⑦水について
ビールの原料で最も大きな割合を占めるのが、水です。そのため、ビールづくりにおいて、水の質はビールに非常に大きな影響を与えます。特に、水に含まれるミネラル成分や硬度、酸性・アルカリ性の度合(pH)によって、酵素の働きやビールの味が変わります。しかしながら、米国などでは少し気をつける必要がありますが、水資源が豊富でしっかり管理された国の水道水はホームブルーイングに適した水質であるため、それほど神経質になる必要はありません。ただし、井戸水などを使用する場合には、水質を事前に調べておくと良いでしょう。
ミネラル成分と硬度
水は採水地によって、さまざまなミネラル成分で構成されています。ミネラルとは、水の硬度の成分であるカルシウム・マグネシウム・ナトリウム・鉄・マンガンなど、水中に溶けている鉱物質の総量のことで、ミネラルが多いと一般的に硬度も高くなります。硬水と言われる水は、このようなミネラルが多く、苦味、渋味、塩味などを感じ、喉越しは重くあまり良くありません。逆に、軟水と言われる水は、ミネラルが少なく、淡白でなめらかな舌触りと喉越しが特徴です。
【硬度とミネラル含有量】
軟水:ミネラル含有量1-100mg/L
中硬水:ミネラル含有量が100-300mg/L
硬水:ミネラル含有量が300mg/L以上
ビールづくりにおいては、硬水はミネラル含有量が多いため、麦芽酵素の働きが弱まり、糖化がうまくできない傾向があります。上記の硬度で言うと、中硬水以上の硬水は麦芽酵素の働きが弱くなると言われています。 では、日本の水道水の硬度はどうでしょうか。日本の水道水は、都道府県により差異はありますが、ミネラル含有量が10-100mg/Lとなるように設定されていますので、まったく問題ないことが分かります。
酸性・アルカリ性の度合(pH)
pHとは、水の酸性・アルカリ性の性質を表す単位で0−14の数値で示します。例えば、レモン汁などの酸っぱいものは酸性、石鹸水などのヌルヌルした苦味のあるものはアルカリ性です。リトマス試験紙で赤くなると酸性、青くなるとアルカリ性です。理科の実験でやりましたね。
pH値1-6:酸性
pH値7:中性
pH値8-14:アルカリ性
ビールづくりにおいては、pH値8以上のアルカリ性の水を使用してマッシングをすると、麦芽酵素の働きが弱まり、糖化がうまくできない傾向があります。 では、日本の水道水のpHはどうでしょうか。水道水の水質基準値は5.8-8.6pHに設定されていて、ほぼ中性と言っていいでしょう。場所によっては8pHを越すアルカリ性となることもあるようでが、ホームブルーイングで使う分にはあまり神経質にならないでも問題ありません。もしアルカリ性が強い水を使用していて心配な時には、19ℓの水に対して、1/2tsp程度の食用品の石膏(硫酸カルシウム)を含ませると良いでしょう。詳しいpH値は、市町村水道局の水質調査などのHPで、確認できます。
ホームブルーイングの水
ビールづくりにおいて、水はとても重要な要素の一つであることは間違いなく、ビールメーカーによっては天然水の使用を謳ったり、地下水のさらに深い地下水を汲み上げて使用したりしているのも、ビールにとって水が重要な要素であることを裏付けています。しかしながら、ホームブルーイングで水にこだわると、それだけコストや手間に直結してくるので、あまり神経質になる必要がないというのが、僕の個人的な考えです。もちろん、硬水を使ったIPAなどは、軟水ではなかなか表現できないパンチの効いたビールをつくりだしますが、各国には土地特有の素晴らしい水資源があります。 CA州でホームブルーイングをする場合には、水道水などはとても使えたものではなく、水を購入するところから始めた経験もあり、水質に恵まれている国はとても優位であると感じています。使用する水を飲んでみて、美味しいと感じる水であれば、美味しいビールができます。逆に美味しくないと感じる水であれば、浄水器を使用するか、一旦沸騰させた水を使用するなどの工夫をすると良いでしょう。僕は、備長炭の木炭を一晩つけておいた水を使用するなど、試行錯誤を繰り返していますが、水が原因で美味しくないビールができてしまったことはなく、原因のほとんどは別の要素です。もし余裕がある時には、お気に入りの天然水などを使ったビールづくりをしてみて、いつものビールとの違いを楽しむのもまた、ホームブルーイングの醍醐味かもしれませんね。
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