無花果なんてすべて思い出の果て
一歩進むごとに、過去の一歩が失くなっていく。
いつかこの場所もゼロになってしまうのだろう。
『霜柱を踏みながら 22』
小学生の頃の友達の家の庭には大きな無花果の木があった。学校の帰り道、その子の家の前に差し掛かると、玄関より先にその無花果の木が目に入ってくる。「じゃ〜ね、また明日。バイバイ」と手を振る。その子が玄関へ入っていくのを見送ると、私はもう一度大きな無花果の木を見上げる。夏になると立派な実をつけていた。後になって知ったことだが、無花果には「夏果」と「秋果」があって