見出し画像

酒と涙と見知らぬパンツ

酔っぱらって駅で爆睡をかまし、駅員さんに「お姉さん大丈夫!?」と声をかけられ目を覚ましたり、大学の卒業旅行in沖縄にて買ったばかりのオリオンTシャツをゲロまみれにした上トイレから出られなくなったり。

これまでお酒を飲んでやらかした回数、数知れず。数々の迷惑をかけて生きてきた。

中でも人生で1番ぶっ潰れたときのこと、ちょっくら綴ってみようと思う。


飲酒において自分のキャパを理解していない人間はテキーラブンブンすべきではない

人生で最も酔っぱらってぶっ潰れた日。

小学生のころからという長い付き合いになる親友とクラブに行った。綺麗且つそんじょそこらの男性よりイケメンな性格の、自慢の親友だ。

そもそもクラブに足を運ぶ奴らなんて全員浮かれているのだけれど(偏見)、年の瀬ということもあり、例にもれなくわたしたちも浮かれていた。

エビバディ エビバディ エビバディゴッソ!

踊って騒いでギラギラしているあの空間はIQ3だ。いやめっちゃ楽しかったんだけれど。あれはまさしく考えるな感じろパーティーナイト。頭を空っぽにしたいひとはとりあえずクラブに行ったらいい気がする。知らんけど。


ぶっ潰れた。

あまりに頭を空っぽにしすぎた。IQ3すらなかった。調子こいた。わたしはテキーラに敗北した。

そもそもお酒よわいのにテキーラブンブンしたのが間違いだった。わたしの舌では美味しいと思えないのに、何かあの場にいたらつい飲んじゃうのである。そう、あほみたいな量を飲んだ。


事実も小説も奇なり

は、と目が覚めた。

ほとんど何も覚えていない。記憶がすぽーんと抜け落ちるタイプだ。でも、散々テキーラをぶち込んだことは覚えている。

頭の中で、工事現場のような轟音が鳴り響いていた。二日酔いの満身創痍の身体を引きずり、トイレに向かう。

向かおうとした。

息を呑む。


ここ……どこ……?


その部屋は見慣れた低反発枕やもこもこの布団がおいてあるわたしの部屋ではなく、増してやお洒落に統一された親友の部屋でもない。

間取り、家具、どれをとっても見覚えがない。

……まあいっか! それより尿意尿意。トイレトイレ。

本来ここで慌てるべきなのかもしれないが、如何せん二日酔いにやられ、ただでさえサボり気味の思考が働かなかった。目的であるトイレを果たすことが最優先だ。

無事にトイレを済ませることができた。

しかしここでも違和感を覚える。


わたしこんなパンツ履いてたっけ……?


確か、確かさ。

わたしはパステルピンクみたいな淡い色の下着を身に着けていたんだよ。お気に入りの。シンプルでかわいいやつ。自分の気持ちを上向きにしたいがためのかわいい下着。


そう、ピンク着てたじゃん。やっぱわたしピンクの下着着てたじゃん!!


しかし現在、自分が身にまとっていたのはお気に入りのピンクの下着ではない。黒の下着だった。それもわたしが持っていないタイプの黒の下着。見知らぬパンツ。

何でだろう、何が起きているのだろう。数秒ほど理由を考える。


(親友と)パンツの取り替えっこしたのかな~


嘘だと思ったでしょう。イカてるよこの思考。

しかしこのときのわたしは本気でそう思ったし、それで納得してしまった。これはわたしの下着じゃない、じゃあきっと親友のパンツなのだろう。

こんな感じで「まあいいか」とトイレを後にしたのだ。二日酔いも相まってだが、そもそも普段の自分がいかに「まあいいか」で生きているかが伺える。恐ろしい。……いやパンツの取り替えっこって何?


待てよ。

状況がおかしいことをじわじわと確信する。

何か……変じゃね……?

わたしの知らない空白に何かとんでもないことが起きていたに違いない。

ぐるり、室内を探索することにした。このとき時刻は朝の4時ごろで、ほのかに照らされた部屋がうすく緑色に光ってたのが、なんだかちょっと不気味だった。


ガチャリと開いたドアの向こう。

まず視界に入ったのは見知らぬ男の人だった。全く見覚えがない。穏やかな顔して寝ていやがる。

そんな男のひとの腕の中で、親友がすやすやと眠っていた


マジでどんな状況やねん……


静かにドアを閉めた。閉めるしかなかった。

ふう。

待て待て。

落ち着け。

落ち着けよ自分。

落ち着……


セッッッッッッッックスじゃん!! 

これ絶対セッッッッッッッックスしてるやつやん!!


何故自分はこの場にいるのだろうか。混乱と動揺。心臓が爆ぜる。

しかし数秒頭を悩ませたのち、本日3度目の「まあいいか」が炸裂した。考えることを放棄したわたしは図々しくも再び眠りについた。


パンツの真実 エビバディゴッソ

再び目を覚ますと、親友と男の人が起きていた。記憶の確認作業に移る。

事の顛末はこうだった。


『クラブで盛大にぶっ潰れたクソ雑魚、わたし。親友がなんとか引きずって帰ろうとするも吐きまくる。

あまりの潰れっぷりに心配してくれた男子大学生がいたらしい。終電なんてとっくにすぎていたため、親友とわたしはありがたくも近くに住んでいる大学生の家に泊まらせていただいた。』


「誠に申し訳ございませんでしたァァ!!!」

土下座した。ただの大迷惑クソ野郎であるわたしは誠心誠意土下座をした。

しかし、幾つかの疑問が残っている。


Q.その……親友ちゃんあなた……この(男の)ひとと……

A.「あんたの介抱に追われて疲れて爆睡したよ。そんな余裕ねえわバカ」

下世話な想像をしてしまい誠に申し訳ございませんでした。セックスしてなかった。


Q.パンツの取り替えっこした?

A.「パンツの取り替えっこってなんだよ。スカートがゲロでゲロゲロになった上に、下着も使い物にならなくなってたからコンビニで買って履かせたけど」


Oh……

わたし親友にパンツ履かせてもらったんだ……成人してるのに……

こんなことさせてごめん……本当にごめん……


そこからの話を聞いている途中、成人してるのに親友にパンツを履かせてもらった事実があまりにも恥ずかしすぎて暫く何も頭に入ってこなかった。

後日「友達にパンツを履かせてもらった」といったワードでいくつかググったけれど、全然検索にヒットしなくて泣いた。


「クラブ出てからもひどかったけど、クラブ内でもまじでひどかったよ。あのクラブ確実に出禁だわ。聞く?」

「死ぬ間際にこそっと教えてほしい。怖くて聞けない」

まだまだ恥ずかしい事実が眠っているようだけど、これ以上は本当に怖くて聞けない。


土下座をしたあと、仲良く3人でカルビ丼を食べに行ってばいばいした。ありがとう親友。ありがとう大学生。二日酔いにカルビ丼が染みること染みること(そのとき大学生からお借りした服、数年経った今でもお返しできていない)(本当に申し訳ございません)。


酒は呑んでも呑まれるな。何万回も聞いたことがあるこの言葉が、はじめてチクチクした。これか。先人はこれを説いていたのか。こういうことだったのか。自分のキャパを理解してお酒を飲むことの重要性をどうか義務教育で教えてくれませんか??????いやほんとに自分が悪いんですけど……


これは完全に自分の過失が100という話であり、人に迷惑をかけないように節度を持って飲まなければならないという当たり前のことを学ぶことができた人生の教訓回である。


同時に、親友と見知らぬ大学生の優しさに救われた。ひとの優しさを垣間見た。

ふたりのおかげで、北の大地の冬の寒さに凍えることもなく、風邪を引くこともなく、ひとの優しさに助けられ、年を越し、無事に今日まで生きている(なんかちょっと雨ニモマケズっぽくない?)。


……何やらいい話にして締めようとしているけれど、きっとわたしはこれからどんなに格好いいことをしても素晴らしい功績を残すことができたとしても、酒に飲まれ多大な迷惑をかけ成人してるのに親友にパンツを履かせてもらった事実をふと思い出して生きていくという業を背負うこととなってしまったのだった。


余談になりますが

これを書くにあたり、恩人である親友にラインを送りました。あのときの率直な感情おしえて、と。何て言われるのだろうとどきどきした数分後にメモが送られてきました。長文をいただいたので一部省略しましたが、見てくださいコレ。

やさしさがすごすぎる

やさしさがすごすぎる2

こんなに出来た人間、おる?

結局テキーラを飲んだのはわたしなんですよ。親友が申し訳なく思うことなんて何一つないんですよ。わたしの代わりにめちゃくちゃクラブのスタッフに怒られたらしいし。本当にごめん。ありがとう。トイレに立て篭もりしてたの今知ったよ。

ここ数年辛いことがあってめちゃくちゃ卑屈になったりしたこともあったけれど、こんな風にいってくれる親友がいることや、吐きまくっている惨憺成人女性を助けてくれる大学生がいたこと。


もしかしてわたしってば……とてつもなくウルトラ恵まれハッピー野郎なのでは……!?!?


将来親友のパンツだっておむつだって何だって替えるし、泥酔の果てぶっ潰れた人間がいたら手を差し伸べる。そうやってやさしい世界にしていきたいよ……

人間あったけえ……まじあったけえよ……

この記事が参加している募集