『Beep21』セガ・アーケード メモリーズ by 元『ゲーメスト』ライター 豊臣和孝 ーmemory 16ー 全5ステージに詰め込まれた明瞭コンパクトな世界観が魅力「ゴールデンアックス」
1980年代から1990年代を中心に、セガのアーケードゲームについてゲームセンターで稼働していた当時の雰囲気、ゲーマーの間でどのように盛り上がったのかなどを綴る好評連載『セガ・アーケード メモリーズ』。
今回は、数多くのハードに移植されてきたファンタジーアクションゲーム「ゴールデンアックス」です。とくに海外での人気が高く、現在最新作が開発中であるだけでなく、アニメーションが製作されることも発表されました。そのゲーム性や攻略情報、家庭用ゲーム機への移植、そして海外人気をどのように感じていたのか、『ゲーメスト』やWebゲームメディアで働いていた豊臣和孝氏にたっぷり書いてもらいました。
▼豊臣和孝氏による過去のコラムは以下からご覧ください
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今回の執筆者 : 豊臣和孝氏(元『ゲーメスト』ライター)
無慈悲かつ傍若無人なデス=アダー軍の演出 ~瞬時に理解できる世界観~
今回ご紹介するのは、1989年にアーケード向けとしてリリースされたアクションゲーム「ゴールデンアックス」です。プレイヤーは戦士アックス=バトラー、女戦士ティリス=フレア、ドワーフ族ギリウス=サンダーヘッドといった3キャラクターから好きなひとりを選び、宿敵デス=アダーを倒すべく剣と魔法に彩られた全5ステージのファンタジー世界を戦い抜く……というベルトスクロールアクションとなっています。
操作系は8方向レバー+3ボタン(攻撃、ジャンプ、魔法)システムを採用。ふたり同時プレイは味方にも自分の攻撃が当たるフレンドリーファイア仕様のため、ステージや状況によってはシングルプレイでは絶対に味わえない緊張感や刺激が堪能できます。
ゲームは、プレイヤーの友人でもあるモブ兵士が背後からデス=アダー軍に強襲されるシーンから始まります。鋲つきのこん棒でしばき倒された兵士アレックスは「王とひめさまが デス・アダーに…あとをたのむ…ともよ…」と言葉を残しその場で力尽きます。足をひきずりながら逃げてきた友人が斃される無惨な演出だけでもプレイヤーの戦意は俄然かきたてられますが、少し進んだ先ではデス=アダー軍兵士が今度は村人を足蹴にしているではありませんか!
ステージ2の冒頭では大勢の村人たちが悲鳴をあげながら逃げてきたり、ステージ1同様に虐げられた村人の姿を何度も目の当たりにするなど、本作は序盤で「このファンタジー世界はどうなっているか」を動きのある演出でわかりやすく表現しています。いずれも光景を見ればすぐに状況や世界観が理解でき、英語の吹き出しに字幕翻訳という見せ方も雰囲気作りに貢献していて、合わせてとてもいい感じです。
黎明期のアーケードゲームは、限られたハードスペックゆえにコイン投入ボタンを押したら即ゲーム本編といった「よくわからんけど、とにかくコイツを倒せばいいんだろ?」的な遊ばせ方が一般的で、やがて1枚絵やテキストで説明なども入るようになりますが、1980年を過ぎた頃からこのように世界観やストーリーを“より動的な演出”でプレイヤーに伝えようとする作品が増えていきます。
全5ステージの変遷も、これまたパッと見で状況の推移が伝わってくる素晴らしいものです。序盤の被害にあう村人たちの姿から一転、ステージが進むごとに敵地に迫っていく感覚が伝わるデザインは臨場感にあふれ、鎧の騎士ことハイネケン准将が控えるステージ3からの難易度曲線も適度なフックでプレイヤーのやる気を引き出してくれます。
本作の演出は取り立てて奇抜というか変わったことをしているわけではありませんが、明瞭かつテンポを損ねないコンパクトさが秀逸で、何度も遊ぶアーケードゲームとしては文句のつけようがありません。こうした演出や敵キャラクターの外観や動きなどとあわせて、デス=アダー軍はトップから末端の兵卒や使役モンスターに至るまで、印象的な存在として世界中のプレイヤーの脳裏に刻まれていきます。
これはセガに限った話ではありませんが、システム16などが世に送り出された80年代後半のアーケードゲームは、アイデア、ビジュアル、ルール(仕様)、音楽など、あらゆる面において特に“伸びしろ”が感じられた時期だったように思います。黎明期のような手探り感もあるけれど、確信を持って「これだ!」とプレイヤーに提示、挑戦、あるいはストレートに訴求してくるというか……。そうした“作り手側の感性や意志のようなもの”と相対する感覚は、制作に携わる人数などの関係性からも各社この時期が一番濃厚ではなかったかと思います。
デス=アダー軍の基本戦術~挟撃~
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