『Beep21』セガ・アーケード メモリーズby 元『ゲーメスト』編集長 石井ぜんじ -memory07-街中を自由に走り回れる新しさと戦略的な客選びの楽しさ! 「クレイジータクシー」
石井ぜんじ氏のコラム第7回は「クレイジータクシー」
『Beep21』のコラムとして元『ゲーメスト』編集長が連載しているこのシリーズも、気がつけば始まってから1年半。今回は7回目となります。
過去の記事については以下からご覧ください。
▼第1回「ハングオン」
▼第2回「ファンタジーゾーン」
▼第3回「アウトラン」
▼第4回「ゲイングランド」
▼第5回「テトリス」
▼第6回「ボーダーブレイク」
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ライターの石井ぜんじです。ここではセガのアーケードゲームを中心に、作品の魅力や発売された当時の状況、個人的な思い入れなどを書いていきたいと思う。
7回目となる連載で取り上げるのは、アーケード版「クレイジータクシー」(セガ・1999年)である。
「クレイジータクシー」はタクシーの運転手となり、街で待っている客を乗せて目的地まで運ぶゲームだ。クルマを運転するゲームではあるが、一般的なレースゲームとは内容が異なる。
本作は広い街を自由自在に走れるのが魅力となっており、発売当初はそのゲーム感覚は時代の最先端だった。筐体はコンパクトなアップライト型で場所を取らず、全国各地のゲームセンターで稼働した。
本作はドリームキャストに移植され、その後シリーズ化されている。
自由度の高いドライブゲームの源流をたどる
本作の内容は、タクシーの運転手として客を乗せ、目的地まで運ぶというものだ。目的地までは、どんなルートを走っても構わない。交通法規を無視した、アクロバティックな走りができるのが魅力となっている。本作ではパトカーに追われたりすることはないが、その破天荒な走りはカーチェイスものに近い。
クルマを運転するゲームの多くは、順位を競うレースゲームである。本作のように、自由なルートで走り回れるドライブゲームは珍しい。しかし少数ながらこのタイプのゲームは、古くから存在した。
例えば「ラリーX」(ナムコ・1980年)は、迷路状のマップを自由な経路で走ることができる。「バーニンラバー」(データイースト・1982年)は地形をジャンプで飛び越えることができ、敵車に車体をぶつけて倒すことができた。「イエローキャブ」(1984年・データイースト)はタクシーの運転手をテーマとしており、基本的な発想は本作と同じである。これらの作品はドットで描かれており、真上および斜め上から見た視点のゲームであった。
1988年には、タイトーから「チェイスHQ」が発売されている。3D視点で描かれており、暴走するクルマに体当たりして容疑者を捕まえるという内容だった。この作品はカーチェイスものの源流というべき名作だが、3Dポリゴンは使われていない。
3Dポリゴン技術とハードの進化が
自由な街中の走行を可能にした
1990年代になると、3Dポリゴンの技術を活かしたゲームが盛んに作られるようになる。しかし自由な経路で走れるドライブゲームはなかなか出てこなかった。3Dポリゴンでこのようなタイプを実現するには、広い都市をまるごとモニターの中に構築する必要がある。
最初にそれを実現したのが「GTIクラブ」(1996年・コナミ)であった。この作品は市街地を比較的自由に走ることができ、ゲーム内で鬼ごっこをすることができる。いっぽうセガは、1997年に「ハーレーダビッドソン&L.A.ライダーズ」を発売している。この作品はチェックポイントさえ通ればどこを走ってもいい(例えば店の中でも走れる)というものだった。
そしてついに、リアルな街中を自由自在に走れる作品が登場する。それがNAOMI基板の第一弾として発売された「クレイジータクシー」であった。
本作は街中を自由なルートで、高速で走ることができる。また広々としたサーキットではなく、人やクルマがあふれているところをすり抜けて走るだけに、その疾走感は半端ない。
そして細部まで描き込まれたフィールドを好き勝手に走っても、途中でロードが入り画面が止まることはない。これだけ広いフィールドを高速で走り続けても、まったくロード時間を挟まないのは、1999年の時点では驚異としか言えなかった。
歴史的な流れを俯瞰したときにわかる
「クレイジータクシー」という作品の意味
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