かに連絡しない。

最後に

なんだかんだでコロラド州に引っ越したのが1番良い選択だったのかも。毎日楽しい。
日本にはない結構ニッチなことしてるのでこの後家族的にもどんな選択をしていくべきなのか悩んでいますが、今が楽しいのでまあいいか、って感じです。

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