「SEGA SOUND STREET on Beep21」01-3 デイトナUSA─光吉猛修─
セガサウンドの顔・光吉猛修氏の回顧録コラム3回目です!
1994年にアーケードでリリースされた「デイトナUSA」のボーカルサウンドで衝撃的な存在感を生み出した光吉猛修氏は"歌うサウンドクリエイター"としてセガサウンドを牽引し続けてきましたが、光吉氏自身による当時の回顧録シリーズ「SEGA SOUND STREET on Beep21」が『Beep21』で連載中です。
▼光吉猛修氏のコンプリート版インタビューもあわせてどうぞ!
2024年に30周年を迎えた「デイトナUSA」のサウンドがどのようにしてできていったのか、について詳しく光吉氏自身が振り返っていきます。
本記事を読んで感想や当時の思い出を書いてくれた人に抽選で光吉猛修氏の直筆サイン入りCD『LET'S GO AWAY THE VIDEO GAME DAYTONA USA ANNIVERSARY BOX』のプレゼントもありますので、ぜひ最後までご覧ください!
CDプレゼントは
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と入れて「本記事の感想」や「デイトナUSAのサウンドについての当時の思い出」をX(旧Twitter)でポスト(※旧ツイート)してくれた方から抽選で2名の方に光吉氏の直筆サイン入り「デイトナUSA」のサウンドトラックCDをプレゼントします! みなさんもぜひポストしてきてくださいね!
▼あわせて『Beep21』で好評連載中の回顧録シリーズもご覧ください!
※本記事はこちらから見ることができます(※下の「2024年間購読版」はかなりお得でオススメです)
◆「2024年間購読版」にはサブスク版にはない特典の付録も用意していますのでぜひどうぞ!
自身のフュージョン魂を込めた1曲: Sky High
制作した順番は定かではありませんが、筐体のブラウン管に映し出された「Seaside Street Galaxy」所謂上級コースを見た時に、ここで流す音楽は確実にメジャーコードの垢抜けた楽曲にしよう、と早めに方向性を定めたと記憶しています。
ここでもこの楽曲の冒頭のフレーズ「I wanna fly sky high」はメロディと合わせて頭の中に浮かんだ英詞で、こちらも前述のDavid氏に確認をもらった上でそのまま採用となります。従いましてコード進行は後付けです。実は微妙にメロディとコードが濁っている箇所がありますがメロディを変えたくなく、そのまま直さずにおきました。
サビの「Blue, Blue Skies」も、私が当初付けていた歌詞は「Blue, Blue Sky」でした。こちらもDavid氏が「Skiesに」と言う事で添削された内容の一つです。後に調べると複数形にする事で「詩的」になるとの事なので、彼の音楽的センスが伺えるエピソードです。
これは私の永遠の命題、と言いますか課題と言いますか、更に言うと常にそのニーズと自身のスキルや演奏センスの無さで悩む案件なのですが、私は自身でギターを弾く事が出来ません。厳密には単音でメロディを弾く事は趣味レベルで出来たり、ベースギターはある程度聞けるレベルの演奏は出来たりはします。
但し、ギターを和音で弾く、更にはカッティングと言う奏法に関しては、何度となく挑戦を繰り返してきました。しかし一向に弾ける様にはなりませんでした。真似事は出来るのですが、いつの間に右手に持ったピックがズレてゆき、最後はどこかに飛んで行ってしまうのです。
仕事で自身の曲に生のギターが必要な場合は、なんとか自分で弾いてみたり、素材としてパーツを単音で収録して、等と言う事はやらず、弾ける人に頼む事の方がよりクオリティや効率も良く、自身が求めている演奏に近づくので、最近は争う事を辞めています。
前置きが長くなりましたが、この「Sky High」を前述した「垢抜けた楽曲」にする為にどうしてもカッティングギターが必要である、と考えていました。
打ち込みで間に合わせる選択肢もあったのですが、その労力や、より生の表現を実現する為に必要な音源の素材を確保するROM容量も無かった為、何らかの形で「生の」ギターを入れる方向で考えました。
当時、S.S.T. BANDに参加した流れから、解散後「B-univ」と言うユニットを当時のサウンドの先輩の一人であり上記バンドでもご一緒させて頂いたギタリストの並木晃一氏とは懇意だった為、「Sky High」のカッティングギターを「素材」として頂けないか依頼しました。
結果、ご快諾頂きクリア系の音色で一発「ジャーン」と言う和音を、「Sky High」で必要なだけのコードを弾いて頂きました。歌と同じ方法論で再現するならば、並木さんに丸っと弾いてもらったフレーズを後からバラバラに切って貼っていく、がセオリーだったはずですが、何故かこの時はバラで頂く事にしました。未だ理由はわかりません。
ただ、そのお陰で小気味の良い、エッジの聞いたギターカッティングを再現する事は出来ました。ですので「Sky High」のギターカッティングは実は並木氏のものです。
カッティングの小気味良さの演出として、打ち込みでは良く行う手法ですが、いわゆるカッティングの奏法の中に含まれる「ゴースト」もしくは「ミュート」と言うリズムを刻む「カッ」と言う短いフレーズ、こちらを要所要所に細かく入れています。
ある意味、生のギターカッティングには必ず入っている音なので、特に珍しい技術ではありませんが、これが入る事でスピード感そして16ビートのグルーブが曲に生まれている事は言うまでもありません。
もう一点「Sky High」で取り入れたかったアプローチが、Horns、つまり金管のセクションでした。フュージョンではどちらかと言うと松岡直也さんや渡辺貞夫さん等のサルサやサンバ系フュージョンで使われる楽器群かと思いますが、私が目指したかったのは「Spectrum」であり「Earth, Wind & Fire」でした。
刺さる様な強烈なハイトーンと人智を超えたスピーディーなパッセージ、これをこの曲にいれる事で自身の頭の中で「Casiopea featuring Spectrum」を勝手に作り出したい、と考えました。結果、後述する「Pormotion」のパートである事件が起きますが、これはまたその時に。
C#m7/9/11が全てを決めたHouse Music: The King of Speed
「Virtua Racing」のMD版を移植する際、アドバタイズ画面の音楽で一つのチャレンジをしています。当時ダンスミュージックとして流行っていた「ブレークビーツ」を楽曲に混ぜて独特のグルーブ感を出す方法です。
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