【NODA・MAP第26回公演】 兎、波を走る
酷暑の中、新歌舞伎座へと向かう。
最寄り駅にはものすごい人の波で観劇前から酔いそうな気分で劇場へと向かった。この暑さとこの人並み...これもこのお芝居の演出のひとつなのではないかと思うほど、人を酔わせる夜だった。
定時開演。
*
潰れかかった遊園地が物語の始まりの舞台となる。
妄想の世界と現実の世界、その中に時間渦の不思議が織り込まれていく。
とある場所から脱走してきた兎(高橋一生)、妄想か現実かわからない場所で迷子になったアリス(多部未華子)、アリスを探し続けるアリスの母(松たか子)が軸となって物語は繰り広げられる。
妄想と現実が常に入り混じり、人間の心理は、兎の心理は一体どこにあるのやら?という不条理な世界ではあるが、仮想現実やAIなどの現代的な部分も盛り込まれていて、目まぐるしく場面が展開する。
ストーリーは、ここに書けと言われたら数ヶ月くらいかかってしまうので省略するが、NODA・MAPの芝居は観た人誰ひとりとしてストーリーを複雑すぎて完璧に模写できる人はいないであろう(もちろん私も)
ただ想像して欲しい。
妄想と現実の世界があり、そこに複雑に絡んだ時間軸があり、そこに迷い込んだアリスは兎たちと出会う。また別の世界ではいなくなったアリスを探して右往左往するアリスの母がいる。それらを取り巻くありとあらゆる登場人物は、果たして現実の人?妄想の中の人?それともAI?
モダンな不条理劇であると思った。
モダンというのは「流行りの」という意味ではない。
少し「気取った」という意味合いが私の中ではある。
これがNODA・MAPであるのだけど、どこか泥臭さも欲しかったなというのが私の個人的見解だ。
(まぁ、それがNODA・MAPの芝居の醍醐味だとわかってはいるが)
余談ではあるが、
観劇後のロビーでの女性たちの口からは「松さん、素敵」「松たか子、生で見られて嬉しい」などの声だった。
それはわかる。
松たか子さんの芝居は、芯がぶれなくて自分だけではなく相手役を輝かせるための芝居ってのをやってのけることができる女優さんだと思う。
いろいろ勉強になったお芝居だった。
NODA・MAP 第26回公演「兎、波を走る」より。(撮影:篠山紀信)[拡大] ゲネプロの様子
【作・演出】
野田秀樹
【出演】
高橋一生 松たか子 多部未華子
秋山菜津子 大倉孝二 大鶴佐助 山崎一 野田秀樹
秋山遊楽 石川詩織 織田圭祐 貝ヶ石奈美 上村聡 白倉裕二
代田正彦 竹本智香子 谷村実紀 間瀬奈都美 松本誠 的場祐太
水口早香 茂手木桜子 森田真和 柳生拓哉 李そじん 六川裕史